[トポロジー]トポロジカル材料科学と革新的機能創出

戦略目標

トポロジカル材料科学の構築による革新的材料・デバイスの創出

研究総括

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村上 修一(東京工業大学 理学院 教授)

概要

 本研究領域は、トポロジーという新たな物質観に立脚したトポロジカル材料科学の構築と、それによる革新的な新規材料・新規機能創出を目的とし、「トポロジカル絶縁体」に代表される様々なトポロジカル量子材料に加え、磁性、光学、メカニクス、ソフトマター(高分子材料・ゲル材料など)分野など、広範な領域における”トポロジカル材料科学”の探求を通して、原理的にその性能向上の限界が顕在化してきているエレクトロニクスデバイス分野等において新たなパラダイムを築くことを目指します。
 具体的には、電子材料、磁性材料、光学材料、メタマテリアル、高分子材料、分子性材料といった広範な分野での新規トポロジカル物質を開拓し、それらの材料としての設計・制御による革新的機能創出およびデバイス創成へつながる先駆的で独創的な研究を推進します。さらにトポロジカル材料科学の体系化を目指し、物理学・化学・工学・数学等の広範な学問分野の連携を推進します。これらを通じて、様々なトポロジカル物質群、機能群を統合し、従来の物質観を超えたトポロジー材料科学を構築します。
 トポロジーを共通言語とした新規物質・材料開発、理論・計算研究、計測・解析技術の開発の緊密な連携を通じて、低エネルギー社会、超スマート社会といった社会的ニーズに応える、革新的材料・デバイス創出につながる物質・材料研究の新たなパラダイムを生み出します。

 本研究領域は、文部科学省の選定した戦略目標「トポロジカル材料科学の構築による革新的材料・デバイスの創出」のもとに、平成30年度に発足しました。

領域アドバイザー

石坂 香子 東京大学 大学院工学系研究科 教授
石原 照也 東北大学 大学院理学研究科 教授
大淵 真理 富士通研究所 シニアマネージャー
齊藤 英治 東京大学 大学院工学系研究科 教授
笹川 崇男 東京工業大学 科学技術創成研究院 准教授
佐藤 昌利 京都大学 基礎物理学研究所 教授
高田 十志和 東京工業大学 物質理工学院 教授
坪井 俊 東京大学 大学院数理科学研究科 教授
眞子 隆志 日本電気株式会社 システムプラットフォーム研究所 技術主幹
村木 康二 日本電信電話株式会社 物性科学基礎研究所 主幹研究員
求 幸年 東京大学 大学院工学系研究科 教授

平成30年度募集・選考・領域運営にあたっての研究総括の方針

1.背景

 超スマート社会、低エネルギー社会といったさまざまな社会ニーズに応えるためには、技術革新につながる新材料を生み出すことが重要であることは言うまでもありません。たとえば、情報通信技術(ICT)や人口知能(AI)技術の発展を支える半導体エレクトロニクス技術は、より一層の微細化・高速化・低消費電力化が要請されています。しかしながら、「ムーアの法則」の終焉が世界的に認識されつつあるように、従来技術の原理的な限界が見え始めており、Society 5.0で示される超スマート社会の実現のためには、エレクトロニクス技術、超高速情報通信・処理技術だけでなく、その基盤となる材料科学にも新しい技術的パラダイムが希求されています。
 近年、トポロジカル絶縁体に起源を発するトポロジカル物質群は、スピントロニクス、フォトニクス、量子情報処理など広範な分野で大きな変革を生み出す可能性があるとされており、世界的に注目を集めています。例えば、トポロジカル絶縁体では、物質に内在するトポロジーに起因した境界や界面での特異な物性を利用した機能発現が期待されています。また、実空間のトポロジーにおいても、位相欠陥などのトポロジカルな性質を積極的に利用したスピン流制御、超空間・超流動現象、分子の幾何学的性質や絡み合いの制御による高分子材料や超分子材料などの高機能化も進んでいます。
 このような個別の分野・学問領域で発展してきたトポロジーに立脚した物質探索・材料開発をトポロジカル材料科学として体系化し飛躍させることは、次世代の材料・デバイスを牽引し我が国の競争力を高めていくために急務と考えられます。

2.募集の方針

 本研究領域では、電子材料、磁性材料、光学材料、メタマテリアル、高分子材料、分子性材料といったあらゆる材料分野を対象に、”トポロジカル”な物性を最大限に引き出した革新的な新規材料および機能創出をめざします。さらに、それらの知見を統合しトポロジーの観点から再構成することで、新物質予測・材料設計・材料特性予測を可能とする新たな理論体系に裏打ちされた材料科学、”トポロジカル材料科学”を構築します。
 これらを達成するためには、トポロジーを共通言語として、各分野での革新的な機能創出をめざす新規物質・材料開発、機能の端緒となる現象の本質的理解および材料特性や機能の予測を可能にするための理論・計算研究、材料開発や理論研究の基盤となる計測・解析技術の開発、が連携した研究推進が必要となります。近年トポロジカル絶縁体などの進展が著しい物性物理分野に閉じることなく、物理学・化学・工学・数学といった広範な学問分野の強い連携を推進します。
 この構想を実現するために、本研究領域では幅広い分野からの独創的な研究提案を期待します。おおまかに以下の3つのアプローチからの研究を募集します。

