研究代表者・研究課題

HOME 研究代表者・研究課題 平成26年度採択 前田理

反応経路自動探索法によってコンピュータを活用した反応設計の枠組みを構築します | 前田理 | 北海道大学 大学院 理学研究院 准教授 | 専門:理論化学、計算化学

課題名|Research Theme

反応経路自動探索法を基盤とする
化学反応の理論設計技術

概要|Outline

量子化学計算による反応経路自動探索の概念図

本研究では「量子化学計算で未知の素反応過程を系統的に自動探索する」理論技術を開発します。これは量子化学における未解決問題の一つであり、反応機構を仮定して行う従来の理論解析の枠組みを打ち破るチャレンジングな課題と言えます。また、この技術は未知の化学反応をコンピュータで自動探索するという夢へ向かう糸口でもあり、解決によるインパクトがとりわけ大きなテーマと言えます。これを、代表者らが開発してきた反応経路自動探索法を基盤とし、多様な化学反応へと適用できるよう汎用化していくことで実現します。

特色|Feature

  • 反応機構を仮定して行う従来の理論解析の枠組みを打ち破る
  • 未知の素反応過程を系統的に自動探索し、人間の想像が及ばない複雑な反応機構の理解を可能にする
  • 実験に先立って反応性を予測する、化学反応の設計技術へ
  • 現時点では気相反応や単純な有機反応がターゲットだが、本プロジェクトを通じて方法を高度に汎用化し、触媒反応、光機能分子設計、酵素反応、微粒子触媒、表面触媒、パッキング構造予測など、多様な化学反応へと応用可能にする(京コンピュータなども活用)
  • 適用範囲内で、領域内の理論サポートを実施

研究代表者

前田 理
北海道大学 大学院 理学研究院 教授 研究室HP
 
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2年度の成果|Results Y2015

図1 無輻射失活経路自動探索技による金属錯体の反応性解析。ポテンシャル交差点(×印)の高さが反応性を支配。

図2 速度定数行列縮約法の概念図。速度定数行列を繰り返し縮約し、コンフォメーションエントロピー等を考慮したオーバーオールでの反応速度定数を算出。

これまでの研究成果(インパクト)

  • 遷移金属錯体の光化学への展開
    有機分子の光反応へと応用してきた光反応の無輻射失活経路自動探索技術を、遷移金属錯体に適用できるよう拡張した。開発した技術をRe(I)ハロゲン錯体へと応用し、光励起後の緩和経路を明らかにした。さらに、Re(I)ホスフィン錯体において知られている光誘起配位子置換反応について反応機構を明らかにすると共に、ハロゲン錯体とホスフィン錯体においてその反応性が異なる理由を解明した(図1)。
  • 反応経路網の速度解析と速度論を考慮した反応経路探索
    反応経路自動探索法によって得られる複雑反応経路網に対して適用できる速度解析法(速度定数行列縮約法)を開発した(図2)。さらに、同手法を反応経路自動探索法と組み合わせることで、反応速度式を解きながら、反応が実際に進む方向へと反応経路網を拡張する技術を開発した。これにより、複雑反応経路網の探索効率が劇的に向上した。
  • 結晶構造探索への展開
    反応経路自動探索法を周期系の経路探索が行えるよう拡張し、炭素の新同素体を膨大に予測することに成功した。

今後の進め方

  • 光触媒の反応機構にアプローチする
  • 様々な化学組成について結晶構造予測を実施する
  • 周期系の経路探索技術を拡張し、不均一触媒反応へと展開する
  • 量子古典混合法とのインターフェイスを拡張し、酵素反応などの生化学反応への適用性を向上させる
  • 種々の有機反応、触媒反応、光反応へ応用し、反応設計に貢献する
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初年度の成果|Results Y2014

これまでの研究成果(インパクト)

  • 光化学反応の無輻射失活経路の自動探索技術を確立
    光によって電子励起された分子は、光(蛍光や燐光)の放出を伴う輻射失活、または、光の放出を伴わない無輻射失活によって電子基底状態へと戻る。その挙動を調べ、光反応の機構を予測するには、光励起直後の分子構造(右図FC)から到達しうるポテンシャル交差点(右図MECI)を全て求め、無輻射失活経路を特定しなければならない。今年度、人工力誘起反応(AFIR)法を用いてMECI構造を自動探索し、分子の無輻射失活経路を特定する技術(右図)を確立した。本技術は、蛍光分子や可視光増感剤など、光機能性分子の設計へと応用される。
  • 芳香族炭化水素の蛍光量子収率の分子サイズ依存性の原因解明
    上記技術を用い、種々の芳香族炭化水素分子の無輻射失活経路を特定した。これらの分子では、分子サイズが大きくなるに従って蛍光量子収率が向上することが知られている。最安定なMECIを通る無輻射失活経路を特定し、失活効率を比較することで、蛍光量子収率の違いを説明できた。同様の手順で様々な分子の蛍光量子収率を議論することで、蛍光量子収率の高い分子の設計指針の検討を進めている。

今後の進め方

  • 人工力誘起反応法を、周期境界条件を考慮できるよう拡張し、表面反応や結晶構造予測へと応用できるよう汎用化する
  • 量子古典混合法とのインターフェイスを拡張し、酵素反応などの生化学反応への適用性を向上させる
  • 種々の有機反応、触媒反応、光反応へ応用し、反応設計に貢献する

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