研究開発成果

【開催報告】SIP第3期「ポストコロナ時代の学び⽅・働き⽅を実現するプラットフォームの構築」サブ課題Aシンポジウム「未来の学びを、いま教室へ。― Society 5.0時代の「新たな『学び』」体験ワークショップ ―」

国⽴研究開発法⼈科学技術振興機構(JST)主催、SIP第3期「ポストコロナ時代の学び⽅・働き⽅を実現するプラットフォームの構築」(以下、「ポスコロSIP」という)サブ課題A「新たな『学び』」のデザイン開発によるシンポジウムを2026年7⽉12⽇(日)にハイブリッド形式で開催しました。本シンポジウムでは、学習指導要領改訂の方向性やデジタルツールの活用を踏まえつつ、本課題の中で開発されたツールについて学校を中心とした現場で実装することを念頭に置いた講演・ワークショップを実施いたしました。

開催概要

  • 日時:2026年7月12日(日)13:30~17:40
  • 開催形式・場所:ハイブリッド開催(対面会場:TKP市ヶ谷カンファレンスセンター、オンライン:Zoomウェビナー)
  • 主催:JST
  • 共催:ポスコロSIPサブ課題A「新たな『学び』」のデザイン開発
  • 後援:内閣府、文部科学省、独立行政法人教職員支援機構、一般社団法人エビデンス駆動型教育研究協議会
  • 参加者数:・対面会場:一般来場87名(うち登壇者・関係者26名)※事務局除く
    ・オンライン:141名

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当日の動画

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プログラム

時間割 プログラム
第1部 未来の学びはどう変わるのか―政策と実践の接続
13:30-13:35 開会挨拶
 ⻄村 訓弘(プログラムディレクター(PD)/三重⼤学⼤学院地域イノベーション学研究科 教授)
13:35-13:50 基調講演①
 武藤 久慶(文部科学省 初等中等教育局 教育課程課長)
13:50-14:00 講演
 西岡 加名恵(サブ課題Aサブプログラムディレクター(SPD)/京都⼤学⼤学院教育学研究科 教授)
14:00-14:25 各研究開発テーマの取り組み紹介
14:25-14:40 基調講演②
 島谷 千春(独立行政法人教職員支援機構 審議役)
14:40-14:45 第1部のまとめ
 武藤 久慶(文部科学省 初等中等教育局 教育課程課長)
14:45-15:00 休憩
第2部 「新たな『学び』」を体験する―実践に向けた一歩
15:00-15:50 学校を越えた公共的対話としての遠隔授業(DCC体験)
 草原 和博(広島大学大学院人間社会科学研究科 教授)
学習データで見える化する学び(LEAF体験)
 緒方 広明(京都大学学術情報メディアセンター センター長・教授)
15:50-16:05 休憩
16:05-16:55 情報技術を教えるための教師向けデジタルリスキリング(DREP体験)
 長谷山 美紀(北海道大学 D-RED拠点長・大学院情報科学研究院 教授)
パフォーマンス課題とデジタル教材を組み込んだ単元設計(QTAL体験)
 松下 佳代(京都大学 名誉教授)
16:55-17:10 休憩
第3部 「新たな『学び』」の実装に向けた課題と展望
17:10-17:35 総括セッション
 西岡 加名恵SPD
17:35-17:40 閉会挨拶
 西村 訓弘PD

当日の様子

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第1部の冒頭では、西村訓弘プログラムディレクター(PD)より開会挨拶が行われました。挨拶では、ポスコロSIPの概要とサブ課題Aの目指す未来についての紹介が行われました。また参加者に向けて実践的な体験を通じて学びを深め、教育現場での活用につなげてほしいと呼びかけられました。

