研究代表者・研究課題

HOME 研究代表者・研究課題 平成25年度採択 長岡正隆

理論化学と情報科学が拓く新しい計算分子技術の創造 | 長岡 正隆 名古屋大学 大学院 情報科学研究科 教授 | 専門:理論化学、計算化学

課題名|Research Theme

マクロ化学現象シミュレーションに向けた
計算分子技術の構築
─複合化学反応・立体特異性・集合体構造の分子制御─

概要|Outline

複合化学反応の制御

本研究では、多数の分子が集まった“分子凝集状態”で起こる複合化学反応の制御を目指します。そのために、ミクロに見ると非常に稀にしか起こらない化学反応(超希少現象)を、原子・分子情報を保持したまま扱う、新しい計算分子技術を創り上げ、科学技術イノベーションを図ります。具体的には、凝集系化学反応の立体化学制御と超ナノ階層集合体の構造制御を実現して、新機能材料を設計・創成します。最終的に、マクロ化学現象シミュレーションの計算分子技術の汎用環境を実験家と協働して提供したいと夢見ています。

特色|Feature

  • 未反応分子数vs.活性分子数の割合から考えると超希少事象である化学反応現象を現代のコンピュータ環境でシミュレート可能にする新しい計算分子技術(今日現在、オンリーワン!)を展開して開発する。
  • 素反応に関する従来の計算分子技術を援用して、対象物質系の素反応群リストを網羅列挙し、複合化学反応系として、同時反応させて自然にできあがる生成物系の異質性や成分の経時変化を追う。
  • 精密合成技術と相補的な分子技術として、分子凝集状態のミクロとマクロとを繋ぐ計算分子技術を標準化して、新カテゴリーのケミストリープログラムの完成を目指す。
 
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3年度の成果|Results Y2015

図1 Red Moon法の展開(MC/MDサイクルの意味付け)

図2 FT30膜生成の実験的取り扱いにおける界面重合における反応機構の模式図

図3 SEI膜内の空孔比率の比較

これまでの研究成果(インパクト)

  • (総論)量子力学的/分子力学的(QM/MM)法等のマルチスケールシミュレーション技法とRed Moon法(混合MC/MD反応シミュレーション法)を基礎に、新しい計算分子技術を引き続き開発した。それらを基礎に高分子物質・二次電池材料の研究・開発を進めた。
  • 研究成果Ⅰ: 研究項目Ⅰ「マクロ化学現象シミュレーションの分子技術の確立」において、Red Moon法のMC/MDサイクルの意味付け(図1)をするとともに、自由エネルギー(FE)曲面探索プロトコルとしてFE勾配-エネルギー表示(FEG-ER)法を提案して効率性を示した。FEG-ER法の汎用化は凝集系反応の研究を促進すると期待できる。
  • 研究成果Ⅱ: 研究項目Ⅱ「計算分子技術と精密合成技術による凝集系化学反応の立体化学制御」 において、「オレフィンブロック共重合体の反応制御」を新たに開始して、①素反応解析のためのQM計算、②分子力場開発、③カチオン性活性種近傍の対アニオン分布に関する知見を得た。これらは重合反応場の理解と設計につながる。
  • 研究成果Ⅲ: 研究項目Ⅲ「計算分子技術と精密合成技術による環境・エネルギー材料の開発」に向けた研究を継続して進めた。①逆浸透膜形成過程における拡散過程の影響とその重要性(図2)、②SEI膜形成過程途中における添加剤に関する新しい知見を得た(図3) 。

今後の進め方

  • 研究項目Ⅰ:Red Moon法と自由エネルギー計算法のプログラム開発を進める。
  • 研究項目Ⅱ:QM計算と実験報告に基づいた重合反応機構を確立し、エネルギー・構造パラメータを確定する。Red Moon法の実行。
  • 研究項目Ⅲ:二次電池系の電極の影響についての研究を進める。
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2年度の成果|Results Y2014

図1:混合MC/MD反応シミュレーション法の
重合法への展開(最短結合法)

図2:凝縮系における振動数双解析法
左:振動状態密度 右:近似的赤外スペクトル

図3:単量体混合比率の膜構造への影響
(ポリアミド膜構造のステレオ図)

