戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)

研究者紹介

マテリアルズインテグレーション(MI) 理論、実験、シミュレーション、データ解析を融合し材料研究開発を支援

[本文]

領域紹介

高分子MI

ユニット代表者
写真:栗山 卓

高性能分子材料の長期時間依存性予測技術の開発

キーワード
エンジニアリングプラスチック、長時間特性、劣化挙動
栗山 卓TAKASHI KURIYAMA
山形大学 大学院理工学研究科

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図:高性能分子材料の長期時間依存性予測技術の開発

工業的に利用されている高分子材料の使用環境下におけるパフォーマンスの劣化挙動を調べる。高分子材料では、紫外線や水分による構造変化と性能との相関について、マルチスケール解析がなされていなかったため、材料の寿命設計が不十分であり、信頼性に欠けていた。本テーマでは、今までに行われた実験結果を系統的に整理し、時間依存特性である劣化挙動を評価解析するために、いろいろな環境下に置かれた材料のマクロレベルからミクロ劣化挙動を解析する。工業的に重要な高分子材料の劣化挙動を分類、モデル化し計算機科学や短時間実験で得られる結果から長時間使用後の特性を予測するためのデータを提供する。このデータ提供により、マテリアルズインテグレーションの利用価値を示す。

構造用高分子材料の実用型最適設計・総合評価支援ツールの開発

キーワード
高分子設計、科学計算、先端計測
  • 写真:藤元 伸悦
    ユニット
    代表者
    藤元 伸悦SHIN-ETSU FUJIMOTO
  • 写真:林 敬一
    林 敬一KEIICHI HAYASHI
  • 写真:竹内 玄樹
    竹内 玄樹GENKI TAKEUCHI

新日鉄住金化学(株) 総合研究所

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図:構造用高分子材料の実用型最適設計・総合評価支援ツールの開発

熱硬化性の構造用高分子材料の分子構造と力学特性の関連性を調べる。そのために、エポキシ系樹脂の構造を分子動力学法により解析し、その結果を数学的手法を用いてデータベースとしてまとめる。これにより、分子構造と力学特性に影響を及ぼす材料不均一性との相関性を知ることができる。図はエポキシ系樹脂の粗視化分子動力学法によるシミュレーションの結果を示したものである。このシミュレーションを通して分子構造の硬化反応に及ぼす影響を知ることができる。特に、各種力場ポテンシャルをパラメータとして一連のシミュレーションを行うことにより、分子構造と構成則との関連性を求め、データベースとして役立てることが可能になる。このデータのデータベースは分子構造スクリーニングのモジュールを作製するために利用することができる。

写真:増渕 雄一

粗視化モデル計算に基づく材料設計支援技術の開発

キーワード
高分子、ダイナミクス、粗視化、長時間現象
増渕 雄一YUICHI MASUBUCHI
名古屋大学 ナショナルコンポジットセンター

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図:粗視化モデル計算に基づく材料設計支援技術の開発

高分子の長時間ダイナミクスを計算するために必須である粗視化手法および計算手法の開発を行う。高分子材料の高性能化・高機能化には、加工等により生ずる高分子の準平衡状態の予測と制御が極めて重要だが、このためには系の長時間にわたるダイナミクスの予測が必要である。このような長時間現象を追跡するために、高分子の運動を適切に表現しつつ計算量を削減できる、新しい粗視化モデルを開発する。特に本研究期間では熱硬化性高分子に適用できる手法の開発を行う。これを、担当研究者が独自に開発してきた高分子用超高速シミュレーション手法(PCN法およびその拡張であるMCSS法)の改良により行う。従来の粗視化手法に対して100倍の計算効率の向上を目指す。

