2022年9月2日

第162回「英、研究投資で地域活性化」

国内格差是正策
英国では、主たる研究機関・投資・産学連携がロンドンを含むイングランド南東部に集中しており、それ以外の地域の活性化が課題であった。欧州連合(EU)加盟時は、地域格差是正のための「EU構造基金」をその目的に充ててきたが、2020年1月末にEUを離脱した後は「レベリングアップ」政策を掲げ、単なる補助や富の再分配ではなく、研究開発投資に基づいた経済活動を通じて、各地域を活性化する方針を打ち出した。

22年2月に発表した「レベリングアップ」白書では、国内の地域格差是正に向け30年までに政府が達成すべき12のミッションを示し、その一つに、「南東部以外の地域への公的研究開発投資を40%以上増額、民間の長期投資を倍増しイノベーションと生産性向上を促進」することを挙げた。

これに沿って、科学技術イノベーション関連各省は、研究開発基金や研究拠点を国内各地に分散して措置するとともに、政府は地域に3カ所の「イノベーション加速地」を創設する。

世界と関係構築
また、21年9月に「住宅・コミュニティー・地方自治省」が改組されてできた「レベリングアップ・住宅・コミュニティー省」は、22年4月にEU構造基金に代わる「英国繁栄共有基金」を開始した。同基金は、「地元への満足感を築き生活の好機を向上」という大目標に沿って、投資優先課題とそれに関係するレベリングアップ白書のミッションを明示している(図)。25年3月末までに地域の投資向けに26億ポンドを提供する。

同省は空港・鉄道駅・海港を中心に、45キロメートル圏内まで広がるフリーポートと呼ばれる経済特区の創設も進めており、研究開発投資に焦点を合わせたイノベーションの温床創出、高度技能・高収入の雇用創出、国際的な投資・共同研究の誘致などに生かす計画である。さらに、英国は、EU離脱後の外交政策として「グローバル・ブリテン」構想を掲げ、欧州だけでなく世界中から、科学技術を中心に据えて同盟・協同相手との関係を構築する方針だ。

本構想の一環として、国内の重要かつ革新的な産業に対する海外企業の投資を促す「グローバル・ブリテン投資基金」の公募が22年4月から始まった。

本基金はEU離脱で初めて可能となったもので、国内中小企業が、海外からの投資を得て、研究開発イノベーションを通じた地域活性化に貢献することが期待される。

※本記事は 日刊工業新聞2022年9月2日号に掲載されたものです。

<執筆者>
山村 将博 CRDSフェロー(海外動向ユニット)

東京工業大学大学院社会理工学研究科修了。08年JST入構。国際事業担当、産学連携事業担当を経て、NPO法人STSフォーラムに出向し国際会議運営業務に従事。18年11月より現職。主にEUの動向調査を担当。

<日刊工業新聞 電子版>
科学技術の潮流(162)英、研究投資で地域活性化(外部リンク)