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続いて基調講演①として「生成AI時代の学習指導要領改訂」と題し、武藤久慶氏(文部科学省 初等中等教育局 教育課程課長)による講演が行われました。次期学習指導要領の検討にあたり、人口減少・少子高齢化、グローバル化、多様性と包摂、デジタル化・AI、変化の加速といった社会の大きな変化を踏まえた教育改革の方向性が示されました。これからの社会では、一人ひとりが主体的に人生を設計し、多様な価値観を持つ人々と協働する力が求められるため、知識習得中心から、人間にしか担えない好奇心、共感、課題設定、対話・合意形成などの能力を重視する教育へ転換する必要があると説明されました。また、多様な子どもの学びを支える個別最適な学習や探究的な学びの充実、デジタル学習基盤の活用、学習科学の知見に基づく指導の強化が提案されました。さらに、情報活用能力や民主主義の担い手としての資質を育成するため、子どもの意見表明やルール形成への参画を重視する方針が示されました。まとめとして、「好きを育み、得意を伸ばす」ことを軸に、多様性を包摂しながら主体性と当事者意識を育む教育課程の実現を目指す考えが共有されました。

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続いて西岡加名恵サブプログラムディレクター(SPD)よりサブ課題Aの概要が説明されました。サブ課題Aでは学習指導要領改訂の方向性と連動しながら、子どもたちが理想の社会と自身の人生を主体的に創造する力を育むことを目指していることが語られました。また、各研究開発テーマの取り組み内容にも触れ、研究成果を社会実装につなげ、教育現場で広く活用してほしいと呼びかけました。

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続いて各研究開発テーマより取り組み内容について説明がされました。

緒方広明氏(京都大学学術情報メディアセンター センター長・教授)より、教育データを活用した「個別最適な学び」の実現について紹介がありました。LEAFシステムは学習ログを統合したデジタルツインを構築し、学習者一人ひとりの理解度や特性を可視化することで、教材推薦やグループ編成などを最適化する仕組みであること、国内外で導入が進んでおり、AI時代に対応した個別最適な教育基盤としての可能性が示されました。

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松下佳代氏(京都大学 名誉教授)からは、知識・技能と探究を結び付ける「真正で探究的な学び」の実現に向け、実社会の課題解決に取り組むパフォーマンス課題とデジタルポートフォリオについて説明がありました。学習成果だけでなく学びの過程も可視化し、学習者自身が振り返りや対話を通じて成長を実感できる仕組みを提供していること、さらに学校現場ですぐに活用できる教材・評価基盤の整備を進めていることが紹介されました。

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草原和博氏(広島大学大学院人間社会科学研究科教授)は、人口減少時代に対応する新たな公教育として、学校や地域を越えて学び合う「デジタル・シティズンシップ・シティ(DCC)」を紹介しました。オンラインとAIを活用し、多様な地域や立場の人々との対話を通じて社会課題を考える学びを実践していること、また不登校児童も参加できる仕組みを整備し、「学校をつなぐ」ことで学びの機会を広げる取り組みを推進していることが紹介されました。

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長谷山美紀氏(北海道大学 データ駆動型融合研究創発拠点(D-RED)拠点長・大学院情報科学研究院 教授)からは、デジタルに関する知識の学び直しとなる社会人向けプログラム「北海道大学デジタルリスキリングプログラム(DREP)」の説明がありました。デジタル・AI活用が不可欠となる教育現場に向け、情報リテラシーやデータ活用、生成AIなどをオンラインで学べる仕組みを提供していること、教師のデジタルスキル向上を通じて、教育の質向上と業務効率化を支援する取り組みであることが紹介されました。

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続いて、基調講演②として「教師の学びはどう変わるか―NITSの実践と「新たな『学び』」の接続」と題し、島谷千春氏(独立行政法人教職員支援機構(NITS) 審議役)による講演が行われました。島谷氏からは子どもの主体的・対話的で深い学びを実現するためには、教師自身の学び方の転換が必要であるとの考えが示されました。このような考え方の具体的な事例としてNITSの中央研修が変わり続けている現状について紹介がありました。また、研修マネジメント力協働開発プログラム地域版(マネプロ地域版)の紹介を通じて学校や地域を越えた学び合いのコミュニティ形成を行っていること、現場の文脈に即した実践と成長を支援し、何を研修が担えるのかを考え続け、対話の文化を育てることを目指していることが紹介されました。

