研究開発成果

【開催報告】SIP第3期「ポストコロナ時代の学び方・働き方を実現するプラットフォームの構築」
シンポジウム「人口減少を機にひらく未来社会」

 2024年6月21日(金)、内閣府主催及び国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)共催によるSIP第3期「ポストコロナ時代の学び方・働き方を実現するプラットフォームの構築」(以下、「ポスコロSIP」という)のシンポジウムをハイブリッド形式(会場:JST東京本部地下1階大会議室/オンライン配信(Zoomウェビナー))で開催しました。本シンポジウムは、一般の方を対象に、ポスコロSIPが目指す社会像や取り組みを広く発信するとともに、未来社会をひらくイノベーターの方々との対話を通して、一人ひとりに何ができるのか考えるきっかけをつくる趣旨で開催しました。

開催概要

  • 日時:2024年6月21日(金)13:00~17:00
  • 会場:JST東京本部地下1階大会議室/オンライン配信(Zoomウェビナー)
  • 主催:内閣府
  • 共催:JST
  • 後援:デジタル庁、文部科学省、厚生労働省、経済産業省
  • 参加者数:会場/73名、オンライン/277名

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プログラム

時間割 プログラム
第1部 13:00~13:10 主催者挨拶
藤吉 尚之(内閣府科学技術・イノベーション推進事務局 審議官)
13:10~13:20 ポスコロSIPへの期待
篠原 弘道(戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)ガバニングボード座長/
     総合科学技術・イノベーション会議 有識者議員/
     日本電信電話株式会社(NTT)相談役)
13:20~13:45 課題の紹介
西村 訓弘(プログラムディレクター/三重大学大学院地域イノベーション研究科 教授・特命副学長)
13:45~15:05 ポスコロSIPで取り組む研究開発(各発表15分/質疑応答5分)
13:45~14:05 「デジタル・シティズンシップ・シティで「新たな『学び』」をつくる~越境する教室、公共的対話、公教育の再構築~」
草原 和博(広島大学人間社会科学研究科 教授)
14:05~14:25 「教える側の『学び』を支援する~バーチャル空間に教師の居場所を作る試み~」
能智 正博(東京大学大学院教育学研究科 教授)
14:25~14:45 「D&I社会実現へ向けて〜学び方と働き方の視点から〜」
石井クンツ 昌子(お茶の水女子大学 理事・副学長)
14:45~15:05 「だてプロの挑戦~誰もが自分らしい生き方(学び方、働き方)ができる社会の実現を目指して~」
山中 真也(室蘭工業大学大学院工学研究科 教授)
15:05~15:20 休憩
第2部 15:20~17:00 パネルディスカッション
■トークテーマ
・「乗り越えるべき日本社会の負」
・「イノベーターが考える道のひらき方」
・「私たちは今、何をすべきか」
・「どうすれば日本の未来は明るくなるか」
■登壇者
〈ファシリテーター〉
 西村 訓弘(プログラムディレクター/三重大学大学院地域イノベーション研究科 教授・特命副学長)
〈パネリスト〉
 相川 七瀬(歌手/國學院大學大学院文学研究科 修士課程1年)
 浅井 雄一郎(株式会社浅井農園 代表取締役社長)
 浮世 満理子(アイディア高等学院 学院長/一般社団法人全国心理業連合会 代表理事)
 野城 智也(サブプログラムディレクター(サブ課題D)/東京都市大学 学長)
 西岡 加名恵(サブプログラムディレクター(サブ課題A)/京都大学大学院 教育学研究科 教授)
 東 博暢(サブプログラムディレクター(サブ課題B)/(株)日本総合研究所 プリンシパル)
 大山 潤爾(サブプログラムディレクター(サブ課題C)/国立研究開発法人産業技術総合研究所 主任研究員)

当日の様子

第1部

  • 第1部の冒頭、藤吉尚之 内閣府審議官が主催者挨拶として、第6期の科学技術・イノベーション基本計画では、一人一人が多様なwell-beingを実現できる社会を目指しており、誰もが必要な能力を伸ばせる教育環境と、多様な働き方の中で能力を生かすことができる労働雇用環境を実現するプラットフォーム構築が重要であると述べました。

    写真:藤吉尚之 内閣府審議官が主催者挨拶
  • 次に、篠原弘道 SIPガバニングボード座長より、本課題はSIP初の社会科学的テーマの一つであり、地域の多様なステークホルダーと連携しながら新しい学び方と働き方を開発・検証していくことへの期待が寄せられました。

