戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)

研究者紹介

耐環境性セラミックスコーティングの開発

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領域紹介

「耐環境性セラミックスコーティング JFCC拠点」C41・C42

領域長/拠点長
写真:髙田 雅介
髙田 雅介MASASUKE TAKATA
一般財団法人
ファインセラミックスセンター(JFCC)

天然資源・エネルギー資源に恵まれない日本が生き残るためには頭をフル活用する他はありません。幸い日本人は勤勉で教育レベルも高い国民です。本研究の開発目標であるEBC部材が開発されれば、省エネルギーに有用でありCO2の大幅な削減が見込め、日本の航空機産業の育成に貢献できます。領域長としては産官学の英知を集めて日本初の新規EBC部材を開発するために邁進します。

領域長/拠点長
写真:今成 邦之
今成 邦之KUNIYUKI IMANARI
株式会社IHI 航空・宇宙・防衛事業領域

共同拠点長を拝命いたしました。専門はエンジンシステムであり、要素技術の航空エンジンへの価値評価を行ってきました。現時点で各技術の価値評価を行なうとファン部への炭素繊維複合材CFRP適用と燃焼器・タービン部へのセラミック基複合材CMCの価値が高くなります。CFRPは既に日本の技術で出口への適用が進み、今後はCMCの適用が期待されています。CMCの実用化をリードすべく、領域長の1人としてベストを尽くしたいと思います。

C41ユニット代表者
写真:北岡 諭

多相積層EBCコーティング技術の開発

キーワード
コーティング、拡散、粒界、表面、電子ビームPVD
北岡 諭SATOSHI KITAOKA
一般財団法人 ファインセラミックスセンター(JFCC) 材料技術研究所

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図:コーティングの環境遮蔽設計及びプロセス技術の開発
ダブル電子ビームPVD法により形成した組織の例

耐環境性保護コーティング(EBC)を構成する複合酸化物について、高温の模擬使用環境下における物質移動を定量的に評価・解析し、環境遮蔽性と構造安定性に優れるEBC構造を設計します。また、この指針に基づき,ダブル電子ビームPVD法により軽量セラミックス基板上に環境遮蔽性と耐熱サイクル性を併せ持つEBCを開発します。右図はダブル電子ビームPVD法により形成した組織の例であり、EBC最表面の複合酸化物層を柱状カラム構造にすることで、耐熱衝撃性の発現を可能にします。

C41ユニット代表者
写真:垣澤 英樹

EBCの健全性評価解析

キーワード
コーティング、EBC使用限界、界面破壊靱性試験
垣澤 英樹HIDKEI KAKISAWA
国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS) 構造材料研究拠点

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図:EBCの健全性評価解析
開発したEBC膜の界面破壊靭性評価方法

EBCの化学的損傷と熱機械的損傷を評価し、EBCの使用限界の把握を目標としています。このためにEBCの界面破壊靭性を測定する方法が必要ですが、EBCの耐剥離性評価には世界的にまだ決まった方法がありません。評価技術で日本が主導権を取れれば認証、市場参入時にもアドバンテージとなります。界面破壊靭性の正確な測定だけでなく、将来の業界標準となりうるような簡便さも目指し、できるだけ小さな試験片と単純な負荷方法で現実の破壊モードを再現できるよう、検討を重ねています。図は考案した試験法の概略です。

写真:後藤 孝

CVD法による結合層コーティング技術の開発

キーワード
レーザーCVD法、コーティング、サイアロン
後藤 孝TAKASHI GOTO
国立大学法人 東北大学 複合機能材料研究部門 金属材料研究所

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図:CVD法による結合層コーティング技術の開発
CVD法によるSiAlON結晶相の形成