ユニット代表者
写真:西浦 廉政

劣化・破壊現象の新たな数理解析手法の開発

キーワード
相分離、フェーズフィールド法、計算ホモロジー
西浦 廉政YASUMASA NISHIURA
東北大学 原子分子材料科学高等研究機構

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図:劣化・破壊現象の新たな数理解析手法の開発

欠陥、亀裂、界面等、広い意味での劣化の成長と時間変化をモデル化することは材料科学の重要な柱である。とりわけミクロな予兆的変化を捉え、それらをメゾ、マクロな劣化・破壊予測につなげることが大きな課題となる。AFM、蛍光X線ホログラフィー法等による最先端高精度のミクロレベル測定法で得られる不均一な劣化変形データをトポロジー的手法により特徴付け、同時にマクロな亀裂等の特異点の発生や多価性を克服する理論モデルとしてのフェーズフィールドアプローチを用いつつ、劣化・破壊の時間変化予測モデルの構築が目標となる。その際、ミクロマクロ階層連関をつなぐものとして、計算ホモロジーの手法が鍵となる。このスケール統合的な数理モデルにより、劣化や亀裂に至る前段階の「予兆」のシグナルを捉えることがゴールとなる。

写真:平岡 裕章

時空間計算ホモロジー理論構築とアルゴリズム開発

キーワード
計算ホモロジー、パーシステント図、位相的データ解析
平岡 裕章YASUAKI HIRAOKA
東北大学 原子分子材料科学高等研究機構

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図:時空間計算ホモロジー理論構築とアルゴリズム開発

高分子材料の無秩序構造に対する高次元幾何学的記述子の開発を進める。入力としては分子動力学シミュレーションから得られる原子配置や、各種実験観測で得られる2D/3D画像データを想定する。これらの無秩序系を空間階層的に記述するパーシステント図の高速計算アルゴリズムに取りかかる(図はAFM画像のパーシステント図の例)。これにより、これまで高分子材料で開発されてきた従来の構造尺度では捉えることができない、詳細な幾何学的特徴づけが可能となり、材料物性との新たな相関発見や高精度化が期待される。また、劣化や破壊現象の特徴づけのためには時間発展データを扱う必要があるが、それについては時空間パーシステント図の理論・アルゴリズム研究を進め、これらの複雑現象の解明に意味のある記述子を開発する。手法の普遍性から対象とする材料は特に限定しないが、本プロジェクト内では主にエポキシ系樹脂を念頭におき、開発を進めていく。

写真:大林 一平

パーシステントホモロジーのソフトウェア開発と
それを利用した機械学習

キーワード
計算ホモロジー、パーシステントホモロジー、機械学習
大林 一平IPPEI OBAYASHI
東北大学 原子分子材料科学高等研究機構

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図:パーシステントホモロジーのソフトウェア開発とそれを利用した機械学習

パーシステントホモロジーを活用するためのソフトウェアを開発する。パーシステントホモロジーはデータの形状の情報を効率的に縮約するための数学的技法である。分子動力学で得られるデータや計測で得られる2D/3Dデータへと適用することで特徴的な形状の情報を取り出す。そのためにパーシステントホモロジーの計算や可視化を効率的かつわかりやすい形で実現するためのソフトウェアを開発する。また、パーシステントホモロジーを用いた統計/機械学習の数学的基盤を構築し、その実用化のためのソフトウェアを開発し、高分子の問題に適用する。機械学習を利用することで個々のデータに対するパーシステントホモロジーを可視化するだけではわからない情報を得ることができる。

写真:赤木 和人

材料の劣化予測への計算科学的アプローチ

キーワード
第一原理計算、マルチスケールシミュレーション、劣化予測
赤木 和人KAZUTO AKAGI
東北大学 原子分子材料科学高等研究機構

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図:材料の劣化予測への計算科学的アプローチ

材料の劣化や破壊につながる前兆の理解に取り組む。マクロな結果に対応するミクロな原因(前兆)を特定するために、高輝度放射光や電子顕微鏡を使って得られる実験データや種々の時間空間領域(マルチスケール)での計算機シミュレーションの結果から相関の強い量を見つける。ここにトポロジカル解析などの数学的な手法を適用する。見つかった相関がどのような物理化学に由来しているかの知見を得るために、電子状態と原子構造を精密に扱える密度汎関数法(第一原理計算)を駆使する。その知見は、マルチスケールシミュレーションの精度を上げるためのパラメータ最適化を通して「設計指針プラットフォーム」に還元する。より普遍的な理解を得るために合金系も扱う。図は、計算機シミュレーションで生成したアモルファス炭素の構造的特徴(黒鉛層の発達)の時間変化をトポロジカル解析で抽出した例。

