社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワークの構築|RISTEX

RISTEX社会技術研究開発センター

プロジェクト
2021年度採択

新生活に伴う孤独リスクの可視化と一次予防

写真:柳澤 邦昭

研究代表者:柳澤 邦昭

神戸大学 大学院人文学研究科 准教授

新社会人・大学新入生、孤独リスクの可視化、個人レベルのリスク、集団レベルのリスク、一次予防

研究開発期間:2021年11月~2026年3月

researchmap

プロジェクト概要

見えにくい孤独

社会的孤立・孤独は心身の健康に悪影響を及ぼすことから、孤独感や孤独リスクの対策は喫緊の課題です。しかし、孤独であるということに当事者は恥じらいを感じ、表出しにくい側面もあります。そのため、社会、集団において孤独に陥っている人、孤独に陥りやすい人を把握するのは極めて困難です。新型コロナウイルス感染症に伴う生活スタイルの変化は、この孤立・孤独の問題をより深刻にしています。他者との接触機会の著しい減少は、孤立・孤独が生じやすい状況を作り出しているだけでなく、その不可視性に拍車をかけています。

個人レベルと組織・地域レベルでの孤独リスクの可視化と一次予防対策の構築

孤立・孤独のリスクが高まるタイミングの一つとして、新生活のスタート時期が挙げられます。本プロジェクトでは、大学新入生や新社会人を対象にWeb調査・実験、fMRI実験、SNS、ウェアラブル端末によりデータを取得します。このデータに、所属する集団の情報や地理情報などを加えて統合的に分析することで、新生活における孤立・孤独のメカニズムを理解し、孤独に陥りやすい人や環境の特徴を把握します。そして、取得したデータを応用して特定の個人がどの程度孤独を抱えているのかを数値化し、同時に将来の孤独リスクの予測を行います。また、組織や地域についても同様に孤独リスクを数値化します。これらの数値に基づき、各大学の授業形態等の改善へ向けた取り組み、各地域の保健・医療機関と連携した社会人の孤立・孤独の予防、介入を試みます。将来的に、介入内容を評価・検証することで真に有効な施策を明らかとし、ベストプラクティス集としてとりまとめ社会全体と共有し、孤立・孤独を生まない社会を創出することを目指します。

柳澤プロジェクト概要図

Q&A

社会的孤立・孤独の一次予防のために、本プロジェクトが目指す社会像についてもう少し教えてください。
本プロジェクトで目指す社会像は、社会的孤立・孤独に対し、個人レベルだけでなく、組織レベルで対処できる、孤立・孤独が生じにくい健全な社会です。そのような社会を実現させるためには、孤独を予防する社会構築が必須であると考えます。本プロジェクトを通じて、孤独リスクの高い集団や孤立・孤独予防の有効な施策を特定し、リスクの高い集団に対し、先回りして孤独を予防する効果的な施策の展開、システム構築を目指します。
上記の社会像を実現するための最大の課題(ボトルネック)は何ですか?
上記の社会像を実現するには、本プロジェクトで特定する有効な施策の社会全体での共有が欠かせません。それゆえ、孤立・孤独の問題意識および有効な施策の組織への普及が最大の課題と言えます。研究成果を積極的に情報発信することで、孤立・孤独予防に対する危機意識を社会で共有するとともに、対策の必要な組織が導入しやすいようにプロジェクトメンバーが助言や支援を行う体制を構築することで、実行の促進を図りたいと考えます。
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プログラム総括、アドバイザーと意見交換している様子
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本プロジェクトで使用するMRI装置のデモンストレーション

参画・協力機関

  • 神戸大学、京都大学、広島大学、中部大学、近畿大学、追手門学院大学、大阪総合保育大学、金沢工業大学、西九州大学、広島文教大学、富山大学、大阪大学、岡山大学、La Trobe University、京都芸術大学 など

実施報告書