2021年12月10日

第128回「中国、基礎研究強化を推進」

25年に8%超
中国政府は3月、今年から始まる「国民経済・社会発展第14次5カ年計画」を正式に発表した。科学技術イノベーション政策の具体的な計画は今後公表される見通しだが、官民合わせた研究開発費を総額で年7%以上増やすとともに、近年重視している基礎研究の比率を2025年までに8%以上に引き上げることを目標として明記した。先の「第13次5カ年計画」でも基礎研究強化をうたっていたが、今回はその数値目標を示した。

先日、国家統計局が発表した20年の研究開発費は総額で約2.4兆元(41.5兆円)と最高額を更新し、そのうち開発費が約2兆元(34.3兆円)、応用研究費が約2757億元(4.7兆円)、基礎研究費が約1467億元(2.5兆円)と、基礎研究費は増えてはいるがコロナ禍の影響で大学・研究機関で計画の執行が遅れたこともあり総額に対する比率は約6%にとどまった。

中国では90年代の社会主義市場経済への移行、01年の世界貿易機関(WTO)加盟を契機に大きく経済が発展したが、その原動力は主に外資系企業による加工貿易であった。その後、個人消費拡大を背景として中国企業が成長したが、これら産業を支えた技術は主に企業での開発、応用研究で基礎的な技術は海外のものを活用したと言え、事実、昨年の研究開発費の約77%を企業部門が占めている。

積極策打ち出す
こうした中、中国政府がさらなる基礎研究の強化を打ち出した背景の一つが米国によるデカップリング(分断)政策と考えられる。中国の強国戦略に懸念を持った米国の政策により先端半導体設備の輸入が困難になるなど、生産設備を含めた基礎的技術の課題が浮き彫りとなった。

基礎研究の強化策として、大学、企業に設ける国家重点実験室を過去5年間で432カ所から522カ所と大幅に増強したのに加え、今後、基礎学科研究センターを設けるなど施設の拡充をさらに進める。また、基礎研究は成果が出るまでの期間が長く成果も社会で評価されにくいため、研究者に対する評価、インセンティブシステムを整備するほか、従来の概念にとらわれない「ディスラプティブ技術」の公募や若手研究者に限定した基金を設けるなど、積極的な基礎研究推進策を打ち出している。

中国では機微技術に関わる研究など具体的な公表は限られるが、今後の科学技術政策の動向とその成果を注視していく必要がある。

※本記事は 日刊工業新聞2021年12月10日号に掲載されたものです。

<執筆者>
田子 智久 CRDSフェロー(海外動向ユニット)

同志社大学経済学部卒業後、旭化成入社。感光性樹脂のマーケティング、電子材料の台湾・中国での製造販売会社の設立・経営を経て、電子材料の営業部長・事業部長(理事)などを歴任。21年より現職。

<日刊工業新聞 電子版>
科学技術の潮流(128)中国、基礎研究強化を推進(外部リンク)