[加齢変容] 加齢による生体変容の基盤的な理解

戦略目標

老化に伴う生体ロバストネスの変容と加齢性疾患の制御に係る機序等の解明

研究領域統括

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望月直樹(国立循環器病研究センター 理事・研究所長)

研究総括

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三浦 正幸(東京大学 大学院薬学系研究科 教授)

概要

 本研究領域は、老化に伴う生体ロバストネスの変容と加齢性疾患の制御に係る機序等の解明を目標とします。これを達成するために、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)と国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が3プログラム(さきがけ、AMED-CREST、PRIME)を同時に立ち上げ、互いに連携しながら研究を進めます。そのため、本研究領域では研究総括(Program Officer: PO)に加え、3プログラムの連携を統括する研究領域統括(Program Supervisor: PS)を配置しています。

研究領域統括方針


 老化は寿命とは切り離せず、寿命を全うし長期生存するために、生体には生理的なロバストネスと環境や外部刺激に適応し障害から回復させる能力であるレジリエンス機構が備わっていると考えます。したがって老化では生体のロバストネスとレジリエンスの変容が生じている可能性が考えられます。これらの変容のメカニズムを新たな技術や解析手法を用いて調べることで老化メカニズムを解明し、寿命延伸に伴う加齢性疾患を如何に制御するかを目指した研究を推進することが重要です。
 生体を構成する分子・細胞・組織・臓器・個体の生命現象の根幹となる構成要素に関する計測・解析技術の進展は近年著しく、これらの研究手法は老化現象のメカニズムの解明を飛躍的に進展させる可能性があります。今後は、これらの最先端技術を活用して老化の根本的な原理を探求し、その原理を踏まえた加齢性疾患の予防・治療のための機序を解明するために、基礎研究と予防や治療への応用展開を目指した研究の一体的な研究体制を構築し、包括的に研究を推進していくことが期待されます。
 モデル生物・特徴的な老化現象を示す生物・ヒトを対象として、先端的解析技術を駆使した老化の根本的理解を進める研究を目指します。このためには、老化研究者間の連携や技術の共有が必須となり、研究者間の活発な共同研究や試料の交換を促進し、生物間での普遍性原理の解明を果たせる領域になることを目指します。
 また、JSTとAMEDは本研究領域の目標の実現に向けて、一体的な事業運営を行い、それぞれが推進する研究の間で、異分野の多角的知見や技術を融合、連携することにより、老化研究の統合的理解を深め、世界に先駆けて独創的な研究開発に取り組みます。さらに、ムーンショット型研究開発制度(2020年度~2029年度)目標7「2040年までに、主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現」との連携も視野に入れて活動していきます。

研究総括方針


 世界的に高齢化が社会問題として取り上げられる中で、近年老化が創薬対象として捉えられ、抗老化薬の探索など、その応用面に注目が集中しています。しかし、その研究の歴史は未だ浅く、老化という生命現象の基礎的な知見が十分に蓄積されているとはいえません。そこで老化を、「加齢によって生体がロバストネスとレジリエンスの変容をきたす現象」として捉え、本研究領域では広範な生命科学的アプローチによって加齢におけるロバストネスとレジリエンスの変容に関する基盤的な理解を目標とします。
 生物が発生、成長、老化そして死に至るまで、生体内ではロバストネスとレジリエンスが刻々と変容していきます。ここで述べる生体変容は生活史に伴って起こる持続した生体の変化を指し、分子レベルではエピジェネティックな遺伝子発現制御、代謝、レドックス、細胞内シグナル伝達等があり、細胞レベルでは増殖や分化、幹細胞性の維持・休眠、細胞老化や変性・細胞死を対象に含みます。組織レベルでは免疫や神経、内分泌システム、組織障害、修復、がん化等、生体内における様々な組織の時間的変容を内包しています。さらには生物が進化において獲得してきた加齢における生体のロバストネスやレジリエンス変容の在り方を知ることも重要だと考えられます。
 これらの加齢による生体変容を理解するためには、これまで生命・医科学研究で培われてきた計測・解析技術、例えば各種オミクス技術やイメージング技術、データ解析やシミュレーション、ゲノム編集技術等を総動員し、さらに他分野の科学技術をも積極的に取り入れて挑む必要があります。また、今まで使われてきたモデル生物(マウス、小型魚類、ショウジョウバエ、線虫、酵母等)に加えて、短命種や長命種の新規モデル生物、本領域の研究に資するオルガノイド開発までも対象とします。
 以上を踏まえ、本研究領域では、今まであらゆる研究分野で培われてきた科学技術を総動員し、更なる技術開発を推進し、加齢に伴う生体変容の基盤的理解を目指します。

 本研究領域は、文部科学省の選定した戦略目標「老化に伴う生体ロバストネスの変容と加齢性疾患の制御に係る機序等の解明」のもとに、2022年度に発足しました。

領域アドバイザー

有田 誠 慶應義塾大学 薬学部 教授
木村 宏 東京工業大学 科学技術創成研究院 教授
清中 茂樹 名古屋大学 大学院工学研究科 教授
小林 武彦 東京大学 定量生命科学研究所 教授
髙倉 伸幸 大阪大学 微生物病研究所 教授
寺尾 知可史 理化学研究所 生命医科学研究センター チームリーダー
豊島 文子 京都大学医生物学研究所 教授/東京医科歯科大学難治疾患研究所 教授
中島 裕史 千葉大学 大学院医学研究院 教授
原 英二 大阪大学 微生物病研究所 教授
松本 邦弘 名古屋大学 大学院理学研究科 名誉教授

採択課題一覧

  1. 2022年度採択課題
  2. 2023年度採択課題

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