技術領域

未来本格型

低交流損失と高ロバスト性を両立させる高温超伝導技術

雨宮 尚之

研究開発代表者

雨宮 尚之

研究開発期間
2024年4月~
グランド番号
JPMJAN24G1
研究概要
研究概要(PDF:550KB)

研究概要

 高温超伝導線は、電気抵抗がゼロで非常に高い電流密度の電流を流せるため、モーター など電気機器の省エネ・小型軽量化に役立ちます。しかし、交流で使ったときに発生する 交流損失が、高温超伝導線を電気機器に応用する上で障害となっていました。加えて、実 用で必要なキロアンペア級の電流を流せないこと、テープ形状をしているためテープの面 の長手方向には曲げやすいものの幅の方向には曲げにくく多様な形のコイルに巻けないこ とも応用する上での障害でした。
 薄膜高温超伝導線内部の超伝導薄膜を細く分割したマルチフィラメント薄膜高温超伝導 線は、原理的には交流損失を小さくできることが知られていました。しかし、あるフィラ メントに超伝導ではない部分(不良部)があると、そのフィラメントは全く電流を流すこ とができなくなってしまいます。そこで、超伝導薄膜をフィラメントに分割した上で、超 伝導薄膜全体の上を銅でめっきして、フィラメント同士を電気的に接続して、電流が不良 部を迂回する対策によって高ロバスト性を実現しました(銅めっきマルチフィラメント薄 膜高温超伝導線)。一方で、変動磁界によって銅メッキに結合電流という一種の渦電流が 流れ、マルチフィラメントによる交流損失低減効果が損なわれてしまいます。
 そこで、フィラメント同士を銅めっきで電気的に接続して超伝導ではない部分があって も電流の迂回を可能にするとともに、銅めっきマルチフィラメント薄膜高温超伝導線を丸 いコア(芯材)のまわりにらせん状に巻き付けることで交流損失低減効果も維持できるの ではないかと考え、原理検証の研究を進めて SCSC ケーブル(Spiral Copper-plated Striated Coated-conductor cable)を開発しました。
 探索研究では、SCSC ケーブル作製機を作り 5m の SCSC ケーブルを作製しました。この ような SCSC ケーブルを使って、コイル形状ではなくケーブル形状で、交流損失を 10 分の 1 に低減し、1kA の交流通電に成功しました。
 本格研究では、SCSC ケーブルを用いてコイルを実際に作製して、従来比 10 分の 1 の交 流損失、200Hz 駆動コイルでの損失低減対策、2kA の大電流容量、曲げ半径 50mm 立体形状 への巻線の開発(劣化無くコイルに巻くためのケーブル機械特性の解明)を目指します。
 将来的には、SCSC ケーブルによるコイルを組み込んだ超伝導磁気エネルギー貯蔵装 置、超伝導モーター、超伝導発電機などの開発が可能になります。超伝導磁気エネルギー 貯蔵装置は太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの大量導入を助け、小型軽 量な超伝導モーターで航空機のジェットエンジンを置き換えることで航空輸送における二 酸化炭素排出量の削減が可能となります。発電機などのそのほかの電気機器の超伝導化に よる省エネも二酸化炭素排出量の削減につながります。SCSC ケーブルで、カーボンニュ ートラル社会の実現に貢献することが期待されます。

図 SCSC ケーブルと作製機

研究開発実施体制

代表者グループ

 京都大学 大学院工学研究科

共同研究グループ

 東芝エネルギーシステムズ、新潟大学、古河電気工業、SuperPower、Victoria University of Wellington

トピックス

準備中

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