社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワークの構築|RISTEX

RISTEX社会技術研究開発センター

プロジェクト
2021年度採択

職場における孤独・孤立化過程の分析―総合的予防プログラムの開発に向けて―

研究代表者:松井 豊

筑波大学 働く人への心理支援開発研究センター 研究員

職場、孤独・孤立、非意識的指標、孤独・孤立化過程、企業

研究開発期間:2021年11月~2026年3月

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プロジェクト概要

職場内の孤独・孤立化を防げば、中高年の引きこもりなどが予防できる

中高年の引きこもり研究では、引きこもりの主原因は、就職前の人生上のつまずき(不登校など)ではなく、職場内の不適応であることが明らかにされています。従来の社会的孤立研究では、高齢者の孤立状態が主要な研究テーマとなっていました。しかし、高齢者の社会的孤立や中高年の引きこもりといった、社会から完全に孤立化する状況に陥る前に、職場内で孤独の深まりや孤立化の兆候を捉え、適切なケアや対策を行えば、中途退職や高齢時の社会的孤立を予防することが可能になると期待されます。

企業従業員の孤独・孤立化を測定するアプリを開発し試験運用

本プロジェクトでは、企業従業員が職場内で孤独感を深める過程や孤立化について検討を行い、その予防のための測定ツール(スマートホンのアプリ)を開発し、企業内で試験運用を行い、社会実装に結びつけることを目的とします。測定ツールとしては、孤独・孤立の状態を質問項目で経時的に測定する「主観的指標」、回答者自身の孤独・孤立過程を振り返る「予防チャート」、質問項目を用いて孤独に関する潜在的態度を測定する「q-IAT」、孤独に関するストループ効果を測定する「孤独ストループ」の4種類で、数十社の企業の協力を得ながら開発します。このように本プロジェクトでは、職場内の孤独・孤立化を予防することにより、社会的孤立・孤独を生まない社会作りに貢献し、主観的指標と非意識的指標による新たなツールを開発して意識レベルだけでなく非意識レベルの孤独・孤立を測定し、企業内での試行により社会的仕組みの創設を目指しています。

Q&A

社会的孤立・孤独の一次予防のために、本プロジェクトが目指す社会像についてもう少し教えてください。
職場の中で生き生きと働ける環境を作り、企業の従業員が、本プロジェクトで開発されたツールを使いながら、職場の中で、誰もが自分の望むレベルの対人関係を営み、職場において「自分は役立っている」、「自分の居場所がある」と実感できる職場を育てることが、本プロジェクトの直接的な目標です。さらに、こうした職場環境が整えば、職場からの不本意な離脱を防ぎ、職場以外の対人関係も、積極的に営めるようになるでしょう。こうした変化が、中高年の引きこもりを予防できる社会作りに間接的に貢献できると、期待しています。
上記の社会像を実現するための最大の課題(ボトルネック)は何ですか?
第1に本プロジェクトのツールを使い、様々な実験に協力してくださる企業の確保です。いくつかの企業のご協力は頂ける見通しがあるのですが、まだまだ開拓が必要です。
第2に、どのようなシステムを構築すれば、実際に企業や一般の方が、利用してくださるか、その方向付けが明確ではありません。ツールを使った方が、次にどのようなアクションを起こせばよいのか、採用する前に中間管理職の方に事前研修が必要かなどの解明すべき課題が残っています。

参画・協力機関

  • 筑波大学、明星大学、東京成徳大学、埼玉学園大学、東京都立産業技術大学院大学、ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会、三菱ケミカル株式会社総務人事本部キャリアサポート部、j.union 株式会社 など

実施報告書