2019年4月26日

第4回「AIの安全・信頼性確保 重要」

世界をリード
GAFA(ガーファ)とも呼ばれるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンなど大手インターネット関連企業が中国を除く世界の市場と技術開発をリードしている。一方で、中国では盛んな研究開発投資と巨大データ集積による人工知能(AI)の実用化が急速に進展している。

AIは、技術自体が急激に進化し、意思決定の際に考慮すべき要因・影響の膨大さや複雑さは、人間が思考できるレベルを超越しつつある。医療診断や自動運転を含むさまざまなAI応用システムで、人間を上回る精度や高度プロセスの自動化が進展している。機械学習を含むシステムはブラックボックスであり、偏見学習、誤認識誘発攻撃などの問題が発生している。

ロボティクスにおいては、物理的な柔軟性(ソフトネス)を取り扱う分野が進展し、生物規範型ロボットの新分野は急速に進展している。

コンピューティングアーキテクチャー(基本設計)は、単体のコンピューターからデータセンター、インターネットさらにモバイルネットワークによりその適用領域、連携が拡大。コンピューティングの対象も、数値データから多様なメディアに拡大している。

FinTech(金融市場)、EdTech(教育市場)、AdTech(広告市場)、MedTech(医療市場)、RetailTech(小売市場)など「xTech」と呼ばれる業界を情報技術で大きく変革しようとする流れがある。

制度的対応を
一方で、既存の社会システムは世の中の動向(人口動態変化、技術進歩、グローバル化、新興企業の台頭など)に追随できていない状況である。エアビーアンドビー、ウーバーに代表されるシェアリング・エコノミーなどの新たな産業の創出による労働や税の問題もあり、制度的な対応が必要である。

また、個人情報がGAFAなどのプラットフォーム事業者に蓄積されており、欧州ではGDPR(EU一般データ保護規則)が開始され、プライバシー保護に向けた動きが活発化している。

このような状況下で、広がりつつあるAIを産業競争力に結び付けていくためには、AI技術そのものの研究開発強化だけでなく、日本の安全性・信頼性を重視する風土を生かし、AIシステムの安全性・信頼性の確保も併せて進めていくことが重要と考える。

※本記事は 日刊工業新聞2019年4月26日号に掲載されたものです。

<執筆者>
坂内 悟 CRDSフェロー/ユニットリーダー(システム・情報科学技術ユニット)

東京経済大学経営学部卒。聖学院大学非常勤講師。19年4月から同機構ICTマネジメント部 調査役。

<日刊工業新聞 電子版>
科学技術の潮流(4)AIの安全・信頼性確保が重要(外部リンク)