成果概要

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海上豪雨生成で実現する集中豪雨被害から解放される未来[10] 情報科学を活かした社会調査・発信

2025年度までの進捗状況

1. 概要

本研究開発項目では気象制御を実現する上で必要となる社会調査・発信を、情報科学を活かして推進します。深層学習や視覚情報処理技術を用いて、集中豪雨の生成過程や介入効果を4次元で可視化し、気象介入の影響を解析することで気象制御研究の加速を図ります。さらに、この可視化システムを用いて、プロジェクトのアウトリーチ推進にも貢献します。
2025年度までに、レイマーチング法と深層ニューラル場を統合した4次元可視化システムを構築し、気象介入効果の定性的比較を可能としました。レイマーチング法の導入およびVRAM転送処理の最適化により、従来比30倍以上のデータ処理効率化を達成しました。また、深層ニューラル場を用いた移流モデリングに基づき、時間軸方向の補間技術を確立することで、滑らかな時系列可視化を実現しました。加えて、市民参加型ワークショップでの展示や成果映像の制作等を通じ、情報科学を活用した社会発信・アウトリーチ活動にも取り組みました。

2. これまでの主な成果

① 深層ニューラル場を用いた高精度な移流モデリング

2025年度は、2024年度に開発した幾何変換に基づく移流モデリング技術をさらに発展させ、深層ニューラル場を用いた補間手法を確立しました。本手法では、数値気象モデルの格子点データから時空間的な移流を学習し、時空間補間を行うことで、従来の線形補間(移流誤差0.92km/10min)を上回る精度(0.70km/10min)を達成しました。
特に、格子点上の移流を単純なベクトルとして扱うのではなく、隣接格子点間の関係性も含めて相似変換としてモデル化することで、補間精度が向上することを確認しました。また、元データを間引いて構成した線形補間モデルでは100.7MBであったモデルサイズを、1.0MBまで大幅に軽量化することに成功しました。
補間に用いた移流データおよび解像度と補間精度の関係を図1に示します。ステップサイズが2における線形補間モデルと同等の精度をステップサイズ4でも達成できており、モデルサイズ・補間精度の双方で優位性を確認しました。

図
図1:(左)対象とした4次元データと(右)補間モデルのサイズと補間性能の関係
② レイマーチング法による介入効果の高度可視化

空間再現ディスプレイを用いた可視化において、従来のポイントクラウド表示で生じていた不連続性を解消するため、Unityのカスタムシェーダを用いたレイマーチング法を導入しました。図2に示すように、氷(QICE:赤)、雲(QCLOUD:白)、雨・雪・霰(QRAIN等:青)などの大気成分を、空間的に連続した滑らかなボリュームデータとして表現可能となり、気象介入前後における定性的比較が容易になりました。さらに、実行時再量子化およびVRAM転送処理の最適化により、従来比30倍以上のデータ処理効率化を達成しました。これにより、64GB級の大規模4次元データに対するリアルタイム処理の実現可能性を確認しました。

図
図2:開発したシェーダにより表示した4次元ボリュームデータ(2014年広島豪雨)

3. 今後の展開

2026年度は、開発した各技術の統合、多様な事例への適用、および社会実装を見据えた発信を進めます。
まず、深層ニューラル場による移流モデリングとレイマーチング法を統合した4次元可視化システムの高度化に取り組みます。気象研究者との連携により高解像度数値モデルを取得し、時間方向の補間品質を向上させることで、気象介入シミュレーションのより自然な可視化を実現します。本システムを用いて、クラウドシーディングや地表風制御など複数の介入シナリオを対象とした可視化を行い、気象制御効果の多角的評価を進めます。
あわせて、実測レーダデータへの適用や成果映像の公開等を通じたアウトリーチ活動を展開します。最終的には、情報科学技術を駆使した気象介入可視化基盤を構築し、極端風水害リスクの理解促進および防災・減災研究への貢献を目指します。