戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)

研究者紹介

マテリアルズインテグレーション(MI) 理論、実験、シミュレーション、データ解析を融合し材料研究開発を支援

[本文]

領域紹介

セラミックスコーティングMI

ユニット代表者
写真:松原 秀彰

高温物質移動および組織の時間依存挙動のシミュレーション技術開発

キーワード
セラミックス、コーティング、シミュレーション、材料設計、焼結
松原 秀彰HIDEAKI MATSUBARA
東北大学 大学院環境科学研究科

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図:高温物質移動および組織の時間依存挙動のシミュレーション技術開発

航空機エンジン、発電タービン等の高温・高圧部品に適用されるセラミックスコーティング等について、それらの特性・信頼性の改善や、材料製造プロセスの最適化などの実用的ニーズに応えるためのシミュレーション技術の開発研究を行う。図は本研究で開発したシミュレーション技術によって、セラミックスのコーティング膜の柱状および多孔質といった特異構造を再現した成果である。これをさらに発展させ、高温使用環境下における組織変化(気孔消滅等)、特性変化、剥離等の予測・設計を実現する。

写真:金 炳男

高温物質移動および組織の時間依存挙動のシミュレーション技術開発

キーワード
緻密化、気孔率、予測
金 炳男BYUNG-NAM KIM
国立研究開発法人 物質・材料研究機構 

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図:高温物質移動および組織の時間依存挙動のシミュレーション技術開発

セラミックコーティング層における組織の時間依存挙動を調べる。そのために、ジルコニア粉体の緻密化に伴う結晶粒と気孔率の時間依存性を実験的に求め、そこから緻密化挙動を表す経験式を導きだしデータベースとしてまとめる。図は緻密化速度の気孔率依存性である。緻密化速度は温度に関係なく気孔率の-4/3乗に比例しており、この経験式から気孔率の時間依存挙動が予測できる。結晶粒の成長に関しても同様の経験式を導きだすことによって、コーティング層組織の時間依存挙動が予測できる。このデータベースは材料組織予測システムのモジュールを作製するために利用することができる。

ユニット代表者
写真:毛利 哲夫

経路確率法に基づく時間粗視化とフェーズフィールド法の
時係数の定式化の研究開発

キーワード
フェーズフィールド法、経路確率法、原子移動
毛利 哲夫TETSUO MOHRI
東北大学 金属材料研究所

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図:経路確率法に基づく時間粗視化とフェーズフィールド法の時係数の定式化の研究開発

時間依存現象の素過程は単一原子の移動過程にある。試行振動数及び移動の活性化エネルギーを第一原理電子状態計算(DFT)を用いて求め、次に、ある状態から別の状態に系が遷移するときの最も確からしい経路を経路確率法(PPM)を用いて算出する。さらに原子レベルから内部組織の時間発展の計算にフェーズフィールド法(PFM)を応用するため、PFMの時間スケールを支配する緩和定数(係数)や拡散定数(係数)を粗視化を介してDFT+PPMから定め、これらを集積して材料設計・開発に必要な熱力学とkineticsのデータベース化を図る。このデータベースはTBCやEBCの開発の為の計算モジュールを作製するために利用することができる。図は、系が初期状態から最終状態に至る際の多くの遷移経路を示す。PPMはこの中で最も確からしい経路を予測する。

写真:陳 迎

原子移動の素過程の第一原理電子状態計算

キーワード
第一原理計算、電子構造、フォノン、活性化エネルギー、原子振動頻度、拡散定数
陳 迎YING CHEN
東北大学 大学院工学研究科

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図:原子移動の素過程の第一原理電子状態計算

材料の時間発展過程のシミュレーションにおける時定数を電子構造に基づく記述するため、原子拡散の第一原理電子状態計算(DFT)を行う。セラミックスコーティング材料のモデル系に対して相安定性、相平衡の基礎計算から、原子移動の素過程の活性化エネルギーをNudged elastic band法とDFTを組み合わせて算出、原子の試行振動数をフォノンの振動スペクトルから解析し(図)、これらの結果により拡散定数の導出に至る一連の大規模計算手法を開発して高精度で実行する。さらに、DFTの計算結果を研究代表者が開発する経路確率法(PPM)、フェーズフィールド(PFM)法への整合的な接続方法を確立することで、DFT+PPM又はDFT+PFMを連動させるための時間粗視化手法の開発、材料の動的発展過程の時定数の確定に資する。

ユニット代表者
写真:菖蒲 一久

構造材料開発に利用する計算熱力学に関する技術基盤構築

キーワード
計算熱力学、反応シミュレータ、CALPHAD、CaTCalc、計算状態図
菖蒲 一久KAZUHISA SHOBU
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 製造技術研究部門

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図:構造材料開発に利用する計算熱力学に関する技術基盤構築

EBCセラミックスコーティング材料の長時間にわたる熱化学的劣化挙動を解析するために、セラミックス系の化学反応計算や状態図解析に高い信頼性を有する最先端の計算熱力学ソフトウェアCaTCalcをベースに熱化学反応シミュレータを開発する。また同時に、これらの解析に必要なデータベースとして、CaO-MgO-Al2O3-SiO2を基本とする汎用の多元系酸化物データベースや、コーティング材料の専用データベース、物性データベースなども開発する。それによりEBCの水蒸気雰囲気中での蒸発消耗やCMAS系異物との反応による損耗、EBC、中間層、基材等間の界面反応、構成相の変化などの化学的損耗現象を定量的にシミュレートすることを目指す。右図に計算熱力学ソフトウェアCaTCalcを示す。