SiC繊維の耐用温度である1400℃でも使用可能なエンジン部材のために開発しているEBCは、セラミックス基板側からSiAlON結合層、ムライト層、Ybシリケート傾斜組成層からなる多相積層構造を有し、各層に各々の機能を持たせることで、コーティング全体として優れた耐環境遮蔽性と熱機械的耐久性を発現させます。従来のCVD法ではSiAlON結晶相の合成は皆無ですが、東北大学で開発したレーザーCVD法は、高強度レーザー反応場を援用した高速かつ微細組織制御を両立できるコーティング技術です。本手法により世界初のSiAlON結晶相の形成に成功しました。また、これらの得られた情報を基に、熱CVD法によるSiAlON結晶相の大型・大面積・複雑形状部材へコーティングついても取り組んでいます。

写真:長谷川 誠

AD法による結合層コーティング技術の開発

キーワード
エアロゾルデポジション(AD)法、コーティング、材料組織、熱的安定性
長谷川 誠MAKOTO HASEGAWA
国立大学法人 横浜国立大学 大学院工学研究院

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図:AD法による酸素遮蔽コーティング技術の開発
AD法で調製したSiAlON層断面図

耐環境性保護コーティング(EBC)を構成するSiAlON層を製膜するにあたり、従来の製膜法では厳密な組成の制御が難しい場合があります。本研究で取り組んでいるAD法は、室温の減圧環境下において原料粉末を音速程度の速度で基板に衝突させて製膜する方法であり、組成ズレ無しにµmの薄膜形成することに有効です。AD法におけるプロセス条件を最適化し、緻密質かつ結晶質なSiAlON層の形成に成功しました。

写真:中村 武志

コーティング材の実機システム適用可能性評価

キーワード
実機適用性評価、熱サイクル試験
中村 武志TAKESHI NAKAMURA
株式会社IHI 航空・宇宙・防衛事業領域

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図:コーティング材と界面制御コーティング繊維の適用可能性評価
バーナーリグ装置を用いた熱サイクル評価試験

1400℃の環境下において、開発中の繊維上界面制御コーティングやCMCの水蒸気減肉を防ぐ耐環境コーティング(EBC)が、航空エンジンに適用可能なポテンシャルを有するか評価を行います。評価には、図に示すバーナーリグ装置を用いた熱サイクル評価試験を1000サイクル行い、CMC基板とのEBCの密着性、およびEBCとCMC基板の耐久性を評価します。

写真:杉浦 幸彦

コーティング材の特性評価

キーワード
高温熱力学、耐環境特性、力学特性
杉浦 幸彦YUKIHIKO SUGIURA
株式会社超高温材料研究センター(JUTEM) 岐阜事業所

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図:高温加湿環境下曝露評価、単繊維および繊維束の力学特性解析

界面制御コーティング繊維を用いた軽量セラミックス部材にEBCを付与したサンプルに対して、高温加湿環境下曝露試験1400℃を実施し、外観観察及び質量変化等によりコーティングの耐水蒸気性能を巨視的に評価します。また、界面制御コーティング繊維(高温加湿環境下曝露評価前後)の引張強さを測定し、コーティングプロセスに伴う繊維劣化の程度や界面制御コーティングの環境遮断性を評価します。弊社は国内唯一の高温部材専門の評価機関であり、10年以上の長きにわたり、軽量セラミックスの耐食性や繊維の力学特性を評価してきました。JUTEMで開発された技術はCMCやEBCの改善を支援し、評価結果は実機システムに確実かつ速やかに展開可能とします。

写真:赤津 隆

EBC構成材の力学特性評価

キーワード
ナノインデンテーション、ヤング率、温度依存性、内部応力
赤津 隆TAKASHI AKATSU
国立大学法人 東京工業大学 フロンティア材料研究所

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図:EBCの力学特性評価と構造設計

EBCで覆われたタービン翼を安全に使用するためには、破壊の駆動力となるEBCのエネルギー解放率とその経時変化を知り、使用期間中、エネルギー解放率が破壊エネルギーを超えないように設計する必要があります。エネルギー解放率は、材料中の亀裂寸法、負荷応力、弾性率や残留応力などの関数として与えられます。この研究テーマでは、EBC構成層の材料定数の温度依存性および残留応力を調査することにより、各層に発生する応力を有限要素シミュレーションで定量的に把握し、エネルギー解放率の推定に貢献します。具体的には、EBCを構成する各層に対してナノインデンテーションを室温から高温まで行い、ヤング率の温度依存性を評価します。さらに、長時間または繰り返し高温暴露されたEBCに対しても同様な実験を行い、各層のヤング率の暴露時間依存性を評価します。

