2023年9月22日

第212回「重要技術特定 豪、産学の意見反映」

重要な技術分野を特定し、その育成や保護を行う政策は近年各国で行われている。重要分野の特定には、科学技術や産業振興の観点のみならず、国家の競争力や自律性など、いわゆる経済安全保障の文脈で議論されるような要素も含まれることがある。技術特定の方法やプロセスについては必ずしも全て公開されているわけではないが、各国において試行錯誤が行われている。

フィードバック
今回は豪州政府のケースを取り上げる。豪州政府は2021年に「国益のための重要技術」として7分野63技術を特定し、関連政策を通じた育成や保護を図ってきたが、23年5月に分野が見直され、新たな7分野が特定された。

政府は重要技術更新の過程で、公開ラウンドテーブルや書面での意見提出を通じた学界・産業界からのフィードバックを得た。新たな7分野公表と同時期に、この概要が「ステークホルダー・コンサルテーション・レポート」として公開されており、産業界や学術界の意見や要請の一端を見ることができる。

政府は産学の意見を新たな重要技術特定に反映したとしている。フィードバックの中でもクリーンエネルギー生成・貯蔵技術分野を重要技術分野に追加すべきという声が最も多くあり、その結果、当該分野が追加された。

課題の指摘
産学からは重要技術の特定に関連する他の問題点も指摘された。特定された重要技術はリストとして公表されているが、このリストが政府によってどう使用されるのか、公表の目的や意図が不透明との意見があった。また、重要技術分野間での横断的な技術活用を支援するような情報開示も必要であるとして、現在のリスト形式とは異なるマトリクスのような形での重要技術の提示について、提案もあった。

わが国においても経済安全保障推進法の下で特定重要技術が示され、経済安全保障重要技術育成プログラムのような施策が進行している。何を重要技術として特定するかは、技術の進展、社会・経済・安全保障環境などの変化に伴い変動するものであり、継続的な検討が必要である。豪州の取り組みは、その過程において産学の意見を取り入れる試みであり、わが国の今後の検討の参考となる事例の一つになるだろう。

※本記事は 日刊工業新聞2023年9月22日号に掲載されたものです。

<執筆者>
奥田 将洋 CRDSフェロー

経済産業省安全保障貿易管理調査等職員(非常勤)、日本原子力研究開発機構(JAEA)核不拡散・核セキュリティ総合支援センターでの人材育成支援業務などを経て現職。博士(安全保障)。

<日刊工業新聞 電子版>
科学技術の潮流(212)重要技術特定 豪、産学の意見反映(外部リンク)