セラミックスコーティングを対象としたマテリアルズインテグレーションでは、長さの単位ではナノメーター(nm)の分子レベルからセンチメートル(cm)オーダーの実部材サイズまで、時間単位ではピコ秒(ps)から数年使う構造体までのレンジの中で生じた現象や性質を統一的に理解できるようなシステムを目指します。そのために各種シミュレーションによる結果、プロセス条件や各種評価試験の結果をデータベースとし、データベースを利用して理論式や解析式を用いてパフォーマンスと、プロセス、組織、特性の関係を結び付けます。シミュレーションだけに頼るのではなく、解析式、経験式、ノウハウ等のありとあらゆる科学や技術の知識を駆使して、耐熱コーティングの研究開発時の問題解決を支援するためのツールを提供します。
研究開始から3年間は熱遮蔽コーティング(Thermal Barrier Coating)を対象として基本システムを設計し、その後はJFCC(ファインセラミックスセンター)拠点で開発が進められる耐環境コーティングへの適用に着手します。国際連携による開発により、国際的に通用するマテリアルズインテグレーションとして世の中に送り出すことを計画しています。
セラミックスコーティングのマテリアルズインテグレーションのチーム編成は、航空機用エンジン部材の耐環境コーティングのパフォーマンスという課題をもとに、独自のテーマで進んできた課題・研究者をSIP革新的構造材料の中で編成したという特徴を持ちます。この方法以外では編成できなかったチーム編成になっています。このために、研究課題設定、研究項目の連携などの過程を経て現在の編成に至りました。「異分野の研究者の方々の持つポテンシャルを一つの目標に向かってテーマ設定と課題を解決する」ためのチームを編成しました。また、具体的な課題設定には企業のニーズを十分に取り入れ、しかも、企業が独自のデータベースを組み込んだり、あたらしい技術分野を導入した際に、今回開発するシステムとの融合が簡単にでき、マテリアルズインテグレーションの成果を多くの企業が利用しやすい形としました。
焼結の進行(気孔率の減少)が、時間と温度に依存して進行するが、これの定量化が可能で、特性の変化(劣化)が予測できる。
セラミックスコーティングは航空機エンジン等に応用されますので、研究の段階から、国際的な連携によって開発を進めることが必要です。
セラミックスコーティングの損傷、剥離などの寿命を予測するために必要なシミュレーション技術の開発が期待されます。
現在、東北大学を核に日米英独の連携を計画しています。
分類 | No. | 研究開発課題 | ユニット名 | ユニット代表者 |
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金属MI | D61 | マテリアルズインテグレーションシステムの開発 | 組織予測システムの開発 | ◎○小関敏彦(東京大学) |
D62 | 性能予測システムの開発 | 榎学(東京大学) | ||
D63 | 特性空間分析システムの開発 | 井上純哉(東京大学) | ||
D64 | 統合システムの開発 | 渡邊誠(NIMS) | ||
D65 | 溶接部性能保証のためのシミュレーション技術の開発 | 〇廣瀬明夫(大阪大学) | ||
D67 | 「界面」を通じた、構造材料における未解決課題克服のための技術構築 | 〇津崎兼彰(九州大学) | ||
先端計測 | D66 | 構造材料の未活用情報を取得する先端計測技術開発 | 〇大久保雅隆(AIST) | |
セラミックスコーティングMI | D68 | 高温物質移動および組織の時間依存挙動のシミュレーション技術開発 | 松原秀彰(東北大学) | |
D69 | 計算機を用いた材料支援技術への時間依存特性導入技術 | 毛利哲夫(東北大学) | ||
D73 | 構造材料開発に利用する計算熱力学に関する技術基盤構築 | 菖蒲一久(AIST) | ||
高分子MI | D70 | 高性能高分子材料の長期時間依存特性の予測技術の開発 | 栗山卓(山形大学) | |
D71 | 構造用高分子材料の実用型最適設計・総合評価支援ツールの開発 | 藤元伸悦(新日鉄住金化学) | ||
D72 | マテリアルズインテグレーションヘの数学的アプローチ技術開発 | 西浦廉政(東北大学) | ||
D74 | 非線形解析を用いた高分子材料のパフォーマンス予測技術 | 志澤一之(慶應大学) | ||
D75 | 原子・分子レベルからのアプローチによる高分子材料設計支援技術 | 山下雄史(東京大学) |
◎:領域長 〇: 拠点長