写真:梅野 宜崇

EBCの熱機械的負荷損傷シミュレーション

キーワード
有限要素法、熱力連成解析、亀裂
梅野 宜崇YOSHITAKA UMENO
国立大学法人 東京大学 生産技術研究所 革新的シミュレーション研究センター

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図:EBCの熱機械的負荷損傷シミュレーション
Stress distribution near crack tip

 実機において、EBCコーティング材は強い温度勾配条件・熱サイクル条件に曝されるため、コーティング層に強い熱応力が生じることによって破壊が生じることが考えられます。EBCコーティング材の信頼性を確保するため、有限要素法解析を用いて界面き裂・層内き裂進展条件を算出することで、設計を理論から支援することが求められます。そこで、EBCコーティングを施した実部材が受ける環境影響を考慮したシミュレーションを実施し、EBCの構造設計指針の高度化を図ります。熱機械的負荷条件のもとでの力学解析を実施することにより、現実に即した強度評価を行い、破壊のメカニズムおよび条件を明らかにします。この解析結果に基づき、高度化されたEBC構造設計指針を得ることを目指します。

C42ユニット代表者
写真:中村 武志

繊維コーティングの実証部材への適合性評価

キーワード
溶融含浸法、非破壊検査
中村 武志TAKESHI NAKAMURA
株式会社IHI 航空・宇宙・防衛事業領域

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拠点内の研究機関に対し、溶融含浸法等を用いた評価用のセラミック複合材(CMC)基板を提供します。また、これまで取り組んできた研究成果・実績をもとに、1400℃の環境下において、開発中の繊維コーティングが、航空エンジンに適用可能な強度を有するか評価を行います。マトリックスを含浸してCMCに成形後に,疲労試験やクリープ試験を行って材料強度の評価を行います。さらに、CMC部材使用時における損傷を検出可能な、非破壊検査手法の開発にも取り組みます。

C42ユニット代表者
写真:後藤 健

繊維コーティングの健全性評価解析

キーワード
界面、力学特性、破壊様式
後藤 健KEN GOTO
国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所

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図:界面制御コーティングの健全性の評価解析
引張試験片の破断面に見られるSiC繊維のプルアウト

セラミックス繊維コーティングの軽量セラミックス部材での健全性を評価し、コーティングプロセスを最適化する事を目的としています。繊維コーティングは軽量セラミックス部材の損傷許容性を発揮するために不可欠な技術です。これまでにコーティングプロセスを担当する機関と協力して、損傷許容性を発揮する繊維コーティングを創出できました。引き続き、繊維コーティングの健全性評価に取り組み、1400℃の環境下で性能を発揮するコーティング材料を開発します。

写真:伊藤 暁彦

CVD法による繊維コーティングの開発

キーワード
化学気相析出法、界面制御コーティング、Ybシリケート
伊藤 暁彦AKIHIKO ITO
国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院

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図:レーザーCVDによる界面制御コーティング技術の開発
SiC繊維表面に施したYbシリケートコーティング

繊維強化セラミックス基複合材料を安心して使うためには、繊維表面にコーティングを施し、部材に損傷許容性を発現させる必要があります。現行の繊維コーティングは、高温水蒸気酸化による損傷許容性の消失が課題であり、安定なコーティング材料とそのプロセス技術の開発が必須です。本研究では、化学気相析出 (CVD) 法を用いて、Ybシリケート系のコーティング技術を開発しています。右図は、本手法を用いてSiC繊維束上に施したシリケートコーティングです。すでに、損傷許容性を発現するコーティング技術を開発し、競合技術に対する優位性を示しました。現在は、実用化を視野に入れて、大面積施工性やマトリックス形成プロセスへの適合性を向上させるための技術開発に取り組んでいます。

