社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワークの構築|RISTEX

RISTEX社会技術研究開発センター

プロジェクト
2021年度採択

演劇的手法を用いた共感性あるコミュニティの醸成による孤立・孤独防止事業

写真:虫明 元

研究代表者:虫明 元

東北大学 大学院医学系研究科 学術研究員

演劇的手法、教育、コミュニケーション、社会情動スキル、コミュニティ

研究開発期間:2021年11月~2026年3月

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プロジェクト概要

青年期において豊かな対人関係を構築するコミュニケーションの場の欠如とそれに伴う孤立・孤独化リスク

日本は以前から国際比較などで孤立の傾向が高いことが知られています。さらに、コロナ禍においてコミュニティ内での絆が弱まり、孤立するリスクのある人々への共感性が失われ、人々の孤独感・社会的孤立が深刻化することが懸念されています。特に大学生においては、コロナ禍で遠隔教育が積極的に導入され、人と人とが対面でコミュニケーションしたり共感したりする場が減っています。青年期は、脳科学的に社会情動スキルなどが一段と発達する時期であるにも関わらず、個人としてもコミュニティとしても、このようなスキルを醸成する安全安心の場が不足していることが問題となっています。

演劇的手法を用いた教育により共感性あるコミュニティの醸成による孤立・孤独の防止

本プロジェクトでは、応用演劇のさまざまな手法を用いて、共感性あるコミュニティの醸成・回復を目指します。演劇的な手法にはさまざまなコミュニケーションの場が設定され、非日常性という演劇特有の正解のない世界で、多様な参加者が共創的に物語を創作したり、役を演じたり、互いに演技を観たりします。そのために参加者が互いに語り、傾聴し、演じるための安全基地となるような豊かなコミュニティが、教育の場を通じて醸成されることが期待できます。まずは研究代表者らの所属する大学において、次の3つの着眼点でプロジェクトを実施します。
①社会は多様性ある人々に支えられていますが、社会的孤立・孤独のリスクは、それぞれの個人の特性にも依存します。個々人が持つ特性の多様さをそれぞれが理解し、多様性を包摂する社会を構築するために、演劇的手法を青年期の教育に導入し、豊かな人間関係を醸成できるコミュニティの形成を目指します。
②人や集団が社会的孤立・孤独に陥るリスクの可視化と評価指標に関しては、さまざまな性格特性、孤立・孤独の指標、社会関係資本、特にリアルとネットでの関係を分けて可視化すると同時に演劇的手法の効果の評価も行います。
③社会的孤立・孤独を予防する社会的仕組みとしては、演劇家の協力を得てリアルとネットを介しての双方の演劇的手法による教育技法を開発し、実施します。また共感的コミュニケーションの場としてのリスニングアワー(LH)の導入を行います。このLHは、遠隔での実施が可能で、互いに自分の経験を語り、それを聞きあう場ですが、傾聴を基本としてガイド役が話を振り返ることで互いのつながりが実感でき、孤立・孤独防止に役立つことが期待されます。これらの効果を様々な評価方法と組み合わせることによって、実際に孤立・孤独への影響を評価します。さらに活動を近隣の大学、高校に広げ、教育技法としての確立を目指しつつ、広く教育現場への普及に務めます。

図:虫明プロジェクトの概要

Q&A

社会的孤立・孤独の一次予防のために、本プロジェクトが目指す社会像についてもう少し教えてください。
社会には様々なコミュニティがあります。それぞれのコミュニティが共感性を持つということは、そのコミュニティに属している人々に心理的安心が感じられること、孤立・孤独のリスクのある人を含む多様な人々が受け入れられること、豊かなコミュニケーションが生まれることを示しています。演劇を用いたワークショップ型の教育により、共感性あるコミュニティの担い手として、人々の繋がりを広げられる人材が豊富にいる社会を目指します。
上記の社会像を実現するための最大の課題(ボトルネック)は何ですか?
日本では、演劇というと、役者が舞台の上で演じる作品を観客として鑑賞するものだという先入観があるようです。実際は演劇には自由な形がありますから、このような見方を超えて、あらゆる年齢層の学びの中に演劇的手法を取り入れることができるようにすることが最大の課題です。この手法は、安心の場つくり、コミュニティで人と人を結びつけるコミュニケーションのスキルや、一緒に何かを創作する楽しさを学ぶ格好の手法で、誰にでも開かれています。
宮城教育大学でのワークショップ
東北大学川内萩ホールでのワークショップ

参画・協力機関

  • 東北大学、宮城教育大学、宮城学院女子大学、東北福祉大学、宮城大学、宮城県仙台向山高等学校、宮城県仙台第一高等学校、宮城県東松島高等学校、仙台育英学園高等学校、PLAY ART!せんだい、演劇企画集団LondonPanda、劇団プレイバッカーズ、スクール・オブ・プレイバックシアター日本校、office風の器、荒井真澄ボイストレーニング、アスカカンパニー株式会社 など

実施報告書

プレスリリース

関連リンク