微小エネルギーを利用した革新的な環境発電技術の創出 (CREST・さきがけ複合領域)

戦略目標

「微小エネルギーの高効率変換・高度利用に資する革新的なエネルギー変換機能の原理解明、新物質・新デバイスの創製等の基盤技術の創出 」

研究総括


谷口 研二(奈良工業高等専門学校 校長/ 大阪大学 名誉教授)

研究副総括


秋永 広幸 (産業技術総合研究所 ナノエレクトロニクス研究部門 総括研究主幹)

概要

本研究領域は、様々な環境に存在する熱、光、振動、電波、生体など未利用で微小なエネルギーを、センサーや情報処理デバイス等での利用を目的としたμW~mW程度の電気エネルギーに変換(環境発電)する革新的な基盤技術の創出を目指します。
 具体的には、2つの大きな柱で研究を推進します。1つは熱、光、振動、電波、生体等のエネルギーを電気エネルギーに高効率に変換または高度に利用するための基盤技術の構築とその源となる基礎学理の創出です。これらは、全く新しい原理・新物質または新デバイスなどを用いて、未利用の微小エネルギーを電気エネルギーに変換する研究であり、例えばスピンとトポロジーの相関等、革新的なエネルギー変換に資する原理の解明・実証、及びそれらを活用した新物質の創製や、従来の特性や機能を飛躍的に向上させる優れた物性を有する新物質の創製に挑戦します。もう1つの柱は、上記基盤技術の創出のための理論・解析評価・材料設計の研究で、エネルギー変換時における物理現象(材料物性、界面、輸送現象等)の新しい解析技術の構築や、物性理論に基づく、あるいは計算機シミュレーションを駆使した、新たな材料設計の指針を提示することに挑戦します。これら2つの柱は、相互補完的に密接に結びついて研究を進めることが非常に重要です。
 したがって、本研究領域では、挑戦的な提案を求めつつ、領域終了時には、革新的な新原理、新物質、新デバイスが検証・実証できること、それらが次の研究開発ステージに繋がることを目指して研究を推進します。
 そのため、研究総括及び副研究総括の強い統率の下、CREST・さきがけを複合領域として一体的に推進し、成果最大化のために研究チームの再編や研究進捗の調整、また課題間の連携などに取り組みます。

 

 本研究領域は、文部科学省の選定した戦略目標「微小エネルギーの高効率変換・高度利用に資する革新的なエネルギー変換機能の原理解明、新物質・新デバイスの創製等の基盤技術の創出」のもとに、平成27年度に発足しました。

平成28年度募集・選考・研究領域運営にあたっての研究総括の方針

■背景と基本的方針

 これからの高度情報化社会では、膨大な数に上る情報端末やセンサー機器への最適なエネルギー供給源が重要になってきます。そこでは、電源や電池交換など、電気エネルギーをいかにして確保するかという問題が必ず予測されます。至るところにある未利用のエネルギーを電源として使用できるようになれば、電源の概念が変わり、それらの使用形態や使用法の質的な変化も期待されます。
 本研究領域では、このような社会への貢献を将来に見据え、未利用で微小なエネルギーを電気エネルギーに高効率に変換する基盤技術の創出に取り組みます。このことを実現するには、従来になかった全く新しい概念、発想に基づいたエネルギー変換原理の創出が求められますし、現在はまだ萌芽的段階にある原理や物質、デバイス等のポテンシャルを先鋭化する、もしくは高度化することも必要となります。
 この考え方を具体的に実行に移すべく、本研究領域では幅広い研究分野からの提案を期待しています。以下に、研究提案や研究領域運営にあたってご留意いただきたい点を記載します。