写真:松田 哲志

繊維コーティング材料の設計および微構造解析

キーワード
相安定、熱力学的解析
松田 哲志TETSUSHI MATSUDA
一般財団法人ファインセラミックスセンター 材料技術研究所

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図:繊維コーティング材料の設計および微構造解析
安定に存在するYbシリケート相の熱力学的解析

耐熱軽量セラミックス部材(SiC長繊維強化SiC複合材)の性能がより高温で長時間維持するように新しい繊維コーティング材料が必要とされています。このコーティング材料としてYbシリケートが有望です。Ybシリケート相が高温下で安定に存在できる条件を探索するとともに、熱力学的な解析を行うことでYbシリケート相が安定に存在できるプロセス条件を明らかにします。

写真:岡部 洋二

非破壊検査技術の開発 超音波検査技術の開発

キーワード
非線形超音波、ガイド波、累積損傷評価
岡部 洋二YOJI OKABE
国立大学法人 東京大学 生産技術研究所 機械・生体系部門

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図:非破壊検査技術の開発 超音波検査技術の開発
セラミックス複合材料における非線形超音波の計測例

セラミックス基複合材料中の損傷は極めて微小なため、従来の非破壊検査法で個々の損傷を直接検出することは困難です。そこで、高感度な超音波検査法として期待されている非線形超音波法を適用し、微視損傷の累積によって巨視的力学特性に生じる非線形性を捉えることで、損傷累積状態を評価することを試みます。特に、平板や三次元形状部材を伝播するガイド波の非線形効果を対象とし、その最適な励起条件や評価指標を検討することで、セラミックス基複合材料に有効な検査法の確立を目指します。

写真:石川 真志

非破壊検査技術の開発 赤外線検査技術の開発

キーワード
非破壊評価、赤外線サーモグラフィ
石川 真志MASASHI ISHIKAWA
国立大学法人 徳島大学 大学院社会産業理工学研究部

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図:非破壊検査技術の開発 赤外線検査技術の開発
セラミックスサンプルへのアクティブサーモグラフィ試験の様子

軽量セラミックス部材の損傷の度合を評価する手法として赤外線アクティブサーモグラフィ検査法を適用し、その有効性の評価を行います。本手法は対象をランプ等で加熱した後の表面温度を赤外線カメラで観察するものであり、損傷に伴う巨視的な熱物性の変化を温度変化として検出することで損傷状態の評価が可能であると考えられます。非接触かつ短時間で検査が可能であることから、実用的な観点からも有用な検査手法となることが期待されます。

C46

C46ユニット代表者
写真:香川 豊

エンジン部材 設計・評価技術の開発

キーワード
CMC、SiC/SiC、タービンブレード、設計、損傷許容性、信頼性
香川 豊YUTAKA KAGAWA
東京工科大学 片柳研究所

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図:エンジン部材 設計・評価技術の開発
CMCの変形・破壊挙動の特徴

CMCで、航空機用部材を作製する際には、CMCの持つ力学特性を活かした、部材設計技術が必要となります。このために、タービンプレートに要求される力学特性を発現できるCMC構造の設計評価技術やCMC特有の変形破壊現象を設計に反映させる技術開発を行います。CMCでは微視損傷が蓄積されるとともに力学特性が時間とともに変化します。このような時間依存特性を考慮した設計方法の開発が必要です。

C46ユニット代表者
写真:福島 明

エンジン部材 設計・評価技術の開発

キーワード
CMC、SiC、タービンブレード、設計、低コスト
福島 明AKIRA FUKUSHIMA
三菱重工航空エンジン(株) 技術部
http://www.mhi-aeroeng.co.jp/

