2020年2月7日

第41回「「知識」を資産に 統計反映」

知的財産生産物
1990年代以降の情報通信技術の進歩の中で、経済活動における技術や経営に関する知識の重要性が高まっている。経済活動を包括的に把握する統計体系である国民経済計算においても、「知識」を生産に用いる資産として計上するよう改定が行われてきている。

最新の国際基準である「2008SNA」では、こうした資産を「知的財産生産物」と名付け、具体的な内容として研究開発、鉱物探査・評価、コンピューター・ソフトウエアおよびデータベース、娯楽・文学・芸術作品の原本を挙げている。知的財産生産物に対する各期の支出額は投資として国内総生産(GDP)にも含まれる。

日本の国民経済計算でも、2011年までに自社開発分を含めたコンピューター・ソフトウエア全体を、16年から研究開発や鉱物探査・評価を資産として計上している。日本の知的財産生産物は18年末で147兆円と、住宅、建物、機械設備などを合わせた固定資産全体の約8%を占めている。また、同年中の投資額は30兆円と、官民合わせた投資額全体(総固定資本形成)の約2割を占めている。

デジタル経済
デジタル技術を用いた新しいサービスが経済統計に正確に反映されているのか、という疑問が呈されることがある。しかし、GDPについてこの点を検討した経済協力開発機構(OECD)のアーマッド氏とシュライヤー氏の論文(16年)は、こうした取引も現在の国際基準で対応可能であり、実際の統計でも基本的には把握されていることを示した。

一方、財・サービスの品質変化などの測定上の課題がデジタル化で増幅される可能性や、国境を超えた知識資産やデータ取引の把握など、さまざまな研究課題があることも指摘されている。

デジタル経済を捉えるため、従来の国民経済計算の枠を超えて、その全体像を示そうという「デジタル・サテライト勘定」の枠組みがOECDなどの国際機関を中心に研究されている。実際の統計作成は今後の課題であるが、日本の試みとして、インターネットを介した個人間の資産貸借などの「シェアリング・エコノミー」の推計が内閣府から公表されている(表)。

科学技術が経済を大きく変える時代となり、統計にも対応が求められている。研究段階の課題も多いが、着実に取り組んでいくことが望まれる。

※本記事は 日刊工業新聞2020年2月7日号に掲載されたものです。

酒巻 哲朗 CRDS上席フェロー

87年東京大学経済学部卒、同年経済企画庁入庁。15年内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官、17年財務省財務総合政策研究所副所長を経て19年より現職。

<日刊工業新聞 電子版>
科学技術の潮流(41)「知識」を資産に統計反映(外部リンク)