■対象とする研究分野や研究アプローチ

 これまでの環境発電に関する研究では、熱、光、振動、電波などのエネルギー源を用いた電気エネルギー変換技術が個々に取り組まれていますが、将来の高度情報化社会で電源となる電気エネルギーをいかにして確保するか、革新的な技術が求められています。たとえば、フォノニクス、フォトニクス、あるいは最近の進展が著しいスピントロニクスやマルチフェロイックスなどいずれも我が国が世界的な研究競争力を有する分野となっていますが、これらで注目されている新規な物性や現象から革新的な環境発電への応用が考えられます。
 したがって、現在取り組まれている最先端の研究に新たな着想や視点を加えて電気エネルギー変換機能を創出しようとする、斬新かつ挑戦的な提案を積極的に募集します。また、エネルギー変換機能としては考えられてこなかった物性についても、環境発電の観点から有用であることを示していただきつつ、是非とも研究総括及び副研究総括の想像の域を超える研究提案に期待します。もちろん、これまでの環境発電に関する研究についても、提案を妨げるものではありませんが、成果が予想されるような従来研究の延長線上にないことが前提です。
 すなわち、いずれの場合においても、提案技術の優位性がどこにあるかを明確に示すこと、また発電技術としての出力の飛躍的な向上が具体的に期待できることを採択の条件とします。
 物質探索・材料開発における長期的な視点に立てば、研究当初は膨大な数の実験を繰り返す試行錯誤的な取り組みであっても、研究期間内には、理論や計算機シミュレーションなどによる “科学的に裏打ちされた研究開発の方法”を示した上で物質探索・材料開発に重心が移される必要があります。これらを達成するために、提案者自らの考えを研究提案書に明確に示してください。そのための手順の一つとして、特定の物質・材料に限定されない普遍的な原理を見出し、それをモデル化しなければなりません。無論、研究の過程でのセレンディピティを否定するわけではありませんし、将来にわたる明確なマイルストーン設定が難しいのが本研究領域の特徴でもありますが、発見された新規の物性や物質については、その発現根拠を明確にして、高性能化を図る方策を科学的に検討し、実用化に向けてステップアップさせることを期待します。

※CREST・さきがけに共通して、蓄電技術開発を主な研究課題とした提案、人工光合成を利用した発電技術の提案や、デバイスを生体に埋め込んで発電する技術の提案は、本年度の公募では対象とはしません。
※CRESTでは、領域概要に記載の2つ目の柱である理論・解析評価・材料設計に関する研究のみからなるチーム体制では、応募の対象とはしません。
※CRESTでは、新原理・新物質の創出に留まるのではなく、将来的に新デバイスの創製までの道筋を含んだ提案が望まれます。
※本年度の公募においても様々な分野からの斬新で挑戦的なご提案を期待していますが、特に、下記の技術分野における提案を期待します。
・CRESTでは、圧電、電波、有機材(フレキシブル材料)を用いた発電技術の提案
・さきがけでは、振動、圧電、電波を用いた発電技術の提案

■研究期間と研究費

 本研究領域の期間は、平成27年度から平成34年度まで(予定)です。この期間を、2つの研究フェーズと大きく捉えて、研究領域の運営にあたります。まず前半フェーズは、未利用で微小なエネルギーを電気エネルギーに高効率に変換することが期待できる、より多くの基盤技術の創出に取り組む期間と位置づけます。次に後半フェーズは、革新的な新原理、新物質、新デバイスの検証・実証に向けて、これらの中から有力と判断される基盤技術の集積や応用先の開拓等に取り組む期間と位置づけます。
 このことを踏まえて、今年度の研究提案は以下の通り募集します。
 CRESTでの研究期間は、従来とは異なり、平成28年度から平成31年度(4年度)以内とします。また研究費については、1.6億円以内とします。
 さきがけでの研究期間は、平成28年度から平成31年度(4年度)以内とします。また研究費については、4千万円以内とします。
 なお、CREST・さきがけ共通して、研究期間を通じて研究進捗の把握とそれを踏まえた研究計画の調整を行いますが、特に今回採択する研究課題の期間が終了する年度には、将来の実用化を視野に入れた研究成果の利用価値を見出すための課題進捗評価を実施します。その結果として、研究領域の後半フェーズでの成果の最大化に向けて、一部の研究課題を必要に応じて再編も行いつつ改めて取り上げ、発展や強化させます。これは、研究領域内の研究チーム及び研究者(CREST、さきがけを問わず)が相互に協働し、異分野横断や相互補完的な連携をした新たなチーム体制を構築して、課題解決に取り組むことを意味し、それまでの研究成果および将来性を加味して、研究総括・副研究総括の責任の下でこの新たな体制構築を行います。

※ 全国の共用施設を積極的に利用し、効率的な研究費計画の立案をお願い致します。

■研究提案書作成時の注意点

 研究提案書の『研究の将来展望』においては、募集要項に記載のCREST、さきがけの研究提案書(様式)の要求記載説明に加えて、提案された研究課題の目標が期間内に達成されることを前提として、実用化を目指す研究段階に発展させるために、研究期間終了直後の研究フェーズで、どのようなことに取り組む必要があるのか等の道筋に関しても、必ず明確に記載してください。

■平成27年度選考についての総評(抜粋)