写真:中嶋 健

高分子の劣化・破壊現象のナノスケール観測

キーワード
ナノ触診原子間力顕微鏡、ナノスケール粘弾性マッピング
中嶋 健KEN NAKAJIMA
東京工業大学大学院 理工学研究科

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図:高分子の劣化・破壊現象のナノスケール観測

高分子の劣化・破壊現象のナノスケール観測を行う。そのために、ナノ触診原子間力顕微鏡によるナノスケール粘弾性マッピングにより、硬化条件の異なるエポキシ系樹脂の構造・物性解析を行う。これまでの研究では硬化条件の違いとナノスケール不均一構造の空間スケールとの間に強い相関を見出している。図はあるエポキシ化率の試料の弾性率像(500nm)で、約7.5 nmのスケールの不均一構造が生じていることが分かった。本手法では変形下にある試料の観察も可能であるため、クレイズネットワークや応力鎖ネットワークの可視化を行うこともできる。これらのデータを通じて、データ同化型粗視化シミュレーションモデルとの連携を目指す。また同じデータを数理解析グループに提供し、パーシステントホモロジーを適用する新たな数学解析方法の導入に資する。

写真:高石 武史

材料破壊の予兆をとらえる数理モデルの構築

キーワード
フェーズフィールド法、有限要素法
高石 武史TAKESHI TAKAISHI
武蔵野大学 工学部数理工学科

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図:材料破壊の予兆をとらえる数理モデルの構築

高分子材料における破壊の予兆を含んだマクロスケール亀裂進展の数理モデルを構築する。ここでは、材料の破壊や損傷・劣化をフェーズフィールドにより表現し、材料内部の不均一性がマクロな破壊に至る過程を時間発展として記述していく。そのために、分子の幾何学構造と材料の不均一性、さらに、力学特性及び破壊特性との関連性を調べる。これにより、分子構造と破壊につながる予兆との相関性を知ることができる。図は不均一な破壊靱性を持つ弾性体における亀裂進展に対して、フェーズフィールドを用いた数理モデルによるシミュレーションを行った結果である。このシミュレーションを通して、材料の不均一性による破壊への影響を知ることができる。特に、破壊靭性や初期損傷の分布をパラメータとして一連のシミュレーションを行うことによりこれらの関連性を求め、データベースとして役立てることが可能になる。

写真:平田 秋彦

構造欠陥の透過電子顕微鏡による解析

キーワード
構造欠陥、電子回折、局所構造、結晶、非晶質
平田 秋彦AKIHIKO HIRATA
東北大学 原子分子材料科学高等研究機構

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図:構造欠陥の透過電子顕微鏡による解析

材料劣化・破壊の予兆を原子レベルから理解するため、結晶・非晶質材料を問わず、その起点となるような構造欠陥に関する透過型電子顕微鏡観察手法を開拓する。図にはこれまで手掛けてきた非晶質構造のナノ電子回折による局所構造解析を示している。この手法により、対象材料の構造が非晶質のように乱れた場合であっても明瞭な回折パターンとして局所構造の情報を得ることが可能である。また、蛍光X線ホログラフィーなど他の実験手法と本手法を相補的に利用することでより信頼性の高い構造データの取得が期待される。材料の劣化や破壊の予兆となり得る局所構造欠陥に関する信頼性の高い実験データをベースに、分子動力学シミュレーションなどの計算手法やホモロジー解析のような数理手法と連携して、材料劣化・破壊機構の理解を深めることができる。

