ポイント
- 未来を想像する際、楽観的な人々の認知構造は似ており、集団平均的な特徴を持つ一方で、悲観的な人々は平均的特徴から乖離(かいり)し、それぞれが独自の捉え方を示すことが分かった。
- 楽観的な人々の認知構造の類似性の背景に、ポジティブな未来とネガティブな未来の出来事を、明確に区別しているという神経メカニズムが存在することを明らかにした。
- 楽観的な人々は似た未来を想像する傾向があり、それが豊かな人間関係の構築や社会的孤立・孤独感の軽減につながっている可能性を示した。
神戸大学 大学院人文学研究科の柳澤 邦昭 准教授および京都大学 人と社会の未来研究院の阿部 修士 教授、中井 隆介 特定准教授らの研究グループは、楽観的な人々は未来を想像する際に、類似した情報処理を行っていることを明らかにしました。機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた2つの研究で、楽観的な人々の内側前頭前野では、未来を想像する際の脳の活動パターン(神経表象)が共通の認知構造を示す一方、悲観的な人々ではその構造に共通性はなく、個人ごとに特異的であることが明らかになりました。
さらに、この認知構造の類似性の背景には、楽観的な人ほどポジティブな未来とネガティブな未来を、脳内で明確に区別して捉えているという特徴があることも突き止めました。この未来を感情的に整理する機能は、楽観的な個人の精神的安定性を支え、ひいては円滑な意思疎通の基盤となる認知構造の共有を生み出すことで、良好な社会的関係の神経基盤を形成すると考えられます。したがって、本研究の知見は、社会的孤立や孤独といった社会問題への理解に、脳機能の観点から貢献するものです。
この研究成果は、2025年7月21日の週(現地時間)に、「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」誌に掲載される予定です。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 社会技術研究開発センター(RISTEX) 社会技術研究開発事業「SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム(社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワークの構築)」におけるプロジェクト「新生活に伴う孤独リスクの可視化と一次予防」(課題番号:JPMJRX21K3)、日本学術振興会 科学研究費(課題番号:JP26780342、JP19H01747)の支援を受けて実施しました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.29MB)
<論文タイトル>
- “Optimistic people are all alike: Shared neural representations supporting episodic future thinking among optimistic individuals”
- DOI:10.1073/pnas.2511101122
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