事業成果

先見性のある研究開発戦略の提言・実現

研究開発の新たな潮流の創造促進2019年更新

研究開発戦略センター(CRDS:Center for Research and Development Strategy)とは

研究開発戦略センター(CRDS)は、国の科学技術イノベーション政策に関する調査、分析、提案を中立的な立場に立って行う組織として、平成15年7月に、独立行政法人科学技術振興機構(当時の名称)に設置された。

「戦略プロポーザル」や「研究開発の俯瞰報告書」等の成果は、JSTのみならず、文部科学省、内閣府等の政府関係機関に情報提供され、関係府省での各プログラムや科学技術基本計画等の科学技術イノベーション関係施策の策定に役立てられている。

集合写真

「異分野融合領域・横断テーマ報告書」

多様化・複雑化する社会にあって、科学技術が人類・社会に求められる様々な問題と向き合うには、個々に発展してきた学問体系を越えて新しい分野を定義し取り組む、または複数分野の連携により新たな融合領域を生み出して取り組むこと、すなわち異分野融合型研究が世界中で注目されている。

CRDSでは世界的に異分野融合型研究が注目される今、どのような異分野融合領域・横断テーマが求められるのか、あるいは見出されつつあるのかについてとりまとめを行い、「Beyond Disciplines -JST/CRDSが注目する12の異分野融合領域・横断テーマ (2018年)-」を平成30年8月に発行した。

本報告書では「融合」の考え方とともに、「データ駆動型研究開発」、「物質・資源循環システム」、「バイオ材 料工学」、「複雑社会における人間の意思決定を支える情報科学技術」、「生命 現象に迫る革新的計測技術」、「融合を促進するR&Dインフラ・リソースのプラットフォーム」など、具体的な注目研究テーマや研究システムの事例を紹介している。さらには、融合を考え、推進する上で参考となる国内外の制度やプログラムの事例も紹介している。

連携融合

「革新的コンピューティング」

CRDSでは、物理的な世界(フィジカル空間)とコンピュータやネットワーク上のサイバー空間とが高度に融合したサイバーフィジカルシステム(Cyber Physical System:CPS)の実現に必要となる高度な情報処理を可能とする革新的なコンピューティング技術の研究開発課題と推進方法に関する研究開発戦略を提言した(平成30年3月戦略プロポーザル発行)。

革新的なコンピューティング技術の研究開発課題は、アルゴリズム・ソフト、回路・アーキテクチャ、デバイス・材料の全ての技術レイヤーに関わる。しかし、これらの技術を網羅的に行うのではなく、重要な応用に向けて、時間軸を考慮した計算ドメイン志向により各技術レイヤーから適切な技術を選択し、垂直統合的な技術開発を行うことが重要である。

また、これらの研究開発の推進には計算ドメインごとの研究開発を垂直統合的に行う体制構築が必要であり、世界の知識や人材を活用し、アルゴリズム・ソフト、回路・アーキテクチャ、デバイス・材料関連学会の連携による新たな研究分野の創成と新たなコミュニティの形成が望まれている。

早期段階からステークホルダーを巻き込みプロポーザルを策定することで、本戦略プロポーザルの発行後ただちに関係府省や関係機関における新たな研究開発プロジェクト等の発足に活用された(下記参照)。

戦略プロポーザル「マテリアルズ・インフォマティクス」の活用事例
  • 文部科学省 平成30年度戦略目標「Society 5.0を支える革新的コンピューティング技術の創出
  • JST戦略的創造研究推進事業(CREST)「Society 5.0を支える革新的コンピューティング技術」(H30-)
  • JST戦略的創造研究推進事業(さきがけ)「革新的コンピューティング技術の開拓」(H30-)
  • 内閣府 SIP課題「フィジカル領域デジタルデータ処理基盤技術」
  • 内閣府 PRISMターゲット領域「革新的フィジカル空間基盤技術」
  • 経済産業省(NEDO)「AIチップ開発加速のためのイノベーション推進事業」(H30-)
  • 経済産業省(NEDO)「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発」(H30-)

