研究開発代表者
技術領域
未来本格型
グリーンプロセスが拓くマテリアル循環未来社会:植物バイオマス全成分の高度利用と新産業創出

- 研究開発期間
- 2026年4月~
- グランド番号
- JPMJAN26G2
研究概要
急激な環境変動を緩和し、持続可能な未来を築くためには、カーボンニュートラル資源の循環利用が不可欠です。現在、プラスチックをはじめとする多くの化成品は石油を原料としており、その製造や廃棄の過程でCO₂排出の増大や大気汚染、生態系への悪影響を引き起こしています。こうした構造を根本から転換しなければ、真に持続可能な社会は実現できません。
本研究では、実効性を備えた環境調和型プロセスによって、植物バイオマスから「リグノセルロース高分子」を高品質な素材原料として供給し、石油資源に依存しない社会の実現を目指します。原料段階からの抜本的なグリーン・トランスフォーメーション(GX)を通じて、次世代の素材循環モデルを構築します。
植物の約3割を占めるリグニンは、地球上に豊富に存在する一方で、その活用は長年大きな課題でした。強固な架橋構造をもつ高分子であるため、高温・高圧といった過酷な条件でなければ分解が進まず、その過程で本来の構造が損なわれてしまいます。既存の分離技術は「分解・除去」を前提としてきたため、環境負荷やエネルギー消費が大きいだけでなく、得られるリグニンは変質・縮合し、燃料用途などの低付加価値利用にとどまってきました。
私たちは、植物科学の基礎知見に立ち返り、木質形成のプロセスに着想を得て、「分解」ではなく「温和に分離する」という発想へと転換しました。探索研究を通じて、独自の環境調和型プロセスにより、リグニンおよび多糖の複合体を高分子のまま段階的に分離し、セルロースと同時に一貫生産する技術を確立しました。本技術は、低環境負荷、低コスト、低エネルギー、高収率を同時に実現する新しいプロセスです。従来の高温・分解型バイオリファイナリーとは異なり、分子構造を保持したまま高分子素材として活用できる点に本質的な優位性があります。ここで得られる次世代型リグニンは従来にない特性を示し、新素材原料としての本格的な展開が視野に入っています。
今後は、原料(川上)からの高品質・高機能素材創製、用途開発(川下)までをつなぐ一気通貫プロセスの社会実装を進めます。探索研究で確立した要素技術を基盤に、農業アグリ分野、電子材料分野、モビリティ分野など、我が国の基幹産業に直結する領域で多角的な用途開発を進めます。同時に、LCA(ライフサイクル評価)により環境合理性を定量的に示し、技術の優位性を客観的に明らかにします。単なる要素技術の高度化にとどまらず、マテリアル循環産業モデルそのものを提示することが本研究の狙いです。
森林資源を育て、使い、再び循環させる。この「全価値化」を通じて、カーボンニュートラルの実現とマテリアル循環産業の創出、そして豊かな自然環境との両立を図ります。これは、資源安全保障と産業競争力の強化にも直結します。植物バイオマス分子が本来もつ潜在力を最大限に引き出し、自然と調和した持続可能な素材産業への構造転換を進めることで、化石資源を大量消費する時代から、植物資源を循環させる時代への着実な移行を目指します。
図1 グリーンプロセスによるリグノセルロース高分子の分離と新素材創製
環境調和型グリーンプロセスにより、植物細胞壁を構成するリグニンおよびセルロースを、分子構造を損なうことなく分離します。これにより、高純度・高機能な次世代型リグニンからセルロースファイバーまで、多様な新素材の創製につながります。
図2 植物バイオマス全価値化によるマテリアル循環社会
森林資源を起点に、植物バイオマスの全成分を高機能素材へと転換し、原料から製品、再循環までを一体で設計する循環型素材モデルを示しています。環境負荷の低減と産業競争力の両立を目指し、農業、電子材料、モビリティ分野などへの用途開発へ展開します。
研究開発実施体制
代表者グループ
京都大学 生存圏研究所
共同研究グループ
九州大学、京都工芸繊維大学、東京大学
トピックス
準備中
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