研究代表者・研究課題

HOME 研究代表者・研究課題 平成26年度採択 中村栄一

電顕科学で分子と実社会を繋げます | 中村栄一 | 東京大学 総長室総括プロジェクト機構 兼 大学院理学系研究科 特任教授 / 名誉教授 | 専門:物理有機化学

課題名|Research Theme

新しい電子顕微鏡科学を基軸としたゆらぎ
分子システムの分子技術

概要|Outline

本研究は、ナノおよびメゾスコピック領域での構造ゆらぎを持った分子と分子集合体の構造や動的挙動、そして化学反応の研究における高分解能電子顕微鏡の利用法を探求します。これにより、化学、製薬、電気・電子工業での基盤技術である結晶化と相分離の制御、触媒化学反応の合理設計、タンパクの構造決定などで格段の進歩が期待されます。

電子顕微鏡化学の概念図

特色|Feature

  • 日本のお家芸の電子顕微鏡技術から「電子顕微鏡化学」へ
  • 「分子をいくら設計しても、望み通りの機能が出ない」という悩みを解決し、社会的課題の解決に資する分子技術を構築
  • 有機合成化学と電子顕微鏡技術を有機的に結合して、ナノ・メゾスコピック領域でのゆらぎ分子システムの解析と制御に挑む
  • 「分子技術プロジェクト」内外での共同研究を積極的に展開し、電子顕微鏡で分子世界と実社会を繋ぐ分子技術を構築

研究代表者

中村 栄一
東京大学
総長室総括プロジェクト機構 兼
大学院理学系研究科
特任教授 / 名誉教授 研究室HP

主たる共同研究者

柳澤 春明
東京大学
大学院医学系研究科
講師
山添 誠司
首都大学東京
理学部
教授
松田 広久
三菱ケミカル(株)
横浜研究所 分析物性研究室
主任研究員
 
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4年度の成果|Results Y2017

これまでの研究成果(インパクト)

  • 量子力学の予想する化学反応理論を初めて実験により証明
    量子力学的遷移状態理論は,一つ一つの反応はランダムに起きるが平均すれば一次反応速度式に従う挙動を示す,と述べる.我々は,一次元に配列した分子の化学反応を電子顕微鏡で一つ一つ観察し,そのイベントを積算することでこの記述が正しいことを初めて実験的に示した.わずか数百個の分子を観察するだけで速度論解析が行えるこの研究手法は,分子構造の変化を個々の量子力学的イベントして解析できる手法として分子科学研究の革新をもたらすであろう.

図1.カーボンナノチューブに一次元配列したC60分子の電顕観察による反応速度論解析

今後の進め方

  • 原子分解能TEMによる有機分子の反応速度論・反応機構解析手法を様々な反応系に展開する.
  • 金属クラスター,有機無機ハイブリッド,有機分子・集合体,タンパク分子などの数多くの原子からなるゆらぎ系についてこれまでの成果をさらに発展させる.
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3年度の成果|Results Y2016

ナノスケールポリマー集合体の形成過程の
観察に成功

これまでの研究成果(インパクト)

  • 高分子のナノ構造形成を高分解能走査電子顕微鏡(SEM)で追跡することに成功
     水溶性フラーレン分子からなる分子二重膜に遷移金属触媒を複合化したハイブリッド触媒を用いてノルボルネン誘導体の重合反応を行い,生成した高分子の構造を低照射電圧SEM観察することで,二重膜上で相分離した粒子の像をナノレベル分解能で明瞭に捉えることに成功した.この知見に基づき基質との親和性を二重膜の表面置換基により制御することで,単一高分子鎖が折りたたんだ直径5 ナノメートルの粒子と直径30 ナノメートルの剛直なカプセル型集合体を選択的に合成することに成功した.
  • 多核錯体結晶の触媒活性と結晶形態との相関解明(今野Tとの共同研究)
     カタラーゼ様活性を有する多核錯体について低照射電圧SEMによる結晶形態観察を行い,特定の結晶面が表面に現れた結晶が高い触媒活性を示すことを見いだし,表面構造との関連を明らかにした.
  • 超高速原子分解能透過電子顕微鏡(TEM)の運用開始
     本年度より本格稼働した新型TEMの使用環境を最適化し,-170〜800°Cの幅広い温度領域での原子分解能動画撮影を達成した.