「マイクロバイオーム」

CRDSでは、ヒトの上皮(口耳鼻腔、消化管、皮膚、呼吸器、生殖器など)に存在する細菌、真菌、ウイルスなどの集団であるマイクロバイオーム(微生物叢)に着目し、関連する様々な生命現象・疾患の理解の深化と革新的健康・医療技術の創出を目指した研究開発戦略を提言した(平成28年3月戦略プロポーザル発行)。

マイクロバイオームは、生体局所の恒常性維持のみならず、全身の恒常性維持とも大きく関係することが近年明らかになっており、生命現象の本質的な理解における重要な研究対象である。また、ある種の治療困難な腸疾患では、マイクロバイオームの改善(便移植)が劇的な治療効果を示しており、今後も様々な疾患に対するブレイクスルーとなる可能性が期待される。また、マイクロバイオームの変化は疾患の発症、重症化に先立って起こると考えられ、健康状態の評価や改善などにつながる技術開発も期待されている。これらを通じ、健康寿命の延伸、医療費の最適化、産業競争力の強化などへの貢献が可能と考えている。

その後、CRDSの提案内容が関係機関における新たな研究開発プロジェクト等の発足に活用された(下記参照)。さらに、産業界やメディア、学会など多方面にその影響が波及しており、CRDSの提言に端を発したマイクロバイオームに関する取り組みが次々と広がっている。

戦略プロポーザル「マイクロバイオーム」の活用事例
  • 文部科学省 平成28年度研究開発目標「宿主と微生物叢(そう)間クロストーク・共生の解明と健康・医療への応用」(平成28年3月)
  • AMED-CREST、PRIME「微生物叢と宿主の相互作用・共生の理解と、それに基づく疾患発症のメカニズム解明」(平成28年4月~)
  • AMED-LEAP「腸内細菌株カクテルを用いた新規医薬品の創出」(平成28年9月~)
  • 上記の他、大手製薬企業等19社が参画するコンソーシアムの発足、本提言に関して専門誌からの寄稿依頼やメディアからの取材依頼が相次ぐなど、多方面に影響が波及している。

「元素戦略」

「元素戦略」は、科学者の議論から生まれた「元素の機能を最大限に発揮することで、夢の新材料を実現する」というビジョンを具体化するために、化学、物理、金属、セラミクス、鉄鋼などの学会、大学、研究所、企業などと連携して、CRDSが戦略プロポーザルとしてとりまとめたものです(2007年10月発行)。希少元素の減量・代替・循環・規制、および元素の新機能探索を国として推進すべきという提案だった。

関係府省に対しても「元素戦略」の必要性を説き、産学官の様々な関係者の協力を得て、2007年に文部科学省の「元素戦略プロジェクト」が、経済産業省の「希少金属代替材料開発プロジェクト」との密な連携で研究開発をスタートした。その後も関連施策が次々とできた。

「元素戦略」は、資源の限界を克服し、新たな物質材料の基盤技術を拓き、さらにはわが国の産業界はもとより世界の産業にも貢献することを目的とし、現在なお展開を続けている。

「元素戦略」関連の研究開発政策

CRDSの活動の基本

CRDSのあるべき姿
CRDSは我が国および人類社会の持続的発展のため、 科学技術振興とイノベーション創出の先導役となるシンクタンクを目指します。
CRDSの任務
  • 1. CRDSは国内外の社会や科学技術イノベーションの動向及びそれらに関する政策動向を把握し、俯瞰し、分析します。
  • 2. これに基づき、CRDSは課題を抽出し、科学技術イノベーション政策や研究開発戦略を提言し、その実現に向けた取組を行います。
任務の実行にあたって
CRDSは我が国産学官の関係者、社会のステークホルダー、更には外国関係機関と積極的に連携、情報・意見交換を行います。
そして、得られた成果については、外部に積極的に発信します。