社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワークの構築|RISTEX

RISTEX社会技術研究開発センター

プロジェクト
2021年度採択

孤独・孤立のない社会の実現に向けたSNS相談の活用

写真:上田 路子

研究代表者:上田 路子

理化学研究所脳神経科学研究センター 客員研究員

SNS相談、援助要請行動、メンタルヘルス、自殺予防、テキスト分析

研究開発期間:2021年11月~2023年3月

プロジェクト概要

孤独・孤立問題を抱える人をSNS相談を通して適切な支援につなげる

孤独・孤立及びそれに付随する悩みを抱える人たちを、辛い気持ちが深刻化する前に相談機関につなげることは重要な社会的課題です。特にコロナ下ではSNS相談などの非対面式相談機関の重要度が急上昇しています。しかし、急増した相談件数にSNS相談の対応能力が追いついていません。さらに、SNS相談は比較的新しいサービスであり、有効性の検証が世界的に見てもまだ不十分です。一方で、孤独・孤立を抱える人に限らず、困難を抱える人々が実際に相談機関に援助要請をするまでにはいくつもの心理的・社会的障壁が存在し、相談機関につなぐことは容易なことではありません。

援助要請行動の促進とSNS相談の運用上の課題の解決を通じた孤独・孤立のない社会の実現

本プロジェクトは望まない孤独・孤立を抱えている人たちが生きやすい社会を実現し、最終的には孤独・孤立とそれに付随する問題を予防・解決するために、①社会的孤立・孤独が発生するメカニズムをハイリスクグループ及び一般市民のデータを用いて理解した上で、②孤独・孤立を抱えている人たちの援助要請行動を引き出す方法を実践的に明らかにし、③悩みを抱える人向けのSNS相談の運用上の課題を解決することを目標とします。①から③まで一体的に実施するために、①で得られた知見に基づいて孤独・孤立予防施策を開発し、②と③において現場で実施・検証(=PoCの実施)を行います。これらの目標を達成することにより期待されるアウトカムは、悩みを抱え困っている人がスティグマの影響を受けずに援助要請行動を容易にすることができ、そして実際に援助要請をした際には適切な援助を常に速やかに享受できる社会の実現です。最終的には、困難を抱える人がいつでもどこからでも相談をすることのできる環境を提供し、必要な支援につながる社会の構築に貢献することを目指します。

上田プロジェクト概要図

Q&A

社会的孤立・孤独の一次予防のために、本プロジェクトが目指す社会像についてもう少し教えてください。
深刻な孤立・孤独状態にある人は、他の人が親しくなろうとしても拒絶したり、援助要請もしなくなったりする傾向にあることが分かっています。そしてさらに孤立・孤独を深めてしまいます。そのため、そのような状態になる前に誰かとつながることが大切ですが、つながる相手が周りにいない、あるいは対人コミュニケーションが苦手な人は一定数いらっしゃいます。そのような方でも気軽にそして安全に相談員とオンラインでつながり、自分の気持ちを話せることができる環境を整えることを通じて孤立・孤独を予防することを本プロジェクトは目指しています。
上記の社会像を実現するための最大の課題(ボトルネック)は何ですか?
私たちが目指す社会像を実現するためには、孤立・孤独状態に陥りそうな方たちが自らSNS相談に連絡をしてくださることが必要ですが、それほど簡単なことではありません。私たちは、どのような働きかけをしたら皆さんが相談をしてみようと思ってくださるかについても研究をしていますが、解明には時間がかかります。一方で、相談を希望する方が多い時間帯には長時間お待たせしてしまうことや、対応ができないこともあります。できるだけ多くの相談者に対応ができるよう技術的な解決策を探りつつ、併せて相談員数の拡充も必要になってくるかと思います。
写真
「孤独死対策サミット2022」(2022年2月4日)における研究成果発表
図
孤独感と社会的孤立及びメンタルヘルスとの関連

参画・協力機関

  • 理化学研究所、一橋大学、和光大学、Nottingham大学 など

プレスリリース

実施報告書

関連リンク