写真:一宮 尚志

高分子材料の破壊プロセスの位相的データ解析

キーワード
トポロジー、応用数学、分子シミュレーション
一宮 尚志TAKASHI ICHINOMIYA
岐阜大学 医学部

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図:高分子材料の破壊プロセスの位相的データ解析

高分子の破壊過程の微視的なプロセスについての理解を得るため、高分子破壊現象の粗視化分子動力学シミュレーションを行い、位相的データ解析を用いて解析する。本研究では、様々なスケールで見た原子配置のトポロジーをパーシステント図と呼ばれる図にまとめて表現する。これにより破壊現象にともなうマルチスケールの構造変化を見ることができる。一例として高分子プラスチックの一軸伸長破壊シミュレーションを行い、降伏直後の原子配置に対して位相的データ解析を行った結果得られたパーシステント図を示す。赤丸で囲った領域内の点は、破壊に伴う構造変化を表している。このような構造変化の詳細を明らかにすることにより、破壊の予兆の発見、信頼度の高い材料の強度予測などが可能になると期待される。

写真:林 好一

原子分解能ホログラフィーで破壊の前駆状態を捉える

キーワード
蛍光X線ホログラフィー、原子イメージング
林 好一KOICHI HAYASHI
名古屋工業大学 大学院工学研究科

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図1:原子分解能ホログラフィーで破壊の前駆状態を捉える
図2:原子分解能ホログラフィーで破壊の前駆状態を捉える

X線や電子線などの量子ビームを材料に照射することによって、原子の配列を記録したホログラムを記録することができる。ホログラムからは超精密な原子像が再生され、しかも元素選択的に構造解析が可能となる。破壊の原因のひとつに物質の相変態現象がある。生体材料に用いるβチタンの脆化は、相変態によって生じるω相の析出が脆化の原因ですが、数nmで成長の止まるω相は、ある程度の結晶サイズを要するX線回折法では構造解析できない。原子分解能ホログラフィーはドーパントのような低次元の構造体の解析も、通常の単結晶と同じように行うことができる。破壊の前駆現象となる異質な相の析出を食い止めるヒントを得るために、その前駆状態の構造を高感度にイメージングすることに取り組んでいる。

ユニット代表者
写真:志澤 一之

熱硬化性高分子の損傷・劣化に関するマルチスケールモデリング

キーワード
分子鎖塑性モデル、損傷・劣化、マルチスケールモデリング
志澤 一之KAZUYUKI SHIZAWA
慶應義塾大学 理工学部

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図:熱硬化性高分子の損傷・劣化に関するマルチスケールモデリング

これまでに開発した分子鎖塑性モデルは、分子鎖のキンク回転を塑性変形の素過程と考え、分子鎖すべり系を導入して熱可塑性高分子を結晶塑性論的に体系化した材料モデルである。このモデルは分子鎖配向、局所変形の伝ぱ、クレーズ進展、除荷時のひずみ回復など様々な現象を一つのモデルで簡潔に表現できる(右図参照)。本プロジェクトでは、このモデルを熱硬化性高分子に適用できるよう拡張するとともに、新たに紫外線劣化現象を分子鎖スケールでの物性値変化に反映させた劣化モデルを構築する。それを高分子の基本的な変形問題に適用して非線形FEM解析を実施し、損傷進展や劣化挙動などが高分子の時間依存の力学的パフォーマンスに及ぼす影響を予測することにより、高分子の材料設計に対して有効な指針を提供できる。

写真:内田 真

充填材分散型熱硬化性高分子の変形評価手法の確立

キーワード
分子鎖網目モデル、大変形、均質化法、マルチスケール
内田 真MAKOTO UCHIDA
大阪市立大学 大学院工学系研究科

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図:充填材分散型熱硬化性高分子の変形評価手法の確立

分子鎖網目モデルを用いて熱硬化性高分子のμm~mmオーダの変形をモデル化する。分子鎖網目モデルは分子鎖の運動に基づいて定式化された高分子材料専用の大変形構成式であり、本モデルの熱硬化性高分子への適用は分子動力学による分子鎖挙動を基礎とした巨視スケールでの変形を記述可能にする。したがって本研究は、分子動力学によって得られるnmスケールの変形と巨視的スケールで評価された実験結果を橋渡しするための重要なテーマである。図は非晶性高分子の不均一変形に及ぼす微視的な空孔の影響を均質化法により解析したものである。このように分子鎖網目モデルはマルチスケール解析においても適用されており、プロジェクトを進めるうえで、熱硬化性高分子母材の充填強化の影響や、FRPの階層構造に基づく変形評価の展開にも寄与できる。