最後に武藤氏より第1部のまとめとしてポスコロSIPへの期待が語られました。武藤氏はお話の中でポスコロSIPの研究成果を教育現場へ実装し、学校と研究者が相互に知見を還流させる重要性を強調しました。またこのような取り組みを支えるために学校裁量の時間を拡充し、教員の研究・研修のための「余白」を確保する方針を紹介しました。多様な子どもや学校の実情に応じた学びを支えるため、多様なソリューションとしての探究的な学びや遠隔教育などの実践を広げ、現場と連携しながら教育改革を進めていく考えが示されました。

第2部では、各研究開発テーマのワークショップが行われました。

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草原チーム(草原和博氏、川本吉太郎氏、宇ノ木啓太氏、正出七瀬氏(以上、広島大学))によるDCC体験では、実際に鹿児島県の徳之島で行われた小学3年生の社会科の授業を模擬授業として体験するワークショップが行われました。オンラインではCH2(チャンネルツー)と呼ばれる不登校の児童生徒などが支援者の副音声による解説を聞きながら授業に参加する体験も提供されました。

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緒方チーム(緒方広明氏、許嘉瑜氏、豊川裕子氏、濱田さとみ氏(以上、京都大学)、志儀孝典氏、重久修平氏、白倉聖也氏、堀越泉氏(以上(株)内田洋行))によるLEAF体験では、参加者がLEAFを⽤いて英語の⽂章読解に取り組みました。参加者が分からない単語にマーカーを付けると、システムはその情報を可視化するほか、理解度や学習状況に応じてグループ分けを行うことができ、学習者一人ひとりに応じた学習支援を実現していました。

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長谷山チーム(長谷山美紀氏、鵜川久氏、水谷祐介氏(以上、北海道大学))によるDREP体験では実際のDREPのサイトにアクセスし、参加者はデジタルリテラシー、データ活用、AIの各コースを実際に体験し、データ可視化やAI活用の仕組みを学びました。教育現場での活用や教材開発への応用可能性が示され、デジタル人材育成の重要性が共有されました。

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松下チーム(松下佳代氏、奥村好美氏(以上、京都大学)、水越駿氏(TOPPAN(株)))による「パフォーマンス課題とデジタル教材を組み込んだ単元設計」と題したQTAL体験では、参加者はQTALサイトにログインした上で、実際に小学校国語のパフォーマンス課題(伝え方・聞き方のよい例とよくない例)などを体験し、意見交換を行いました。参加者からは今後に向けてコンテンツを拡大して欲しい等の期待の声が寄せられました。

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第3部の総括セッションでは西岡SPDのファシリテートのもと、各研究開発テーマからワークショップの成果や今後の展望が共有され、遠隔授業や教育データ活用、探究学習支援、デジタルリスキリングなどの取り組みを広く現場へ普及させる必要性が示されました。

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また、東博暢SPDからは、サブ課題Bで取り組む「学びと働き方の接続」について紹介し、リカレント教育やD&I、生涯学習プラットフォームの構築を進めていることを説明しました。また、生成AIの急速な進展を踏まえ、教員の課題、リスキリングやAI教育の重要性が一層高まっていることが指摘されました。AIに使われるのではなく使いこなす力や、初等中等教育の間に人間ならではの本質的な能力を育む教育の必要性を強調した上で、省庁横断的な取り組みへの期待を述べました。

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続いて大山潤爾SPDより生活サイクルにフォーカスしてサブ課題Cの取り組みを中心に現在の取り組みが紹介されました。結びにはこの取り組みをSIPが終わった後も持続的に実装するために本課題全体で一丸となって取り組んでいる旨が説明されました。

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最後に⻄村PDによる閉会挨拶が行われ、ポスコロSIPは単なる研究開発ではなく、当初から社会実装を目指して進めてきたプロジェクトであることが強調された上で、この3年間で各テーマの成果は高い完成度に達し、4年目に入り「現場実装」から「社会実装・社会浸透」への段階に入っているとの説明がありました。そのためには、学習指導要領など文部科学省の施策への落とし込み、教育現場での実践に向けたハードルを下げること、さらにはこのコンテンツを体験した人々を通じた行政などへの後押しが期待されることが述べられました。また本課題は社会基盤の側面があり、財政面を含め産業界や社会全体の理解と支援を得ながら成果を浸透させる道筋について語られ、最後に参加者に対して実際に活用し、その価値を現場から発信してほしいと呼びかけました。

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