 (1)トポロジカルな特性を利用した新規物質・材料開発および機能創出
 (2)トポロジカル材料科学の構築のための理論・計算
 (3)トポロジカル材料の計測・評価技術の創出

 以下、各アプローチに関して期待する提案内容を詳述します。

 (1)トポロジカルな特性を利用した新規材料開発および機能創出
 物質のトポロジカルな性質を最大限に引き出した新規材料開発および機能創出をめざす研究提案を募集します。将来的な応用展開につながる革新的な機能創出が見込まれる物質開拓・材料開発であれば、材料系の種類は問いません。また、トポロジカル材料を利用した革新的なデバイス創出にかかる野心的な提案を歓迎します。
研究提案にあたっては、自身の提案する材料系が、応用が見込まれる材料分野での課題解決にどのように貢献するかを、当該分野の基礎科学的・工学的立ち位置を踏まえて明示してください。

 (2)トポロジカル材料科学の構築のための理論・計算
 トポロジカル材料分野は、理論・計算研究が新現象や新たな物性発現を予測し、実験がそれを実証することで進展してきました。その一方で、実材料への展開を見据えた理論構築は十分ではありません。本研究領域では、実材料への展開に貢献する工学的な視点を含めた理論・計算によるアプローチを歓迎します。具体的には、以下のような研究提案を期待します。

 ア.トポロジカルな性質を利用した新現象の予測や新規物質の予測を可能とする理論・計算
 イ.実材料を見据えた温和な環境での機能発現など既知のトポロジカル物質の特性向上を可能とする材料設計指針の提示
 ウ.トポロジカル材料群を貫く普遍的な理論体系・学理構築
 各材料分野における理論・計算的な提案にかぎらず、分野横断的な理論の提示や新手法の開発を可能とする数学分野・素粒子物理学分野などからの提案を歓迎します。

(3)トポロジカル材料の計測・評価技術の創出
 トポロジカル物質群の特異な現象や物性を評価する計測手法の開発や高度化に関する研究提案を募集します。表面形状や界面形状の制限を緩和する分光学的手法の開発、物質中の未知準粒子の決定的な観測手法など、提案する分野での計測技術上の課題にブレイクスルーを与えるような提案を期待します。

3.選考の方針

 本研究領域では、従来なされている研究の延長にあるものやこれまでの研究を単なる組み合わせただけの、既存技術の改良研究は対象としません。自身の提案する”トポロジー”とは何か、そこから得られる革新的な機能や学理としての普遍性とは何か、徹底的に考え抜かれた、独創的で革新的なアイデアや概念の提示を期待します。そのためには、国際的な研究動向を明示し、従来の研究と比較した優位性・独創性を研究提案の中で明確にしてください。さらに、さきがけ期間内での計画の達成は前提としつつ、近い未来での社会的課題への解決に資する応用への展望がされるような、新たなサイエンスの源流を開拓する意欲的な研究提案を期待します。
 また、これまでトポロジカル物質・材料研究に従事してこなかった方からの挑戦的な提案も歓迎します。そのため、研究提案時には計画の実現性を担保する材料としての予備的な実験等は必要としません。ただし、着想段階に留まっている提案であっても、論理的に研究計画の実現性を示すことを強く求めます。 材料創出にかかる研究提案については、既存の枠組みを超えた質的に新しい着想に基づく新規材料開発・機能創出の研究を期待します。また、材料科学の諸分野(電子材料、磁性材料、光学材料、メタマテリアル、高分子材料、分子性材料等)にまたがる分野横断的な提案も歓迎します。
 理論・計算にかかる研究提案については、既存の分野内で知見を一歩二歩先に進めるような研究ではなく、質的に新しい要素を組み込んだ研究、新たな分野の開拓や分野横断的な成果へとつながる研究を期待します。また、当該研究提案がどのようにトポロジカル物質・材料研究につながるかの明確な説明が求められます。
計測・評価にかかる研究提案については、トポロジカル材料に関わる新規計測手法の開発や高度化を通じて、トポロジカル材料の新規機能発現につながるような革新的提案を期待します。

4.領域運営の方針

 本研究領域では、個人研究者が短期的な成果に固執することなく、3年半腰を据えてじっくり独創的研究に取り組めるような環境を提供できるよう、研究総括・領域アドバイザーが一丸となってサポートしていきます。さらに、さきがけ研究での異分野研究者との交流により、新たな研究の芽を発見し、それを育んでいける雰囲気を作り、分野横断的な研究交流を強く推奨します。同領域のCREST研究領域等とも積極的に連携を行います。また研究の効率的な推進のために、海外との共同研究や国内外の関連コミュニティとの連携を推進します。
 なお、研究期間は原則3年半以内、研究費は、総額4,000万円(間接経費を除く)を上限とします。

プログラム

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