プログラム紹介

三好 建正PD 写真

ムーンショット目標82050年までに、激甚化しつつある台風や豪雨を制御し極端風水害の脅威から解放された安全安心な社会を実現

プログラムディレクター(PD)三好 建正理化学研究所 計算科学研究センター チームリーダー

概要

 地球温暖化が進み、台風や豪雨等の極端気象による風水害が激甚化・増加している中で、災害につながる極端気象自体の強度やタイミング、発生範囲などを変化させることができれば、直接的な被害を回避することや格段に被害を軽減させられる可能性があります。
 本研究開発プログラムでは、極端気象の深い理解、気象モデルやデータ同化、アンサンブル手法などの気象予測技術の向上等により気象制御理論の構築を進めるとともに、社会的・技術的・経済的に実現可能な気象制御技術の実現を目指した研究開発を進めていきます。

イラストレーション

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PDからのメッセージ

 地球温暖化の進行等により激甚化している極端風水害による被害を、台風や豪雨の強度・タイミング・発生範囲などを変化させる気象制御技術を開発して大幅に軽減することを目指しています。研究開発では、シミュレーションを活用した制御理論、人工的に大気に擾乱を与える制御技術、基盤となる数理やELSIに関するテーマをマッチングし推進していきます。目標の実現に向け、人類の夢であった気象の制御を人類共通の開かれた技術として作り上げるため、PDとしてリーダシップを発揮したいと思います。

研究開発プロジェクト

2021年度採択

プロジェクトマネージャー(PM) 澤田 洋平(東京大学 大学院工学系研究科 准教授)
研究開発プロジェクト概要

本プロジェクトでは、小さな外力で大きく気象の未来を変えるための気象制御理論の構築と、制御実施を合意形成するために必要な極端風水害の社会インパクトの精緻な予測能力の獲得を達成します。それにより、2050年には、民主的な社会的意思決定に基づく気象と社会の制御で極端風水害の恐怖から解放された社会の実現を目指します。

プロジェクトマネージャー(PM) 筆保 弘徳(横浜国立大学 総合学術高等研究院 台風科学技術研究センター長/教育学部 教授)
研究開発プロジェクト概要

本プロジェクトでは、気候変動に伴い激甚化が予想される台風を、防災インフラの有効範囲程度まで抑制する制御理論と要素技術を開発します。航空機、船舶、衛星での高精度観測と台風内部まで再現する数値モデル開発を行い、台風制御理論を確立します。災害予測と影響評価を行い、台風制御の社会受容性と合意形成の問題にも取り組みます。それにより、2050年には台風の脅威から解放された安全で豊かな社会の実現を目指します。

プロジェクトマネージャー(PM) 山口 弘誠(京都大学 防災研究所 准教授)
研究開発プロジェクト概要

本プロジェクトでは、ゲリラ豪雨と線状対流系豪雨の強度を抑制するための研究開発に取り組みます。数値気象モデル・現地観測・室内実験をベースとして、効果的にインパクトを与える工学的手法を複数開発します。それらを多時点・多段階に実行し、かつ、豪雨制御による影響評価と社会受容性を考慮した制御システムを構築します。それにより、2050年には、豪雨制御技術が自然と親和する未来社会の形成に貢献します。

プロジェクトマネージャー(PM) 高垣 直尚(兵庫県立大学 大学院工学研究科 准教授)
研究開発プロジェクト概要

気象制御を実現するためには、精度の高い予測が必要です。特に台風においては、(1)台風強度予測精度が悪い、(2)自然現象と台風制御効果とを見分ける事が難しい、という2つのボトルネックがあります。本プロジェクトでは、台風を模倣する大型室内実験水槽を用いて、台風下の海面を通しての運動量・熱の輸送機構を解明し、運動量・熱の輸送量を定式化し、ひいては2つのボトルネックの解決を目指します。

