技術領域

未来本格型

革新的有機半導体の開発と有機太陽電池効率20%への挑戦

尾坂 格

研究開発代表者

尾坂 格

研究開発期間
2025年4月~
グランド番号
JPMJAN25G1

研究概要

 有機半導体を発電層に用いた有機薄膜太陽電池(OPV)は、塗布プロセスにより作製できるフィルム状の次世代型太陽電池です。薄い、軽い、柔らかいといったシリコン型太陽電池にはない特長を持つことから、壁(垂直面)や曲面、耐荷重の低い建物の屋根など従来は太陽電池を設置できなかった場所にも取り付けることが可能です。さらに、同様の特長を持つペロブスカイト型太陽電池とは異なり、OPVは光透過性(透明性)があり色を容易に変えられるため、窓に使用したり、デザイン性を高めたりすることができます。また、有機半導体は鉛などの有害な重金属を含まないため、環境に優しく、農業用途への展開も期待されます。
 OPVの社会実装に向けたボトルネックの一つは発電効率が低いことであり、これは電流と電圧のトレードオフが大きいことに起因します。OPVは、二つの異なる有機半導体間での電荷分離により発電します。このとき、分子軌道準位のエネルギー差が電荷分離、すなわち電流を得るための駆動力となります。しかし、このエネルギー差が電圧損失となってしまい、これが電流-電圧トレードオフにつながります。
 研究開発代表者らは、探索研究において、広いπ共役系構造を持つ新しいp型高分子系有機半導体を開発しました。この材料の中では、電荷が良く非局在化し、小さなエネルギー差でも極めて効率的に電荷分離することを見いだしました。その結果、従来の電流-電圧トレードオフの限界を突破し、世界水準となる約19%の発電効率を得ることに成功しました。
 本課題では、この探索研究の成果を基に、革新的材料開発技術や発電および損失メカニズムの解明による高効率化・高耐久化技術、およびモジュール化技術などOPVの社会実装につながる基盤技術の確立を目指します。具体的には、p型のみならずn型有機半導体を開発して電流-電圧トレードオフの解消を推し進め、安定して20%以上の発電効率を得ることを目標とします。さらに、開発した材料を用いたフレキシブルなOPVミニモジュールを作製し、世界最高の発電効率である15%の達成に挑みます。
 将来的には、本研究の成果を基に企業と連携し、社会実装を進めていきます。OPVの特長を活かし、これまで太陽電池の設置が難しかった場所でも利用できるようにすることで、太陽光発電の導入拡大とカーボンニュートラル社会の実現に貢献します。

有機半導体を用いたフレキシブルOPVモジュール

研究開発実施体制

代表者グループ

 広島大学 大学院先進理工系科学研究科

共同研究グループ

 大阪大学、理化学研究所、京都大学、千葉大学

トピックス

準備中

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