2019年9月20日

第23回「科学技術イノベ 先進国の共通課題」

5プロ実施
経済協力開発機構(OECD)は先進国が国際経済に関して協議する国際機関だが、近年では科学技術イノベーション政策が主要なトピックになっている。検討の場の一つであるグローバル・サイエンス・フォーラムでは、OECD加盟国以外も含む参加国の代表が共通の政策的課題について議論する。

また、現状や問題点、改善方策などについて掘り下げた調査検討が必要と考えられる政策課題を選定して、参加国から指名される専門家が2年程度のプロジェクトを組織して取り組む。

フォーラムで現在実施中のプロジェクトは五つあり(表を参照)、それぞれ次のような背景・課題がある。

①わが国を含む多くの国で大学などの若手研究者の多くが有期雇用になるなど研究者の身分が不安定になっており、研究者の職業としての魅力が低下するとともに、研究不正の発生など過当競争の弊害も生じている。

②大量のデータを利用する科学が急速に発展する中、どのような人材が必要であり、どのように育成するのかが課題になっている。

③財政の制約がある中、研究に要する施設設備の高度化とコスト増大が進んでおり、大規模な国際的施設のみならず、国内の研究インフラについても効果的・効率的な運営・利用が求められている。

④社会課題解決のために、人文社会科学も含む多数の研究分野の研究者と、市民・行政・企業などの関係者が、研究の企画段階から協働して取り組むことが重要になっている。このような取り組みは国際的にトランスディシプリナリー研究と呼ばれているが、確定した日本語訳はなく、超学際研究と言われることもある。

⑤公募による研究費配分の拡大に伴って、成功の確率は大きいが成果は小粒な研究が増えていると懸念されており、失敗のリスクは大きいが得られる成果も大きい研究を増やすことが重要となっている。

制約が顕在化
これら五つのプロジェクトは、いずれもわが国においても重要な課題であり、わが国からも積極的に参加している。科学技術イノベーションへの期待が高まると同時に、研究コストの増大と財政の制約が顕在化する中、わが国を含め、多くの先進国が直面する政策課題には顕著な共通性が見られるようになっている。

※本記事は 日刊工業新聞2019年9月20日号に掲載されたものです。

<執筆者>
岩瀬 公一 CRDS上席フェロー

東京大学大学院理学系研究科、米ダートマス大学経営大学院修了。東北大学理事、文部科学省政策評価審議官、JST社会技術研究開発センター長などを経て現職。2017年からOECDグローバル・サイエンス・フォーラム副議長を務める。

<日刊工業新聞 電子版>
科学技術の潮流(23)科学技術イノベ、先進国の共通課題(外部リンク)