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図:エンジン部材 設計・評価技術の開発
タービンブレードの応力分布解析例

タービンブレード部品設計を担当し、タービンブレード形状を模擬した要素の強度試験・評価を実施して、複合材材料特性及び損傷許容設計に関する要求事項を設定する。そのために必要な複合材料の機械特性・疲労強度・ノッチ敏感性と損傷許容特性・耐環境性を評価する。 また、タービンブレード部品に求められる強度・機能要求の観点から、複合材料特性改善のための検討の方向付けを行う。

写真:久保 修一

高速MI製造プロセス開発

キーワード
CMC、SiC、BN、界面、MI法、低コスト
久保 修一SHUICHI KUBO
イビデン(株) 技術開発本部
http://www.ibiden.co.jp/

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図:高速MI製造プロセス開発
高速MI法による溶融Si含浸方法

非酸化物系セラミックス基複合材料の低コスト化に向けて、MI(溶融含浸)法をさらに短時間化する高速基材製造プロセス技術(高速MI法)の開発を目指します。低コスト汎用SiC繊維は、複合材料製造プロセス中の高温環境下で大きく強度劣化する課題があります。この課題を解決する低温での界面形成技術、タービンブレード部品の形状保持技術を開発します。また、MI法は、Siの融点である1420℃以上の高温環境下での処理が必要です。この高温暴露時間を時間単位から分単位にすることを可能にする高速MI法を開発し、低コストの非酸化物系セラミックス基複合材料を目指します。

写真:佐藤 光彦

プロセス・設計基礎技術開発

キーワード
CMC、SiC、BN、界面、MI法、低コスト
佐藤 光彦MITSSUHIKO SATO
東京工科大学 片柳研究所

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図:プロセス・設計基礎技術開発
σ:破断応力、A:Mirror定数、
rm:MistまたはHacleまでの半径、

Siと炭素との反応焼結を利用した複合材料の製造プロセスについて検討する。複合材料の力学特性、ノッチ敏感性および破壊形態を解析し、複合化プロセスおけるマトリックスの形成過程が、汎用SiC繊維やBN界面相の劣化に及ぼす影響およびその機構を検討すると共に、繊維複合化による効果と製造条件の関連性を明らかにする。その結果から、汎用SiC繊維を適用し、その繊維の力学特性を発現し得る低コストプロセスの要素条件を提案する。

C45

C45ユニット代表者
写真:牛田 正紀

軽量耐熱高靱性耐環境コーティングの開発

キーワード
酸化物系セラミックス、高靱性、低コスト、アブレーダブル、シュラウド
牛田 正紀MASANORI USHIDA
三菱重工航空エンジン株式会社 技術部
website

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図:軽量耐熱高靱性耐環境コーティングの開発
シュラウド構造応力分布解析例

酸化物系セラミックス基複合材料をモノリシック・セラミックス基材のコーティングとすることにより、アフォーダブルな構造開発を目指します。新規開発の低コスト・高耐熱酸化物繊維を利用した酸化物系セラミックス基複合材料の低コスト複合化プロセス(コーティング・プロセス)を開発します。また、シュラウド構造として必要とされるアブレーダブル特性を備えたTBC(熱遮蔽コーティング)形成のためのボンドコート、トップコートを開発します。さらには、各種物理・力学的特性の取得とそのデータを利用した伝熱・構造解析を実施します。これらにより、低コストの酸化物系セラミックス基複合材料を利用したシュラウド構造を設計・製造・評価していきます。

写真:垣澤 英樹

軽量耐熱高靱性耐環境コーティングの設計・評価

キーワード
酸化物系セラミックス、高靱性、設計・評価
垣澤 英樹HIDEKI KAKISAWA
国立研究開発法人 物質・材料研究機構 構造材料研究拠点

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図:軽量耐熱高靱性耐環境コーティングの設計・評価
繊維近傍の元素分布の例

