成果概要

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イオントラップによる光接続型誤り耐性量子コンピュータ[4-1] 高性能イオントラップ作製・評価技術の確立

2025年度までの進捗状況

1. 概要

光接続イオントラップ量子コンピュータ用トラップモジュールを実現するには、量子光接続、マイクロ波量子操作、フォノン量子符号化等の新奇技術実装を可能とするイオントラップの開発が必須になります。本研究開発テーマでは、これらの機能を実装可能とするイオントラップを製作し評価する技術を確立します。イオントラップの評価は製作・評価グループがCa+(カルシウムイオン)を用いて実施するとともに、Yb+(イッテルビウムイオン)を用いた評価、Ba+(バリウムイオン)を用いた評価を二つのグループが並行して行い、それぞれの用途に応じた評価実験で得られた知見を研究開発に反映させる開発体制を確立します。

2. これまでの主な成果

ジャンクション等の機能を埋め込むのに適した平面型イオントラップと、イオンの束縛に優れ、光接続に用いるミラーの影響を軽減する立体型イオントラップについて、同時に開発を進めています。
平面型トラップでは表面に対して傾いたトラップ電場軸により1本のレーザービームでのみ3次元の冷却と観測が可能な主軸回転平面型トラップを、国内企業での製造により供給する体制が整いプロジェクト内グループに供給することができました(図1(a))。立体型トラップでは熱伝導に優れた窒化アルミ基板を貼り合わせた構造のトラップに、チップ部品、配線などの実装も含めた全体が完成し、プロジェクト内グループに供給することができました(図1(b))。また、合成石英や感光硝材基板を用いた選択的レーザーエッチング法で微細構造を形成するための動作条件の最適化が完了し、この技術を用いて作製したガラストラップをプロジェクト内グループに供給することができました(図1(c))。またCa+を用いたトラップの評価法として、従来の紫外光レーザーに代わり赤色レーザーでCa+を冷却し量子状態を観測する手法の開発に成功しました。

図1
図1.(a)国内企業により製造された主軸回転平面型トラップ、(b)窒化アルミ基板を用いた立体型トラップ、(c)選択的レーザーエッチング法で作製したガラストラップ

Yb+立体型トラップ評価チームでは、量子計算に用いられる171Yb+同位体で長いコヒーレンス時間を得るために重要なmF=0間遷移の単一イオン分光を進め、ラム・ディッケパラメータ1.4までの冷却を確認しました(図2)。

図2
図2.単一171Yb+ mF=0間時計遷移の永年運動サイドバンドスペクトル

Ba+平面型トラップ評価チームでは、イオントラップシステム構築に係る基盤技術開発を引き続き進めました。同位体選択的Ba+ローディングに向けては、十分な出力や安定性が得られるよう光源(励起波長553nm)に改良を加えるとともに、アブレーションによるBa原子の放出や励起レーザーによるBaの励起を達成しました。さらに、小型トラップモジュール用真空パッケージの試作品開発を進め、RF応答特性やパッケージ内の真空到達圧を評価しました。また、133Ba原子源の開発も実施し、Ba炭酸化合物等に高エネルギー陽子ビームを照射し核反応によって、取り扱いが容易でレーザーアブレーションローディングに適した133Ba化合物の直接生成に成功しました(図3)。

図3
図3.133Ba原子源製造に係る核反応系列および実験結果

3. 今後の展開

当研究開発項目では窒化アルミ、石英などの基板をレーザー加工や選択的レーザーエッチングなどの手法で加工した後に電極を形成して平面型、立体型トラップを作製する技術を確立するとともに、国内企業によりトラップを製造する体制を整え、Ca+、Ba+、Yb+を実際にトラップして性能評価を行う技術を整備しました。今後、これらの技術を実際に稼働するイオントラップ量子コンピュータシステムに組み込んでいくことで、光接続型誤り耐性イオントラップ量子コンピュータの実現に貢献するものと期待されます。