写真:青柳 吉輝

熱硬化性高分子の損傷・劣化に関するマルチスケールシミュレーション

キーワード
分子鎖塑性モデル、損傷・劣化、マルチスケールFEM解析
青柳 吉輝YOSHITERU AOYAGI
東北大学 大学院工学研究科

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図:熱硬化性高分子の損傷・劣化に関するマルチスケールシミュレーション

実験結果に基づく熱硬化性高分子の基本的物性値を反映させた分子鎖塑性モデルを用いて数値解析を行うために、分子鎖塑性モデルに関する解析コードを開発する。図は高分子材料の微細組織・変形機構に基づく高分子塑性モデルを用いて数値解析を行った結果であり、微細組織の影響によって力学的特性が変化している様子が再現されている。紫外線劣化挙動等を考慮した分子鎖塑性モデルをユニットセルに適用し、均質化法を用いたマルチスケールFEM解析を行う。このようにして、化学架橋密度、絡み点間距離、配向特性などの微視的情報が高分子の力学的パフォーマンスに与える影響が明らかとなり、高分子の力学的パフォーマンスを予測するシステムの基礎となるデータが獲得できる。

写真:石北 央

分子形状・エナジェティクス解析に基づく材料設計支援技術の開発

キーワード
QM/MM計算、量子化学、構造歪み
石北 央HIROSHI ISHIKITA
東京大学 先端科学技術研究センター

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図:分子形状・エナジェティクス解析に基づく材料設計支援技術の開発

特徴的な振動モードが存在し、かつ分子形状毎に様々なエナジェティクスを持つモデル分子を取り扱い、歪みモードの場合分け、それぞれのモードが持つエネルギーへの寄与、モード毎の特徴を明らかにする。そのため、同一構造式を持つ分子が現実にどれほど多彩な構造多様性を有しているか、数多くの結晶構造を解析し、分子構造と歪みの関係を明らかにする。また、特定の分子のみでなく様々な分子にも対応可能な汎用性の高い分子形状定量評価ツール、分子系エネルギー評価ツールの開発も行う。必要があればマテリアルインフォマティクス的な要素の取り込みも排除しない。最終的に、高分子材料において、分子形状からエナジェティクスを高精度かつ迅速に計算できる手法を開発する。

ユニット代表者
写真:山下 雄史

全原子分子動力学計算に基づく材料設計支援技術の開発

キーワード
分子動力学計算、全原子モデル
山下 雄史TAKEFUMI YAMASHITA
東京大学 先端科学技術研究センター

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図:全原子分子動力学計算に基づく材料設計支援技術の開発

近年のスーパーコンピュータの進化や方法論の改良により、全原子モデルを用いた分子動力学計算(全原子分子動力学計算)が幅広く適用されるようになってきた。特に、生命科学においては、タンパク質の機能を解明する重要な道具の1つとなりつつあり、医薬品開発への応用も模索されている。(図は、インフルエンザの原因タンパク質に結合している医薬品を表している。)一方で、タンパク質と同じく高分子ポリマーと見なすことのできるエポキシ系樹脂の原子・分子レベルの構造と物性の関係性は未だ十分に理解されていない。本研究では、こうしたエポキシ系樹脂の問題に全原子分子動力学計算の技術を用いて挑戦する。特に、モデルを電子状態計算に基づき改良することで、計算精度を向上させる。また、タンパク質研究の経験を活かし、新しい構造・物性解析の手法を開発していく。これらの結果を基盤にして、従来よりも論理的で高精度な設計支援技術の開発を目指す。