これまでの研究成果(インパクト)

  • 総論
    これまで開発してきたマルチスケールシミュレーション技法と混合モンテカルロ/分子動力学(MC/MD)反応シミュレーション法を基礎に展開し、新しい計算分子技術を開発した。それらを基礎に新物質・新材料の開発を進めた。同時に実用的基盤と知的資産を形成を進めた。
  • 研究項目Ⅰ
    研究実施項目Ⅰ-1「混合MC/MD反応シミュレーション法の開発」にI-3「マクロ化学現象シミュレータの開発と実行環境の整備」を加えた2つを中心に進め、①反応法の高分子重合法への展開(図1)、②振動数双解析法(図2)、を行った。こうした計算分子技術の汎用化は凝縮系化学と高分子合成の理解にインパクトを与える。
  • 研究項目Ⅱ
    研究実施項目Ⅱ-2「錯体触媒による重合反応の選択性制御」を継続すると共に、新しくⅡ-3「多孔性金属有機構造体や生体高分子内における特異現象」の研究にも着手した。新しい知見として①構造体の電荷分布の重要性(図2)、②非特異的結合の重要性、に関する知見を得た。これらは反応場の理解と設計につながる。
  • 研究項目Ⅲ
    研究実施項目Ⅲ-1「ポリアミド膜の水透過性の向上と高機能化」、Ⅲ-2「二次電池の界面構造の解明と高容量化」の研究を継続して進めた。①単量体混合比率の膜構造への影響(図3)、②SEI膜形成における添加剤効果に関する新しい知見を得た。

今後の進め方

  • 研究項目Ⅰ:混合MC/MD反応法と自由エネルギー計算法のアルゴリズムを確立する。反応拡散と凝集状態の取扱い手法を確定する。
  • 研究項目Ⅱ:重合反応の選択性と共重合の反応制御への本格的適用を開始する。
  • 研究項目Ⅲ:MOF(/PCP)内反応と二次電池への適用を深化させる。
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初年度の成果|Results Y2013

図1 混合MC/MD反応シミュレーション法

図2 ポリアミド膜構造のステレオ図
(MPD:TMC=1:1、2000MC/MDサイクル後)

図3 二次電池におけるSEI膜の電解液依存性

これまでの研究成果(インパクト)

  • 総論
    これまで先行CREST等で開発してきた計算分子技術(マルチスケールシミュレーション技法)を展開し、新たに混合MC/MD反応シミュレーション法を開発して、計算分子技術や新物質・新材料の開発を進めた。同時に、実用的基盤と知的資産を形成することを開始した。
  • 研究項目Ⅰ
    研究実施項目I-1「混合MC/MD反応シミュレーション法の開発」(図1)を中心に進め、汎用化のために必要な、①各種化学反応の分類、②反応スキーム作成指針の例証、③計算プロトコルの策定を行った。こうした計算分子技術の汎用化が実現するとマクロ化学現象全般の解明に大きなインパクトを与える。
  • 研究項目Ⅱ
    研究実施項目Ⅱ-2「錯体触媒による重合反応の選択性制御」に着手した。①金属錯体の計算モデルの作成、②計算パラメータ調製(MO計算と力場調製の実施及びr-Cp構造の再現性確認)
  • 研究項目Ⅲ
    研究実施項目Ⅲ-1「ポリアミド膜の水透過性の向上と高機能化」、Ⅲ-2「二次電池の界面構造の解明と高容量化」の研究に着手した。前者では、不均質な立体構造を有している様子が正確に再現できた(図2)。後者では、2種類の電解液を用いて生じた界面構造の相違から、置換基の有無という僅かな差が、構造的特徴に大きな差異をもたらすことが分かった(図3)。

今後の進め方

  • 研究項目Ⅰ:混合MC/MD反応法の基礎付けをさらに進めると共に、基礎アルゴリズムを確立して、反応法の展開をはかる。
  • 研究項目Ⅱ:計算モデルの試験的適用と、共重合への適用の検討を開始する。
  • 研究項目Ⅲ:実証用MOFと生体高分子系の探索しモデル化する。

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