2019年11月15日

第31回「世界の水危機 日本にも影響」

淡水の持続性
地球は水の惑星といわれる。しかし、約97%が海水、約2%が氷河などで、人間が利用しやすい淡水は1%もない。湖や川といった地表の淡水の合計は0.01%に満たず、地下水が約0.7%である。

淡水は身近な生活用水のほか食料生産などにも多量に必要となる。世界の人口増加や途上国の経済成長を背景に、淡水需要は増大していて、淡水の持続可能性は世界の最大関心事の一つである。とりわけ世界4位の湖沼面積だったアラル海が灌漑で砂漠化したことは象徴的である。

湖だけでなく、地下水の持続可能性も懸念されている。世界では穀物生産のために地下水が多く利用されている。米国中西部の大穀倉地帯では小麦やトウモロコシなどの灌漑のために、オガララ帯水層という地下水源をくみ上げている。

オガララ帯水層は日本列島を超える面積の世界最大級の地下水源だが、井戸枯れや水位低下が起きている。水循環の研究によると、これは雨が土壌を浸透して涵養される速度を超えて地下水をくみ上げてきたことに起因する。さらにインドや中国の華北平原などでも地下水の減少が顕著で、枯渇化が危惧され

SDGsに貢献
日本も世界の水危機と無縁ではない。輸入する食料には海外の淡水が利用されている。この間接的な水の利用は「仮想水」と呼ばれ、水循環分野で研究されている。日本は1人当たり毎日1000リットル超の仮想水を利用していると試算され、その中にはオガララ帯水層の仮想水も含まれている。

まだ数十億の人々が水不足や汚染された水の悪影響を受けており、国連は持続可能な開発目標(SDGs)の一つに水を掲げている。国内でもSDGsに貢献する研究開発が少しずつ広がっている。

例えばセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラムの信州大学アクア・イノベーション拠点の取り組みがある。海水から淡水を濾過できる逆浸透膜に、カーボンナノチューブを添加することで、たんぱく質などによる膜の目詰まりが防げて、長期コストを低減できる実験結果が報告されている。

また、アフリカの自然水に含まれるフッ素や鉛などは人体に有害な物質だが、それを簡易に吸着除去できる材料開発と製品化が実施されている。

水に関わる科学技術は多岐にわたる。持続可能な水利用のために、多様な知見を活用した研究開発の進展が期待される。

※本記事は 日刊工業新聞2019年11月15日号に掲載されたものです。

松村 郷史 CRDSフェロー(環境・エネルギーユニット)

大阪大学大学院工学研究科応用物理学専攻修了。JSTの基礎研究やプレベンチャーなどの研究推進業務に従事後、2018年より現職。環境・エネルギー分野の研究開発戦略立案を担当。

<日刊工業新聞 電子版>
科学技術の潮流(31)世界の水危機、日本にも影響(外部リンク)