対話の場をデザインする
科学技術と社会のあいだをつなぐということ
八木絵香
大阪大学出版会 2009年
この本は、原子力についての専門家と市民の対話に取り組み続けている著者の、その活動の充実ぶりをみごとに映し出している。原子力政策を研究対象としてきた私としては、「デザイン」というお洒落なタイトルの陰で著者がどれほどのご苦労を積まれたことか、と(勝手に推測して)ひたすら頭が下がるばかり。「対話」「コミュニケーション」「言語力」などが流行の昨今だからこそ、「対話」のもつ喜びと痛みの両面性を今一度思い起こす必要があるだろう。科学のことばに慣れ切った人ならなおさらである。そして何より、「対話」は依然としてこの社会に不足している。ぜひ本書をおすすめしたい。
(尾内隆之:流通経済大学法学部 専任講師)