 本研究領域は、環境に存在する未利用で微小なエネルギーを、センサーや情報処理デバイス等での利用を目的としたμW~mW程度の電気エネルギーに変換(環境発電)する基盤技術の創出を目指した研究を対象として、平成27年度から募集を開始しました。
 近い将来、環境を膨大な数のセンサーで計測した様々な情報をネットワークにのせて、ビッグデータとして活用する社会がやってきます。その未来社会の実現に必要な簡便設置型(電源配線・電池交換不要)センサーなどの動力源を熱、光、振動、電波、生体等のエネルギーに求めるもので、それらのエネルギーを電力変換するための新原理、新物質、新デバイス、新解析技術、およびその根源となる基礎学理などの創出を募集の対象としました。
 本募集に対して、様々な技術分野から環境発電に関する応募(CREST 41件、さきがけ72件)がありました。書類選考にあたっては、研究者や産業界の有識者を中心に10名の領域アドバイザーの協力を得て公平かつ厳正に実施し、CREST 14件、さきがけ24件を面接選考の対象としました。
 面接選考では、以下の観点で評価を実施しました。
① これまでの環境発電に関する研究分野においては、従来研究の延長線上にない成果が期待され、電力変換効率向上への道筋とその根拠が明らかであること。
② 新しい研究分野では、物性理論・実験に基づく研究成果に新たな着想や視点を加えて、新たな電気エネルギー変換機能創出に向けたブレークスルーが期待できること。
さらに、本研究領域は、CREST・さきがけ複合領域であり、CREST・さきがけを問わず、研究領域内の研究チーム及び研究者が相互に協働し、異分野融合や相補的な連携を図る運営を目指していることから、
CRESTにおいては、
③ 提案された研究分担体制における、グループ間のシナジー効果を図る研究代表者の考え方。
一方、さきがけにおいては、
④ CRESTの技術シーズにもなりうる提案内容の将来性の豊かさと、提案者の本事業にとり組む姿勢。
も、重要な視点として考慮致しました。
 その結果、熱、振動を用いた環境発電の分野、そして、強相関エレクトロニクス、スピントロニクス等の新しい研究開発分野より、CREST 7件、さきがけ9件の提案を採択しました。
 書類選考や面接選考に至らなかった研究提案の中にも、世界水準の研究、挑戦的な提案が数多くありました。一方、選考方針にある「新原理・新物質の創出に留まるのではなく、将来的に新デバイスの創製までの道筋を含んだ提案」や「研究開発上の課題を解決する方法」に関する説明、募集要項で研究総括の方針として示した「提案技術の優位性がどこにあるかを明確に示すこと」についての説明が不十分である、などの理由により採択に至りませんでした。次回の募集では、採択とならなかった理由を踏まえて、再応募していただきたく思います。

領域アドバイザー

青合 利明 富士フイルム株式会社 参与
大野 英男 東北大学 電気通信研究所 教授、所長
齊藤 英治 東北大学 原子分子材料科学高等研究機構 金属材料研究所 教授
篠原 真毅 京都大学 生存圏研究所 教授
白石 賢二 名古屋大学 大学院工学研究科 教授
高柳 万里子 株式会社東芝 セミコンダクター&ストレージ社 技術企画部 参事
藤田 博之 東京大学 生産技術研究所マイクロナノメカトロニクス国際研究センター 教授、センター長
舟窪 浩 東京工業大学 大学院総合理工学研究科 教授
宮野 健次郎 国立研究開発法人 物質・材料研究機構若手国際研究センター センター長、フェロー
山田 由佳 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 イノベーション推進本部 総括企画主幹

領域運営アドバイザー

竹内 敬治 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所社会・環境戦略コンサルティングユニット シニアマネージャー

研究者

氏名 所属 課題名 その他情報
一期生
(27年度)
黒崎 健 大阪大学 大学院工学研究科 准教授 変調ドープ高効率バルクナノシリコン熱電材料の開発
黒澤 昌志 名古屋大学 未来材料・システム研究所 材料創製部門 特任講師 革新的多機能センサモジュール実現に向けた新しいIV族混晶熱電物質の創製
鈴木 孝明 群馬大学 大学院理工学府知能機械創製部門 准教授 柔軟な3次元微細構造を用いたポリマー振動発電
野村 政宏 東京大学 生産技術研究所 マイクロナノメカトロニクス国際研究センター 准教授 熱フォノニクスの学理創出と高効率熱電変換への応用
藤岡 淳 東京大学 大学院工学系研究科 講師 トポロジカル半金属における熱・スピン起電力の開拓
藤ヶ谷 剛彦 九州大学 大学院工学研究院応用化学部門 准教授 半導体性単層CNTからなる熱電変換シートの創製
松野 丈夫 国立研究開発法人理化学研究所 石橋極微デバイス工学研究室 専任研究員 5d電子系酸化物のスピン流誘起熱電変換
湯浅 裕美(福澤裕美) 九州大学 大学院システム情報科学研究院 教授 スピンゼーベック発電増大に向けた新材料と新構造の探索研究
吉田 秀人 大阪大学 産業科学研究所 准教授 熱電ナノ材料の原子構造とナノスケール温度分布の可視化

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