「きめ方」の論理 
社会的決定理論への招待
佐伯胖
東京大学出版会 1980年
筆者は問う。「わたしたちが何らかの「対象(モノ)」を選んでいるとき、わたしたちは本当にそのモノを選んでいるのだろうか」。例えば、学生のあなたが年配の方とカラオケに行ったとしよう。あなたはAKB48を歌いたい気持ちを抑え、布施明「マイウェイ」を選ぶ。そして場を盛り上げるコトに成功する。この場合、あなたが本当に選んだのは「マイウェイ」というモノではなく、「場を盛り上げる」というコトである。これは、市民がある科学技術について選択するときも同様だ。どうすれば各人が選択の背後に持つコトを表明した上で、皆で相互吟味をし、新たな望ましいコトやモノを創り出せるのか。学生時代に触れた本だが、今なお考えさせられる。
(山内保典:大阪大学コミュニケーションデザイン・センター 特任助教)