    写真:篠原弘道 SIPガバニングボード座長」
  • 続いて、西村訓弘プログラムディレクターより、ポスコロSIPが目指す社会像とミッションについて、経済成長期に作られた「従来のやりかた」を根本から見直し、「新しい仕組み」で動くように再構築する必要があるため、人口減少を好機としてとらえ「理想とする未来社会」を切りひらき、「個々の輝きが共鳴し、共に進化し続ける幸福な社会」を創造すること、その実現に向けて4名のサブプログラムディレクターと13の研究開発チームと共に取り組んでいることを紹介しました。それを受けて、4つのサブ課題からそれぞれ1名の研究開発責任者が研究開発内容と取り組み状況を報告しました。

    写真:西村訓弘プログラムディレクター
  • 草原和博・広島大学教授は、どこでもだれもが空間的距離、社会的格差や文化的相違を越えて共に学ぶことができるデジタル公共圏の実現を目指して、東広島市を中心に、過疎化が進む小規模学校を含めた複数の学校をネットワークで結んだ学習プログラムの開発や実証授業の取組などについて紹介しました。

    写真:草原和博・広島大学教授
  • 能智正博・東京大学教授は、教育現場において多様な子どもへの個別対応が強く求められる中で、教員のメンタルヘルスにも配慮しながら、子どもへの対応スキルなど教える側の学びを支援するバーチャル空間の構築を目指し、京都府伊根町での実証などについて紹介しました。

    写真:能智正博・東京大学教授」
  • 石井クンツ昌子・お茶の水女子大学理事・副学長は、個々が輝く社会、すなわちダイバーシティ&インクルージョン(D&I)社会の実現に向けて、これまであまり性差について注目してこなかった研究分野においても、性差を考慮した研究開発を行うことで新たなイノベーションを創出するジェンダード・イノベーションの視点がこれからは必要であると述べました。

    写真:石井クンツ昌子・お茶の水女子大学理事・副学長
  • 山中真也・室蘭工業大学教授からは、「誰もが自分らしい生き方ができる社会の実現」を目指した取組として、人口減少が進行する日本の縮図である北海道伊達市において、農園の働き手が生き生きと働くことで若者が農業を志し、地域の人々も加わって相互作用や相互学習が促され、次の行動を起こしていくような実践と、それを促すレバレッジポイントの検討などについて説明しました。

    写真:山中真也・室蘭工業大学教授・副学長

第2部

  • 第2部のパネルディスカッションでは、西村訓弘プログラムディレクターのファシリテーションの下、各パネリストの自己紹介に続き、4つのトークテーマについて議論を行いました。

    写真:4つのトークテーマ
写真:当日の様子「会場の様子」1
写真:当日の様子「会場の様子」2
写真:当日の様子「会場の様子」3

一つ目のテーマ「乗り越えるべき日本社会の負」では、浮世満理子氏が子供たちの受験ストレスや心身の負担を指摘し、相川七瀬氏は自身の中高時代や、大学生の就活がうまく行かない時などに自己否定の傾向に陥る例を紹介しながら、社会に個人を支える仕組みが必要であると述べました。浅井雄一郎氏は、若者は職業としての農業の選択には消極的であるものの、先進的な農業の一日体験に参加する人が意外に多いことから、学びと労働の共存が必要であると語りました。

二つ目のテーマ「イノベーターが考える道のひらき方」では、野城智也サブプログラムディレクターはイノベーターを多く見せることが若者にモチベーションをもたらし、社会変革に繋がるとの考えを語りました。また、東博暢サブプログラムディレクターは、ものの見方と考え方を変えることの重要性について、大山潤爾サブプログラムディレクターは自分からアクションしていくことの重要性について述べました。

三つ目のテーマ「私たちは今、何をすべきか」では、相川七瀬氏、浅井雄一郎氏、浮世満理子氏それぞれから、知らないことを知ること、体験していないことを体験すること、子どもたちにもその環境を与え、可能性を広げることが重要であるなどの指摘がありました。 四つ目のテーマ「どうすれば日本の未来は明るくなるか」では、野城智也サブプログラムディレクターは大学のトランスフォーメーションの重要性について、西岡加名恵サブプログラムディレクターは小さなイノベーションの積み重ねの必要性について説明しました。また、東博暢サブプログラムディレクターは、個人の多様な組織への所属と表現の場の重要性を述べ、大山潤爾サブプログラムディレクターは居心地の良い社会の実現を目指す考えを示しました。これらを受けて西村訓弘プログラムディレクターは、本課題は国家プロジェクトであり、思い切って取り組んでほしいと述べました。また、浮世満理子氏は、子どもたちがワクワクする未来像を描くことの重要性を、浅井雄一郎氏はエンパワーメントとモチベーションの重要性を、相川七瀬氏は社会の温かさの必要性を訴えました。

 最後に西村訓弘プログラムディレクターが、自分も何かができるという考え方で、自分の立場で社会を理解し、安心感を持って生きていくとそれぞれの個性が生かせる社会が実現する、それに向けて、ポスコロSIPは社会を動かすキーになる部分の研究開発に取り組んでいると締めくくりました。

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