プロジェクト
社会的孤立の生成プロセス解明と介入法開発:健康な「個立」を目指して
プロジェクト概要
社会的孤立・孤独の定義と健康危機に至る心理プロセスは不明確
社会的孤立・孤独は、青年期以降の不登校・社会的ひきこもり、中年期の80-50問題、孤独死など全世代を通してネガティブな社会問題として語られることが多いですが、その定義はあいまいです。また、社会的孤立そのものは、テクノロジーの発展や家族システム、さらには社会構造の変化に伴い必然的に生じる現象ですが、それが孤独や健康危機に至る心理プロセスも不明確です。そして、社会的に孤立した状況であるのにも関わらず、健康危機に至らず健康的な生活を送っている人々の特徴も明らかにされていません。
個人が創造的な生活を送ることができる健康的な「個立」社会を創生する
社会的孤立・孤独メカニズムの理解のために、社会的孤立者の心理的特徴や、一般人や支援者が持つ社会的孤立者のイメージについて大規模な調査を実施します。また、居場所を失うという喪失体験への着目や、社会的孤立者を対象としたインタビューを行い、社会的孤立の生成プロセスや深刻化プロセスの把握を試みます。これらの知見をもとに心理実験を行い、孤立・孤独の悪化リスクを測定し、早期発見につなげるアプリを開発します。本プロジェクトの主要メンバーは平時より社会的孤立・孤独に関連する予防事業や支援事業を実施しており、地方自治体の協力を得ながらプロジェクトを運営し、予防プログラムを開発・検証するための体制の構築も進めます。本プロジェクトを通して、研究者-支援者間のネットワークを広げ、磨き上げた社会的孤立の一次予防プログラムを地域住民に実施することで、個人が健康で創造的な生活を送ることができる、「個立」社会の創生を目指します。
Q&A
- 社会的孤立・孤独の一次予防のために、本プロジェクトが目指す社会像についてもう少し教えてください。
- 現代は核家族世帯が減少している一方で単身世帯が増加しており、誰もが社会的孤立や孤独を経験する状況になっています。本プロジェクトでは、すべての社会的孤立や孤独が社会生活の危機や健康問題に至るものではないと考えます。そのため、不適応になるような社会的孤立・孤独につながらない方法を学び、個人が互いに孤立していても、充実した生活を送ることができ、必要に応じて援助を求めることができるスキルを習得するような「個立」社会を目指しています。
- 上記の社会像を実現するための最大の課題(ボトルネック)は何ですか?
- 社会的孤立の一次予防プログラムとして実施する予定の予防教育プログラムをどのように展開するか、また、中学校などの教育課程の中で実施可能であるかが最大の課題であると考えています。加えて、本プロジェクトで想定している予防教育プログラムの対象者が幅広いため、プログラムを実施した際の効果の測定の指標として、何を目安にするかについても検討すべき課題です。
参画・協力機関
- 筑波大学、東洋学園大学、東北大学、弘前大学、東京家政大学、茨城県笠間市、茨城県立こころの医療センター、Humber College, Ben - Gurion University of the Negev, Karolinska Institutet など
プレスリリース
- コロナ禍では、孤独感が日本人の自殺念慮に強い影響を与えた
- Loneliness has a strong impact on suicidal ideation among Japanese during the COVID-19 pandemic
- 社会的孤立を自覚し孤独を感じることが抑うつ症状を高める