今後の進め方

  • 化学反応の電子顕微鏡動画撮影により,反応速度論と原子分解能での構造変化の同時解析を実現する
  • 原子分解能分子動画撮影により,小分子や原子の自己集合過程を視覚的に解明する.
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2年度の成果|Results Y2015

図1.フラーレン二重膜ベシクルへの金ナノ粒子複合化の模式図と走査透過電子顕微鏡(STEM)像

図2.金ナノ粒子の協奏的集積化を示すSTEM像.ベシクル表面上でのドメイン形成がみられる.

これまでの研究成果(インパクト)

  • 高分解能電子顕微鏡によるナノ粒子の協奏的集合機構の解明

     疎水表面をもつ水溶性フラーレン二重膜ベシクルを土台として,界面活性修飾を施した金ナノ粒子の集積化プロセスを高分解能電子顕微鏡を用いて追跡した結果,表面置換基の最適化によりベシクル表面における金ナノ粒子の協同的自己集積化が実現できることを見出し,直径30ナノメートルの安定なハイブリッドベシクルを得ることに成功した(図1).
     単粒子レベル分解能での電顕観察により,金粒子の自己集積化挙動は粒子表面のオリゴエチレンオキシド鎖長が大きく影響することがわかり,粒子間の相互作用により協同的に粒子が集積化する特殊な機構を明らかにした(図2).

     作製したハイブリッドベシクルは粒子単独よりも高い触媒活性を示すことも明らかにし,これまで困難であった階層的組織化の合理設計と機能開拓に道をひらいた.

今後の進め方

  • 原子分解能透過電子顕微鏡により分子集合体や金属錯体の形成機構を分子レベルで解明する.
  • 量子力学の概念に基づく電子顕微鏡動画像の解釈を進める(専門家との共同研究).
  • 次年度より本格稼働する超高速原子分解能TEMの使用に習熟する.
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初年度の成果|Results Y2014

図1

図2

図3

これまでの研究成果(インパクト)

  • 電子顕微鏡観察における分子の動きのメカニズムを解明
    電子顕微鏡で撮影した個々の有機分子の動画を定量的に解析し、電子線を遅くするほど活発な分子の動きが観察できることを明らかにした。この知見に基づき、長さ4ナノメートルの分子の配座変換を動画として記録し、一つの分子の中で動きやすい部分、動きにくい部分を視覚的に判別することに成功した。(図1)
  • 有機固溶体からなる有機薄膜太陽電池の形態観察
    異なる二種類のポルフィリン誘導体を混ぜた有機薄膜太陽電池がそれぞれの材料単独から作成した太陽電池より優れた性能を示す事を見出し、これが有機固溶体の形成に由来することを走査電子顕微鏡による高分解能観察から明らかにした。(図2)
  • 自己集合型ナノカプセル上の単一タンパク質分子のイメージング
    水溶性フラーレンからなる二重膜ベシクルの表面への高密度にタンパク質修飾されたナノカプセルを開発し、導電性親水化基板上での低入射電圧走査電子顕微鏡観察によりカプセル上に集積化したレクチンタンパク質一つ一つの観察に成功した。(図3)

今後の進め方

  • 分子を釣る「化学釣り針」を開発し、観察したい対象分子を効率的に捕捉する方法を確立する。
  • 生体分子やナノ構造体を精度良く安定に結合できる走査電子顕微鏡用観察担体を開発する。
  • 電子線による試料の「ぶれ」を抑制・補正する方法を確立する。

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