研究代表者・研究課題

HOME 研究代表者・研究課題 平成24年度採択 齋藤永宏

次世代大容量電池のリチウム空気電池を確立します | 齋藤 永宏 | 名古屋大学 グリーンモビリティ連携研究センター 教授 | 専門:プラズマ、薄膜、機能性材料

課題名|Research Theme

ソリューションプラズマ精密合成場の
深化とカーボン系触媒の進化

概要|Outline

ソリューションプラズマ

ソリューションプラズマ精密合成場を確立するために、新たな分光分析手法を構築し、反応場において生成する励起種や活性種を明かにします。この合成場を用い、窒素やボロン、リンなどのヘテロ元素を含む芳香族系化合物から新規カーボン系材料の合成を目指します。合成場を自由に操り、得られる材料の電子構造をチューニングし、酸素還元反応に対する触媒性を発現させます。2030年の実用化に向け開発が進んでいる金属空気電池の非貴金属触媒・電極材料の実現を目指します。ソリューションプラズマ精密合成場の深化によるカーボン系触媒の合成のみならず、分子技術の一つの柱となるようソリューションプラズマの学理を構築し、一学術領域へと進化させます。

特色|Feature

  • 世界で初めて開発した液中のグロー放電である分子技術ソリューションプラズマを新しい合成反応場として利用
  • 新規合成プロセスによって、新奇カーボン系触媒を開発
  • リチウム空気電池正極材料への応用
  • 合成、計測、理論、応用のチーム構成
  • 若いメンバーでソリューションプラズマの学理構築と分子技術の確立を目指す

研究代表者

齋藤 永宏
名古屋大学 グリーンモビリティ連携研究センター 教授 研究室HP

主たる共同研究者

由井 宏治
東京理科大学 理学部第一部化学科 教授
中村 淳
電気通信大学 大学院 情報理工学研究科 教授
石崎 貴裕
芝浦工業大学 工学部 准教授
 
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4年度の成果|Results Y2014

図1. NMPから合成したフタロシアニン含有ヘテロカーボンナノシート

図2. アントシアニン類化合物から合成したカーボン材料のサイクリックボルタンメトリー (0.5M H2SO4, O2飽和)

図3. アニリンから合成したヘテロカーボンのLi空気電池における充電評価

これまでの研究成果(インパクト)

  • (1)ソリューションプラズマによるヘテロナノカーボン材料の合成と触媒性の評価
    • N-メチルピロリドン(NMP)から高導電性カーボンナノシートを合成
      N-メチルピロリドンを原料としてソリューションプラズマで合成することで、平面構造が発達したシート状ヘテロカーボン材料を合成した(図1)。 高い導電性を示し、フタロシアニン骨格を埋め込むことで酸素還元反応に対する触媒性を示した。
    • アントシアニン類化合物から酸素還元反応触媒を合成
      ワインに含まれるアントシアニン類化合物から合成したカーボン系材料が、酸性条件下において、白金の酸素還元電位よりも貴な電位で還元ピークが得られることを示した(図2)。
  • (2)ヘテロ元素ドープグラフェンの特性に関する理論計算
    グラフェンのサイズ効果を明らかにするため、グラフェンナノクラスター(ナノドット)のエッジ状態の構造安定性、および触媒性評価を行い、エッジからの距離に応じた窒素元素の特性を明らかにした。
  • (3) ヘテロナノカーボン材料のLi空気電池への応用
    アニリンから合成したSP合成カーボンを用いて放電性能を評価した結果、約1580 mAh/gの放電容量を示した。この値は、市販のカーボン材料を空気極に用いて構築したセルにおける放電容量の約3倍の値であった(図3)。

今後の進め方

  • SP反応場の特徴を反応機構から明らかにするために、中間体を検出するとともに、精密合成技術を進化させる
  • 量産技術として確立するための収率向上と合成物質のばらつき低減を図る。
  • 触媒性・触媒安定性の向上を行うために、活性点の評価技術を確立し、分子設計の戦略を構築する。
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3年度の成果|Results Y2014

図1:ヘテロ元素含有カーボンの触媒性

図2:窒素導入量と構造安定性

図3:電子・ラジカル温度の経時変化

これまでの研究成果(インパクト)

  • 酸素還元活性を示すカーボン系触媒の合成
    窒素やボロン、リン、フッ素を含む原料から、ソリューションプラズマにより、ヘテロ元素含有カーボン材料を合成し、酸性およびアルカリ環境下において酸素還元反応に対する触媒性を評価した。窒素とボロンおよび窒素とリンを組み合わせた異種元素含有カーボン材料のアルカリ環境下における触媒性が向上することを確認した(図1)。
  • ヘテロ元素含有グラフェンの安定性予測
    理論計算により、ヘテロ元素含有グラフェンの構造安定性、電子状態評価を行った。ドーパント配置のキラリティによって半導体/金属の分類ができ、それが特異な安定化と関係していることを明らかにした(図2)。ヘテロ元素含有グラフェンの酸素還元触媒性能評価を行い、ある濃度の窒素ドープグラフェン上で、Pt(111)表面に匹敵する酸素還元ポテンシャル、反応選択性が得られることを明らかにした。
  • ソリューションプラズマ反応場の深化
    ソリューションプラズマ反応場のナノ秒時間分解発光スペクトル計測を行い、電子密度やラジカル温度の時間変化を計測した。プラズマ中の水素ラジカル、水酸基ラジカルの温度は発光開始後0.2 μs以下で、数千K以上の急激な上昇を示し、それ以降の時間領域では、数千Kの平均値の周辺を2000 K程度の幅で、高速で上下することを明らかにした(図3)。

