研究代表者・研究課題

HOME 研究代表者・研究課題 平成25年度採択 今野巧

錯体分子技術でイオン性固体の常識を打ち破る | 今野 巧 | 大阪大学 大学院 理学研究科 教授 | 専門:錯体化学

課題名|Research Theme

新物質観をもつイオン性固体の創製と
新機能創出を導く錯体分子技術の開拓

概要|Outline

錯体分子技術の概念図

本研究では、イオン性固体物質の常識を覆すような新物質観をもつイオン性固体の創製を目的として、金属錯体を基盤とする分子技術、つまり「錯体分子技術」を新たに開拓します。具体的には、イオン性金属錯体のナノサイズ化と表面機能化を推進し、非クーロン相互作用が空間配列を支配する、新しいタイプのイオン性固体群を創製します。これにより、既存のイオン性固体では見られない未知の現象を発見し、技術革新をもたらす新機能創出につなげます。

特色|Feature

  • 既存の概念を打ち破るような新物質観をもつイオン性固体「NCIS」を、世界に先駆けて創製しようとする独創的な研究である。
  • NCIS創製のために、「ナノサイズ化と表面機能化を施したイオン性金属化合物」の自在構築と集積化を可能とする「錯体分子技術」を開発する。
  • 特殊環境に置かれたカチオン種/アニオン種には、通常の化合物では予測できないような異常物性が潜んでいる可能性が高く、「イオン性固体物質における新現象の発見」が期待できる。

研究代表者

今野 巧
大阪大学
大学院理学研究科
教授 研究室HP

主たる共同研究者

奥村 光隆
大阪大学
大学院理学研究科
教授
中澤 康浩
大阪大学
大学院理学研究科
教授
 
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5年度の成果|Results Y2017

図1:電荷分離型NCISが示す負の電歪挙動

図2:コバルト-銅系低充填型NCIS

図3:イオン流動型NCISの単結晶イオン交換挙動

これまでの研究成果(インパクト)

  • 電荷分離型NCISにおける特異な誘電/電歪挙動
    電荷分離型NCISの単結晶に電圧を印加すると、温度上昇に伴って室温付近から誘電率が急激に上昇するという特異な「誘電ジャンプ現象」を見出した。また、電場印加により結晶が全方位に収縮するという既存の電歪とは全く異なる「負の電歪現象」を見出した(図1)。
  • 新たな低充填型NCISの合成と評価
    含硫アミノ酸を用いてアニオン性のCoIII2CuI3硫黄架橋五核錯体([1]3-)を新たに合成した。この化合物は、酸化されやすい直線型銅(I)イオンを含んでいるにもかかわらず、好気条件下でも安定であり、Cr3+との複合化により第一遷移金属のみからなる低充填型NCISの構築に成功した(図2) 。また、この低充填型NCISの分子吸着特性を評価した。
  • イオン流動型NCISのイオン交換特性
    カリウムイオンをカチオン種として含むイオン流動型NCISの単結晶をコバルト二価イオンを含む溶液に浸漬すると、結晶の色が黄色から橙色に変化することを見出した。各種分析の結果、結晶中の全てのカリウムイオンがコバルトイオンに置換されていることが分かった。これは、イオン流動型NCISにおけるカチオン種の高い流動性を裏付けるものであり、イオン流動型NCIS特有の優れたイオン交換能が示された(図3)。

今後の進め方

  • 3種のカテゴリーに属さない新種のNCISの探索と開発を行う。
  • 電荷分離型および低充填型NCISの類似体の開発を進めるとともに、新たな物性・反応性の開拓を進める。
  • イオン流動型NCISのイオン流動特性の向上、および新たな物性・機能性の開拓を進める。
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4年度の成果|Results Y2016

図1:電荷分離型NCISのH2O2分解能

図2:Zn2+イオンを含む低充填型NCIS

図3:RhIII4AgI4八核錯体の分子構造

これまでの研究成果(インパクト)

  • 電荷分離型NCISの過酸化水素分解特性の解明
    電荷分離型NCISの結晶においては、本来活性の低いコバルト三価種が結晶界面で二価状態となり、H2O2分解の不均一触媒活性を示すことを見出した。また、対アニオンの種類を変えると、結晶成長面と外形が変化し、それに伴い、異なる触媒活性を示すこともわかった(図1)。
  • 低充填型NCISの類似体合成
    d-ペニシラミンをもつアニオン性のCoIII2AuI3五核錯体と亜鉛(II)イオンを複合化させると、pHの僅かな変化に応じて、多孔性イオン性固体と無孔性配位高分子の作り分けができることを見出した(図2)。この多孔性イオン性固体は、構造安定性と水分子の吸着能の面において、低充填型NCISのプロトタイプを凌駕する性能をもつことがわかった。
  • イオン流動型NCISの類似体合成
    L-システインをもつマイナス3価のRhIII2AgI3五核錯体にRhIII単核錯体を反応させると、マイナス8価の電荷をもつRhIII4AgI4八核錯体へと変換されることを見出した(図3)。この八核錯体とカリウムイオンからなるイオン性固体は、イオン流動型NCISのプロトタイプを上回る交流伝導率を示すとともに、素早いカチオン交換能を有していることがわかった。

