2020年1月31日

第40回「サービス基盤技術革新 学際協力がカギ」

機械学習は怪物
これまで汎用プロセッサーはムーアの法則に支えられて進歩してきた。しかし、その性能向上は限界に達しつつある。一方で、機械学習技術の進化に伴い、必要とされる計算量は爆発的に増大している。2010年までは必要な計算量は2年で2倍であったが、10年以降はほぼ3.4カ月に2倍で増えている。

機械学習は計算資源を食べ尽くす“怪物”である。膨大な計算量を必要とする機械学習技術の進展と、ムーアの法則の限界が、まさに絶妙のタイミングで重なったことになる。

性能向上に期待
この計算量の増大に対応するためには、図に示すように、新たなプロセッサーやコンピューター、あるいはそれらの複合体としてのデータセンター、サービスなどさまざまなレベルでの性能向上が期待される。

布線論理型やニューロモーフィックなどの新たなプロセッサーが登場している。特に、アナログ計算型のプロセッサーが注目されている。多値の演算を低消費電力でできることが魅力であるが、ノイズの影響や実装など考慮すべき点がまだまだある。従来とは全く異なる原理で動作する量子コンピューターも研究開発が進んでいるが、実用的な性能に達するにはまだまだ研究開発が必要である。

米国大手IT企業はそれぞれに大規模なデータセンターを運用し、ビジネスに活用している。そこにはデータセンターの運用や管理も含めて、単体のコンピューターとは異なる技術が必要とされる。同時に、ますます大規模化するデータ処理のためには、計算処理そのものとデータベースに関するいっそうの性能向上が期待される。

これらの機能は、さまざまなサービスを結びつけ、新たなサービスを創り出し、それらを人々に届けることが重要である。そのためには、サービスプラットフォームが重要であり、それとともにIoT(モノのインターネット)やブロックチェーン(分散型台帳)など、新たなサービスの基盤技術の革新が求められる。

これらの研究開発では、材料から電子回路、電子素子、装置、ソフトウエア、アプリケーションまで多くのレイヤーと複数の学問領域の連携が必須である。学際協力がカギである。

※本記事は 日刊工業新聞2020年1月31日号に掲載されたものです。

高島 洋典 CRDSフェロー(システム・情報科学技術ユニット)

79年京都大学大学院修了、同年NEC入社。同社中央研究所支配人などを経て、12年より現職。情報通信分野における技術・社会動向の俯瞰調査ならびに、戦略的研究プロポーザルの作成に従事。

<日刊工業新聞 電子版>
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