プロジェクト紹介
目標6 研究開発プロジェクト(2020年度採択)イオントラップによる光接続型誤り耐性量子コンピュータ
プロジェクトマネージャー(PM)高橋 優樹沖縄科学技術大学院大学 量子情報物理実験ユニット 准教授
概要
量子コンピュータは、新薬開発、人工光合成、室温超伝導などの社会課題の解決に革新をもたらし、完全秘匿通信によってセキュリティ問題の克服も可能にします。本プロジェクトでは、複数の小型イオントラップを光で接続するという新しいアイデアにより、量子ビット数を柔軟に拡張できる、大規模化が容易なイオントラップデバイスの開発を進めています。これにより、2050年には大規模な量子コンピュータの実現を目指します。
2030年までのマイルストーン
光で接続された複数のイオントラップモジュールによる誤り訂正可能なスケールの量子ネットワークを構築し、その上で論理量子ビットの実現を目指します(図1)。
主目的は、光接続によるイオントラップ量子コンピュータの拡張性を実証することです。そのために、光共振器の統合と量子チャージカップルデバイス(量子CCD)を備えたモジュールを開発し、量子光接続を実現します。極低温環境、マイクロ波制御、ボゾニック符号、イオン・原子インターフェースなどの先進技術も並行して研究を進め、光接続との融合を検証します。これらの技術を統合することで、将来の大規模・汎用量子コンピュータの実現に向けた確かな基盤を築きます。
2025年までのマイルストーン
量子ビット数の拡張が可能なイオントラップモジュールを開発し(図1内に示す:Ion Trap Module)、誤り訂正に必要なスケールへの拡張性を実証します。この目標に向けて、量子情報の高信頼化を実現するための高精度スピン操作やフォノン符号化、さらに光結合の実現と集積化光回路を介したイオンへのレーザー照射技術の開発を進めています。また、ジャンクション構造を用いたイオンの輸送・配列技術の確立や、クラウド実装を見据えた小型量子コンピュータ基盤の構築にも取り組んでおり、これらを通じて、分散型量子コンピューティングに向けた技術的基盤を着実に整備していきます。これらの成果は、分散型量子コンピューティング時代を見据えた次に示す三層の技術開発戦略に基づいて推進されます。
核となる技術:
遠隔イオン間の量子光接続、マイクロ波ゲート、光回路の集積化、イオンの輸送・配列など、量子ビット間の高効率な相互接続を実現する中核技術を開発します。
潜在的革新技術:
振動量子やリドベルグイオンなど、各イオントラップ内で新たな量子機能を引き出す革新的なアプローチを探求します。
基盤技術:
微細加工による高精度なトラップ作製や、クラウド化を見据えた基板技術の開発を通じて、モジュール性と社会実装性の向上を図ります。
研究開発項目(クリックすると、それぞれの成果概要ページに遷移します)
課題推進者
| 研究開発項目[1] | 高橋 優樹 | 沖縄科学技術大学院大学 量子情報物理実験ユニット 准教授 |
|---|---|---|
| 研究開発項目[2] | 野口 篤史 | 東京大学 大学院総合文化研究科 准教授 |
| 研究開発項目[3] | 豊田 健二 | 大阪大学 量子情報・量子生命研究センター 教授 |
| 研究開発項目[4] | 早坂 和弘 | 情報通信研究機構 未来ICT研究所 副室長 |
| 研究開発項目[1][5] | 長田 有登 | 大阪大学 量子情報・量子生命研究センター 准教授 |
| 研究開発項目[4] | 杉山 和彦 | 京都大学 大学院工学研究科 准教授 |
| 研究開発項目[4] | 百合 庸介 | 量子科学技術研究開発機構 高崎量子技術基盤研究所 研究統括 |
| 研究開発項目[5] | 横山 士吉 | 九州大学 先導物質化学研究所 教授 |
| 研究開発項目[6] | 長谷川 秀一 | 東京大学 大学院工学系研究科 教授 |
| 研究開発項目[7] | 土師 慎祐 | 大阪大学 量子情報・量子生命研究センター 准教授 |
PDFダウンロード
- プロジェクト概要(230KB)