今後の進め方

  • 3種類のNCISについて、類似体の開発と構造特性に基づく特異な反応性、物性、および機能性の探索を継続する。
  • 電荷分離型NCISに見出された特異な反応性や物性発現の機構について、実験と理論の両面から解明を進める。
  • 低充填型NCISの分子包接能およびイオン流動型NCISのイオン伝導能について、新たな分子設計による機能向上を目指す。
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3年度の成果|Results Y2015

図1:電荷分離型NCIS中の塩化物イオン10量体の脱水前後の構造

図2:低充填型NCISのプロトタイプ

図3:イオン流動型NCISのプロトタイプ

これまでの研究成果(インパクト)

  • 放射光を用いた単結晶X線解析により、電荷分離型NCIS(非クーロン力支配型イオン性固体)の加熱脱水前後の結晶構造を精密に決定した(図1)。
  • 80%という極めて大きな間隙率をもつイオン性固体(低充填型NCIS)の合成に成功した(図2)。
  • カチオン種の流動に基づく高い交流伝導率を示すイオン性固体(イオン流動型NCIS)の合成に成功した(図3)。

今後の進め方

  • 3種類のプロトタイプNCISについて、それらの類似体および新しいタイプのNCISの合成を進める。
  • 3種類のプロトタイプNCISについて、構造特性に基づく特異な反応性、物性、機能性の探索を進める。
  • 電荷分離型NCISに見出された特異な反応性や物性の発現機構について、実験と理論の両面からの解明を進める。
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2年度の成果|Results Y2014

図1:電荷分離型のNCISの結晶構造

図2:粉末X線回折の変化

これまでの研究成果(インパクト)

  • 放射光を用いたX線解析により、電荷分離型NCIS(非クーロン力支配型イオン性固体)の結晶構造を精密に決定した(図1)。
  • また、この結晶の熱的安定性についても調査し、結晶構造を保ったまま可逆的に水分子の脱着が起こることを明らかにした(図2)。
  • 同時に、微小な単結晶にも適応可能な測定手法を開発し、NCISに特有の誘電現象を見出した。

今後の進め方

  • プロトタイプ電荷分離型NCISの類似体の合成および新しいタイプの電荷分離型NCISの探索を進める
  • 電荷分離型NCISの水和状態変化に伴う構造と機能の変化を理論と実験の両面から調査する
  • 低充填型NCISとイオン流動型NCISのプロトタイプ探索を進める
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初年度の成果|Results Y2013

図1:電荷分離型のNCISのプロトタイプ

図2:無機アニオンの集積化挙動

これまでの研究成果(インパクト)

  • 電荷分離型NCISのプロトタイプの構築
    含硫アミノ酸とジホスフィンが金(I)イオンで連結された金(I)二核錯体が両親媒性の錯体配位子として機能し、八面体性の金属イオンとの反応により、六核錯体を与えることを明らかにした。特に、コバルト(III)との反応で得られる六核錯体は二価のカチオンであり、過塩素酸アニオンとの組み合わせにより、八面体型配列のカチオン6量体とアダマンタン型配列のアニオン10量体により構成される電荷分離型NCISを与えることを見出した(図1)。
  • 電荷分離型NCIS中へのアニオン種の集合化挙動の追求
    過塩素酸イオンの代わりに他の無機アニオンを対イオンとして用いることにより、上記の電荷分離型NCIS中への各種無機アニオンの集積化挙動について調査した(図2)。その結果、適切なサイズの-1価のアニオンを用いた場合にはアダマンタン型配列のアニオン10量体が形成され、一方、-2価のアニオンを用いた場合には八面体型配列のアニオン6量体が形成されことを明らかにした。さらに、2種の-1価アニオンを混合した場合においても電荷分離型NCISが形成され、この際、形成されるアダマンタン型10量体構造において、二種のアニオンに位置選択性があることを見出した。

今後の進め方

  • 電荷分離型NCIS類似体の合成および新しいタイプの電荷分離型NCISの合成を目指す
  • 電荷分離型NCISプロトタイプの格子エネルギー評価および物性と機能性の追求を行う
  • 低充填型NCISとイオン流動型NCISの合成を目指す

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