成果概要
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海上豪雨生成で実現する集中豪雨被害から解放される未来[8] 経済被害推定
2025年度までの進捗状況
1. 概要
本項目は、気象制御を実施した際の経済被害低減効果を推定するために、日本国内全域を対象とした経済被害額の推定技術を開発しています(図1)。
具体的には、①気象制御を実施した場合と実施しなかった場合での氾濫域や浸水深の変化を高解像度で推測できる、日本全国を対象とした洪水氾濫再現モデルの開発、②人口および民間資産・企業活動に関する各種統計データに基づく曝露資産データベースを構築し、日本全域の洪水被害を浸水深情報に基づき推定可能な経済被害額推定モデルの開発、③豪雨をトリガーとして生じる斜面崩壊現象を日本全国で再現・リスク推定するモデルの開発、および2025年度からの新規課題として④気象制御の社会実装シナリオの策定、の4課題を並行して実施しています。
開発した洪水氾濫再現モデル・経済被害額推定モデル・斜面崩壊リスク推定モデルと社会実装シナリオを活用し、気象制御による経済被害低減効果の定量化と実施に向けての社会実装を目指します。

2. これまでの主な成果
① モデル地域を対象とした災害データ構築(課題8-1)
2025年度は九州地方をモデル地域に選択し、国土交通省の取りまとめる水害統計の統合による水系・氾濫発生メカニズム別の氾濫発生件数・被害額の整理と、国土地理院・国土交通省等の公的資料に基づく浸水領域データの収集と豪雨事象への紐付けを実施し、代表的な豪雨事象について各種データの網羅性に基づいて再現解析対象として選択可能かを評価しました。また、課題4-1、8-2と協働し、2021年九州北部豪雨事例を対象として、気象制御モデル実験による洪水氾濫現象・経済被害額の介入有無による変化の解析・算出を実施し、降雨量の変化による氾濫規模・被害額の変化の整合性を確認しました(図2)。
② 経済被害推計のワークフロー構築(課題8-2)
経済被害推計の全体的なフレームワークおよびワークフローの構築を実施し、人的被害・民間固定資産・営業停止(利益損失)等間接被害をワンストップで算出可能な統合版モデルを作成しました。構築したモデルを用いて2015年鬼怒川氾濫事例に関する再現計算をベンチマークテストとして実施したところ、被害額の平均値が実績値に対して7~9割の範囲に入っており、今後パラメーターチューニングなどの調整は必要であるものの、ベンチマークテストとして良好な結果が得られました。また、課題4-1、8-1と協働し、2021年九州北部豪雨事例の気象制御モデル実験の解析を実施しました(図2)。

③ 斜面崩壊ハイブリッドモデルの構築(課題8-3)
豪雨がトリガーとなる斜面崩壊現象について、確率統計モデルならびに力学モデルの性能評価を実施し、2014年広島豪雨について適用・検証を実施しました。確率統計モデルでは降雨分布・斜面災害実績からパラメーターを考察し、精度が向上した結果、ROC-AUC=0.73の精度を得ました(ROC-AUC : 1に近いほど精度が高く、ランダム推定で0.5)。力学モデルにおいても、パラメーター感度分析から土壌・地質条件の影響が大きいことを特定し、データ区分を改めることで推定精度が向上しました。また、両モデルの出力値の関係式を構築し、モデルのハイブリッド化による適用可能領域の拡大を実施しました。
④ 自然災害タイムラインの事例収集・検討(課題8-4)
日本国内における既往の自然災害(洪水・土砂災害・高潮等)に関するタイムライン事例を収集し、災害種および地域性や気象特性を考慮した整理を実施しました。また、収集・整理した事例に基づき、行政による既往の予警報の枠組みを前提とした住民・行政・気象制御主体それぞれのタイムラインの概略を策定し、これらタイムラインと気象制御(シーディングを想定)の各段階のタイミングの関係を例示的に検討しました。
3. 今後の展開
洪水氾濫再現モデルと経済被害推定モデルの開発においては、日本各地の過去の主要な水害イベントを対象とした浸水領域・被害額の再現計算を実施します。斜面崩壊リスク推定モデルの開発においては適用対象事例を拡大した検討を実施します。社会実装シナリオ検討においては、モデル地域を対象とした気象制御を想定した住民・行政・気象制御主体のタイムライン策定を実施します。