プロジェクトマネージャー(PM) 西澤 誠也(理化学研究所 計算科学研究センター 研究員)
研究開発プロジェクト概要

気象制御を実現するためには、最適な制御手法決定に必要となる、現象の発生場所・時刻・強度などが必然的に決まるのかそれとも偶然的かという蓋然性の正確な推定がボトルネックとなっています。本プロジェクトでは、蓋然性推定に誤差をもたらす気象シミュレーションモデルに内在する問題の解決のため、従来計算手法の延長的改良ではなく質的に異なる手法を開発することで、蓋然性推定を可能にする気象モデルの開発を目指します。

プロジェクトマネージャー(PM) 野々村 拓(名古屋大学 大学院工学研究科 教授)
研究開発プロジェクト概要

気象制御を実現するためには、気象制御効果を最大化するためのアクチュエータ位置が不明であるというボトルネックを解決する必要があります。本プロジェクトでは、アクチュエータ位置最適化手法を整理、開発および評価します。そして開発された手法によって得られたアクチュエータ位置を利用することで制御効果が向上することを気象シミュレーション実験によって示します。

プロジェクトマネージャー(PM) 森 修一(海洋研究開発機構 地球環境部門 大気海洋相互作用研究センター 調査役(上席研究員))
研究開発プロジェクト概要

気象制御を実現するためには、現象の継続的な観測が必要です。台風については、その発生発達に重要な中心周辺域の海上大気や海洋表層の継続的な監視が重要ですが、それは航空機や衛星では難しくボトルネックとなります。本プロジェクトでは、自律的に台風の中心周辺域を追跡可能な仮想係留(Virtual Mooring)機能を持ち、発生発達に伴う移動と共に大気海洋データを継続的に取得できる海上無人観測機を開発します。

2023年度採択

プロジェクトマネージャー(PM) 小槻 峻司(千葉大学 国際高等研究基幹/環境リモートセンシング研究センター 教授)
研究開発プロジェクト概要

本研究は、陸域の集中豪雨被害を緩和するために、上流の海上で事前に豪雨を起こして大気中の水蒸気量を大幅に減らす技術を開発します。大気を直接改変できる力には限界があるため、介入効果を最大化して豪雨を生成するための数理に基づく気象制御手法を確立します。開発する技術の社会実装に向け、法制度や環境リスク評価などの社会科学研究も推進し、2050年までに社会が受容可能な気象制御技術を確立します。

終了

プロジェクトマネージャー(PM) 小槻 峻司(千葉大学 国際高等研究基幹/環境リモートセンシング研究センター 教授)
研究開発プロジェクト概要

気象制御を実現するためには、意思決定のボトルネックである「制御効果最大化」の議論を可能とする必要があります。本プロジェクトでは、制御容易性の定量化のため、過去の災害事例に対し「少しの操作で災害を回避できる災害/非災害レジームの分水嶺が存在するか?」を機械学習により明らかにすることと、制御による被害低減効果の定量化のため、非制御・制御シナリオの被害金額・影響人口を日本全域で算出することを目指します。

アドバイザー

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中澤 哲夫 東京大学 大気海洋研究所 学術支援職員
坂上 貴之 京都大学 大学院理学研究科 教授
石田 純一 気象庁総務部 参事官
井村 順一 東京工業大学 工学院 教授/理事・副学長
潮 俊光 南山大学 理工学部 教授
牛尾 知雄 大阪大学 大学院工学研究科 教授
大原 美保 東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター 教授
齊藤 和雄 気象業務支援センター 国際事業部 専任主任技師
標葉 隆馬 大阪大学 社会技術共創研究センター 准教授
水藤 寛 東北大学 材料科学高等研究所 教授
山田 道夫 京都大学 数理解析研究所 特任教授
余田 成男 京都大学 国際高等教育院 副教育院長/特定教授

*副構想ディレクター(サブPD)

関連情報

お問い合わせ

国立研究開発法人科学技術振興機構 ムーンショット型研究開発事業部 目標8 担当

e-mail moonshot-goal8メールアドレスjst.go.jp