酸化物系セラミックス部材に高靭化を付与する薄肉セラミックス基複合材料(CMC)コーティングの物性測定、構造評価および破壊挙動の評価を行っています。これまで、薄肉CMCコーティングの原料およびプロセス条件と組織の関係を調べ、曲げ試験時の破壊挙動との関連付けを行いました。薄肉CMCコーティングの破壊は繊維とマトリックスの界面の密着性や織物間の空孔に依存していることを明らかにし、非脆性的な破壊を発現させる条件を示しました。また、高温で破壊挙動の観察やひずみ分布の測定が出来る技術の開発を行いました。これらから得られた知見をプロセス条件にフィードバックすることでプロセス最適化を支援するとともに、設計に必要な材料情報の取得を進めています。

写真:長谷川 良雄

低コスト高靱性化材料プロセス技術の開発

キーワード
酸化物系セラミックス複合材料、高靱性、低コスト、ポリマー含浸焼成法、界面層
長谷川 良雄YOSHIO HASEGAWA
株式会社アート科学 研究開発部

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図:低コスト高靱性化材料プロセス技術の開発

モノリシック・セラミックス基材を高靭性化するための軽量耐熱高靱性耐環境コーティングの中間層を形成するCMC(酸化物系セラミックス基複合材料)薄板の開発を行います。使用環境を考慮して1000℃以上でも強度低下が起こらない耐熱性が必要です。CMC薄板は、低コストで特殊な形状にも対応できるPIP(ポリマー含浸焼成)法で作製していますが、現在、界面層を制御した繊維を用い、図に示すように高強度CMCが得られています。今後、マトリックス形成のための前駆体ポリマーの最適化と、繊維の界面層の改良を行います。さらにCMC薄板の基材への貼付技術を開発し、最表面に施されるTBC(熱遮蔽コーティング)とのマッチングを図り、部材化を目指します。

写真:粂田 和弘

低コスト耐熱性繊維製造技術

キーワード
酸化物繊維、アルミナ系長繊維
粂田 和弘KAZUHIRO KUMETA
株式会社ニチビ 技術部

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図:軽量耐熱高靱性耐環境コーティングの開発
アルミナ系長繊維織物試作例

軽量耐熱高靱性耐環境コーティングの一構成材として耐熱性に優れる酸化物繊維が求められています。これまでアルミナ系長繊維を製造・販売してきた実績をもとに、原料の見直しや製造条件の調整により既存製品の耐熱性改良や新品種の開発に取り組んでいます。現在までに、耐熱性を改良したアルミナ系長繊維を試作し、酸化物系セラミックス基複合材料あるいは耐熱高靱性耐環境コーティングの試作・評価用として、その織物を提供しています。さらに、繊維の性能を向上させるための研究開発を進め、求められる酸化物系セラミックス基複合材料の性能を支えるアルミナ系長繊維の開発を目指していきます。

写真:水野 峰男
水野 峰男
MINEO MIZUNO
連携コーディネータ

連携コーディネータの水野です。担当領域で開発するSiC長繊維強化SiC材料(SiC/SiC)にはかなり思い入れがあります。1990年から7年間行われた100kW級自動車用セラミックスガスタービン開発プロジェクト(PEC-CGT)の中で、セラミック複合材料(CMC)の評価方法を開発する研究の責任者をしていました。SiC/SiCを含むCMCに関わる十数報の論文を出し、最終1997年には14編のCMC特性評価規格を作成し業界規格として国内外に発表しました。これらはその後始められたCMCのJIS・ISO規格化の際の基礎規格となりました。当時のSiC/SiCは海外企業の特殊で高価な材料であり、軍事用以外の実用化は困難視されていました。しかし現在では様変わりし航空機用エンジン部材として空を飛ぶ日が間近となりました。日本独自の先端技術で更に進化させたEBC-SiC/SiC部材の開発にできる限り寄与したいと思っています。