なぜ科学を語ってすれ違うのか
ソーカル事件を超えて
ジェームズ・ロバート・ブラウン
青木薫/訳
みすず書房 2010年
科学を生業としない者が、科学の営みを知ることは容易ではない。本書は、科学研究と科学哲学・科学社会学とのこれまでの歴史や関係性(すれ違い)について、非専門家が概要をつかむことができる一冊である。さらに本書では、そうした議論の整理にとどまらず、社会の中における科学を考える際に、民主的であるということや、社会におけるある種の価値判断と、科学の合理性がいかに調和するのかについて、踏み込んだ考察をしている。科学者が価値中立であろうとしつつ、科学がもたらす社会的影響にも配慮する場面におけるちょっとした提言には納得する点が多い。そして、科学者ではない私たちが、科学について考察し発言する場面でも、科学の何が議論されているのか重要なポイントを知ることができよう。
(中村多美子:弁護士法人リブラ法律事務所 弁護士)