セッションでの意見、論点

はじめに

• 視聴者の投票　Q.対話、たりてますか？　A.たりている：22%、たりていない：78%

新型コロナから見つめなおす「いま」と「対話」 ―日本科学未来館

• ひとつのリスク(例えば新型コロナウイルス感染症)に対し、そのとらえ方や意見は置かれている立場や価値観によってそれぞれ違う。自分と共感できるもの、そうではないもの、一人ひとりの声に触れ、その存在に気づき、考えを深め語り合う機会は少ない。
• それぞれの人の状況や気持ちを残して共有できる場があることの価値について考えたい。
• 人々が気軽にお話できるような場づくりとはどのようなものだろうか？

大学から対話の場をひらく ―大阪大学ELSIセンターの活動より

• 「問題を乗り越えるための」科学技術コミュニケーションの一環として、これから世の中で扱われようとしている萌芽的な科学技術について対話の場をつくり、専門家の意見をきいたり、一般の参加者の方が科学技術に対するそれぞれの期待や懸念をもちよって言葉にしたり共有したりしながら、自分なりの思いや考えに気づくような設計の「市民参加型ワークショップ」を行っている。
• もともと興味があった人でなくても、テーマについて参加者が自分なりにお話ができるように、ワークショップごとに情報提供資料を工夫しながら作成している。　※資料情報：「ちがってみえるメガネ」https://chigamega.net/
• （私たち科学コミュニケーションを担う一人ひとりが）有事に、急いでコミュニケーションをしなくてはと思っても、なかなかできないということを10年前の東日本大震災から痛感してきたようにふりかえる。そして、今、このコロナ禍においても、同じような状況ではないか。
• 常日頃から、社会問題や自分がわからないことについて、いろんな耕し方ができる「対話の場」をもっておきたい。
• 「対話の場」が全国に複数あり、相互に緩やかに”つながり”あう状況をつくりたい。
• 〈対話＝いいこと〉となりがちだが、対話が単なる道具や目的として使われた場合、一方的な「合意形成」の既成事実化など、暴力的な行為になる可能性があることも考えなくておかなくてはならない。

震災という出来事から対話の場をひらく ―考えるテーブル×てつがくカフェの活動より

• 東日本大震災というできごとの衝撃…未来を見通せないということは人を不安にさせる。
• 私たちは意識にわいたイメージを「ことば」によってかたどることで、出来事を理解しようとしたり分かるようになっていくが、被災などアイデンティティの根幹を揺るがすような出来事に遭遇した時に、自分のことばによって出来事を考えていくプロセスをふまなくては、「出来事」を自分の人生に位置付けることが難しいように思う。
• 震災という出来事をことばによってかたどるための対話の場として「てつがくカフェ」が必要であると考えた。一方で、直接的な支援につながらないので意味がないという声や、ことばによって表出することを危惧する声もあった。
• 直接的な被災をしていない方も含めだれもがアクセス可能な場にするための工夫として、テーマの抽象度をあげ遡行的なテーマを設定した。一般市民に対話をひらいていくことで、問い直しが起こったり、当事者も一緒に考えていくことができた。
• 手法として、対話（ことば）を可視化する装置としてのファシリテーショングラフィックを取り入れている。参加者がことばを迷ったり、言いよどんだりしたことば自体をキャッチする仕事。
• 出来事から距離をおいてながめたり、人の意見をじっくり聞くことは、自分とは異なる価値観や考えであっても一旦は引き受けることになる。その上で自分の考えとの違いを丁寧に分け、他者の考えを理解して自分の考えとすり合わせながら、新たな考えをとりいれるというプロセスが重要である。
• 「思考の肺活量を鍛える」をスローガンに、てつがくカフェを実践し気づいたこと
  ① 人は自分の都合の良いように聞く傾向にあるとの気づき
  ② 大きな言葉遣いで安易に他者の意見を理解してしまうことの危うさ
  ③ 自分で考えることで「主体性」が鍛えられるのでは
• （対話をすることについて）人が生きる上での危機管理としての「ことば」の役割があるのかもしれない。

ディスカッション　対話からはじめる「社会」って、どうなんだろう？

大学、被災地、科学館をはじめとするさまざまな場で、いろんな人を巻き込んで対話が行われるようになる社会にはどんないいこと（わるいこと）があるのだろうか？また、どんな場所で対話を行い、どのように広げられるのか？

Q.対話をすることの目的やあるべき姿

• まだ言葉になっていない経験を一人ひとり言葉にして共有できる場所が生活圏のコミュニティ(例：科学館など)として中にあるということが重要。
• それぞれにそれぞれの意味があるが、場を主催する側ではなく、対話の目的は参加する人がつくっていくもの。
• 発された言葉に対して、受け取った側も影響を受け、そこからまた言葉がでてくるというやりとり(双方向の意味)⇔「対話」と言いながら、言葉が往復しているだけで、主催者が影響を受けず、相手が変わることを望んでいるだけいうケースもある。
• 自分の考えをたくましくもっていくために、ほかの人の言葉を繊細に「きくこと」で、他の人と自分の意見の違いをすり合わせて新しい考えを手に入れること。⇔そうでない場合、場に流されたり安易に同調してしまう。
• てつがくカフェの実践では、そこに行けば何かやっている、立ち見でも眺めているだけでもいい、という場をつくった。平時には言葉あそびになってしまう場合もあるが、有事においてはことばを分けていくことで出来事を眺められるようになることが危機管理につながる。⇔繊細に意味を分けずに違うことばを使ってしまっている場合、衝突が生まれてしまう可能性もある。
• 当事者だけでなく、いろんな往復ができる対話をつくること、時間や回数を重ねていくことの重要性。それぞれが腑に落ちる点をみつけること。

Q.だれもが参加しやすい対話の場って？

• ファシリテーターとしては、基本的に「相手のことを知りたい！」という姿勢をもって、相手は何が言いたいのかを常に考え続ける。傾聴する姿勢を持つ人がたくさんいると、みんなが受け入れられる対話の場になる。（その意味では、対面の方がやりやすい気がする…）
• 地理的に具体的な固定の場所（例えば全国にあるような科学館や図書館）で対話が行われていることの重要性。「そこに行けば何かやっている」、「気になることを話せる」という場の安定性があることで、何かが起こってから話すときのハードルが下がるのではないか。このような平時の営みが続いていると、有事でも怖がらずに話せるような場を連携して立ち上げることのできる素地になると思う。
• リアルの場所で対話の場をひらくことの価値として、モヤモヤすることがあるがまだ自分で言葉にできない人も、自分の気持ちを定めるために他者の間でどんな言葉が交わされているかをきく参加の仕方がしやすいのではないか。開放的な場所で、通りすがりにふらっと参加できる空間という点では、科学館などはポテンシャルがあるのでは。⇔オンラインでは、空間が限られてしまい、少し外側から眺めたり、手書きの文字をみんなで眺めるということが難しく、参加者の参加のあり方が制限されるように思う。

Q.対話の意思がない人に対してはどのように向き合うか？

• 思いが強いものどうしの対話は難しい。緩衝材(例えばファシリテーター)を立てて当事者だけではない関係性をつくることが重要になるのかもしれない。
• 同じ主張をし続ける方も、てつがくカフェに参加し続けることで、他の人の声をきくようになったということもあった。対話において「きくこと」の耐性をつけることが重要なのかもしれない。

セッションで出たキーワード

科学技術コミュニケーション、大学教育、哲学カフェ、会話と対話、一方向から双方向へ、対話を政策につなげる