写真:山田 浩志

セラミックス材料の機械特性解析

キーワード
機械特性、第一原理計算、有限歪み法
山田 浩志HIROSHI YAMADA
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 製造技術研究部門

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図:セラミックス材料の機械特性解析

バリアコーティング(TBC、EBC)用セラミックス材料の結晶構造と機械特性の関連性を調べる。そのためには第一原理電子状態計算法により最適構造を求める。さらに有限歪み法により得られた歪みと応力の関連データから弾性スティッフネス、ヤング率、体積弾性率等の機械特性を解析する。これにより結晶構造から機械特性を第一原理的に計算することができる。表は代表的なセラミックスであるα-Al2O3とSiO2、それから応力発光セラミックスであるSrAl24の体積弾性率、ヤング率、ポアソン比の解析例を示したものである。この解析を通して、応力発光体の母体であるSrAl2O4の体積弾性率がα-quartzより若干大きく、α-Al2O3よりも小さいことがわかる。また計算値と実験値の比較から、予測精度に関して比較的高いと言える。

写真:徳永 辰也

RE-Al-Si-O系熱力学データベース開発とコーティング材料中の拡散係数解析

キーワード
計算熱力学、相平衡、CALPHAD、第一原理計算、分子動力学計算
徳永 辰也TATSUYA TOKUNAGA
九州工業大学 大学院工学研究院

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図:RE-Al-Si-O系熱力学データベース開発とコーティング材料中の拡散係数解析

EBCセラミックスコーティング材料の熱化学的劣化挙動解析およびYb代替材料開発に資する熱力学データベース構築の一環として、希土類酸化物系(RE-O2元系)における熱力学的解析、さらにはそれらの3元系への拡張とAlおよびSiの追加解析を実施しながら、RE-Al-Si-O系熱力学データベースの開発を行う。上記の熱力学的解析においては、従来の実験データに加えて本研究課題で実施する第一原理計算結果を考慮することにより、より精度の高いデータベースを構築することができる。また、セラミックスコーティングを構成する各材料中における拡散係数解析を分子動力学計算により試行する。上記で得られた熱力学データベースおよび拡散係数データを活用することで、セラミックスコーティング材料における劣化挙動の高精度予測に繋がることが期待される。右図はYb-O2元系状態図の計算結果を示したものである。

写真:大谷 博司

Yb2O3-SiO2系の複合化合物の第一原理計算

キーワード
第一原理計算、準調和近似、デバイーグリュナイゼン近似、遺伝的アルゴリズム、自由エネルギー計算
大谷 博司HIROSHI OHTANI
東北大学 多元物質科学研究所

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図:Yb2O3-SiO2系の複合化合物の第一原理計算

酸化物の有限温度の自由エネルギーを第一原理計算から評価する。結晶構造が既知の酸化物については、デバイ-グリュナイゼン近似計算や準調和近似計算から格子振動によるエントロピーを求める。また構造中に空孔や原子置換を伴うような系に関しては、クラスター展開・変分法によって配置のエントロピーを求める。これらの手法から評価されるエントロピーを取り入れることで、各相における自由エネルギーを得ることができる。また構造についての情報が未知の化合物については、遺伝的アルゴリズムなどを利用し基底構造及び準安定構造を探索する。図はSiの準調和近似計算による格子振動の寄与を取り入れた有限温度の自由エネルギーを示したものである。この計算手法を各種化合物に適応させ、有限温度の自由エネルギーのデータベース作成に活用する。

写真:及川 勝成

Si-Al-O-N系状態図データベース

キーワード
熱力学、計算状態図、セラミックス
及川 勝成KATSUNARI OIKAWA
東北大学 大学院工学研究科

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図:Si-Al-O-N系状態図データベース

SiAlONは、高靭性、高強度、高耐食性を示すことから、工業用セラミックスとして広く用いられている。SiAlONを最適条件で合成、組織制御するには、状態図が不可欠である。熱力学的な計算状態図を用いれば、任意の温度、組成における各相の安定性を予測できることから、SiAlONを合成するのに必要な知見を得ることができる。Si3N4-AlN-Al2O3-SiO2系について実験データ、第一原理計算などのデータに基づいて、Ionic compound energy modelを用いて熱力学的解析することにより、計算状態図を確立する。図は、Al2O3-SiO2系計算状態図である。また、このような計算に用いられるパラメータをデータベース化した熱力学データベースを構築する。

写真:阿部 太一

EBC用Yb基複合酸化物状態図のCALPHAD法による熱力学解析

キーワード
相安定性、熱力学アセスメント、Yb複合酸化物
阿部 太一TAICHI ABE
国立研究開発法人 物質・材料研究機構

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図:EBC用Yb基複合酸化物状態図のCALPHAD法による熱力学解析

EBC用のトップコート材としての適用が検討されているYb基複合酸化物の相平衡を明らかにするため、CALPHAD法による関連状態図の熱力学解析を行う。具体的な対象合金系はYb2O3-SiO2-Al2O3擬三元状態図とし、先ずそこに含まれる3つの擬三元状態図の熱力学解析を行い、統合・多元化を進め実材料における組織形成予測に不可欠なギブスエネルギー関数を取得する。解析の結果は、熱力学計算ソフトウェアCaTCalc用のファイル(CDBファイル)としてまとめ、データベースを構築する。右図は、CALPHAD法で解析により得られたより精密な各相のギブスエネルギーを用いたYb2O3-SiO2擬三元状態図の計算結果である。