今後の進め方

  • 高い繰り返し周波数で電圧を印加できる新電源を用いて、理論計算より触媒性が予測される構造の合成を目指す。NやB等の複数の異種元素を導入し、高性能なカーボン系触媒の合成手法を確立する。
  • 吸収分光装置により、非発光活性種の計測を行い、反応場の理解を深め、反応解析技術を確立する。
  • 金属空気電池を作製し、電池電極材料としての性能を明らかにする。
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2年度の成果|Results Y2013

図1:プラズマ発生回路の制御と層状の窒素含有カーボンの合成

図2:窒素導入量と構造安定性

図3:電子温度、電子密度と粒子温度の関係

これまでの研究成果(インパクト)

  • 酸素還元活性を示すカーボン系触媒の合成
    フタロシアニン骨格を含む窒素含有カーボンを合成し、白金同等の高い酸化還元電位を示すと共に、耐久性が高いことを明かにした。電極間の電流-電圧特性を制御するためにフィルタ回路を導入し、ソリューションプラズマ反応場を制御した。プラズマを制御することで、結晶性を有する層状の窒素含有カーボンの合成に成功した(図1)。
  • ヘテロ元素含有グラフェンの安定性予測
    グラフェンに窒素を導入した際の構造安定性に関する解析から、ドーパント配置のキラリティによって半導体/金属に分類され、それが特異な安定化と関係していることを示した(図2)。
  • ヘテロ元素含有グラフェンの新機能創出
    高熱電変換性能指数を有する可能性がある構造を理論的に設計・評価した結果、いわゆるジグザグ型界面を有するグラフェン/hexagonal BNの超格子が、グラフェン単体に比べて最大20倍以上の熱電変換係数(熱電変換性能指数に換算すると400倍以上)を持ちうることを初めて理論的に予測した。
  • ソリューションプラズマ反応場の深化
    炭素電極を用い、プラズマ中心におけるC2ラジカルやCHラジカルの粒子温度(4000K〜5000K)が、プラズマ空間の電子温度(約6500K)よりも低く、非平衡性が示された。電子密度が粒子温度に影響することが分かり、電流値のモニタリングにより、プラズマ空間の状態の見積が可能であることが示唆された。

今後の進め方

  • プラズマ反応場を制御し、窒素のみならずボロン等の異種元素種を含むカーボン系触媒の合成手法を確立する。
  • ヘテロ元素含有グラフェンの触媒活性の理論予測を行い、設計指針を得る
  • 吸収分光により非発光活性種の計測を行い、反応場の理解を深め、反応解析技術を確立する。
  • リチウム空気電池の正極材料に適用し、電池性能の評価を進める。
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初年度の成果|Results Y2012

図1:ヘテロカーボン合成

図2:ヘテロカーボン触媒の設計

これまでの研究成果(インパクト)

  • ソリューションプラズマを用い、窒素原子を含む分子(ピリジン、トリアジン、フタロシアニン鉄等)から、それらの重合体である窒素含有カーボン系材料の合成に成功した。反応条件を制御することにより、重合体の化学量論組成を維持あるいは変化させることができる。窒素の含有量によって、その物質の一つの機能である酸素還元ポテンシャルを大きく変化させた。これらより、CN系新材料の合成と機能の制御に向け大きく前進した(図1)。
  • CN系グラフェンについて、第一原理計算より、その構造安定性を評価し、Nが導入される程不安定化することが分かった。しかし、N濃度が25%のところのみ特異的に安定化されることを明かにした。ベーサル面においては、酸素還元反応に対しPt触媒と同様の反応機構を示す可能性があることを明らかにした(図2)。
  • 炭素電極を用い、プラズマ中心におけるC2ラジカルの発光スペクトルを測定し、C2ラジカルの粒子温度(約4000K)を概算した。プラズマの空間平均の電子温度(約6500K)と比較し低い。このことは、ソリューションプラズマの非平衡性を科学的に示している。今後、最も重要と考えられる溶液/プラズマ界面でのプライマリ反応を明らかにしていくための第一段階をクリアできたといえる。

今後の進め方

  • ヘテロカーボン及びグラフェンの構造(局所構造、欠陥、広がり、マクロ構造)制御と特性評価 (結晶成長における核生成をいかに低減するか)
  • ヘテロカーボンの局所構造解析手法の確立 (STM, TEM等を中心に原子レベルで直接観察するための試料作製法)
  • 顕微過渡吸収分光による活性種・反応中間体の空間分布計測し、溶液/プラズマ界面の反応を明確化
  • ヘテロカーボンの触媒性の起源及びその他新規物性解明
  • ソリューションプラズマ反応の他領域への展開
  • ソリューションプラズマ反応場の実用ベースに向けた反応工学的デザイン

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