成果概要

イオントラップによる光接続型誤り耐性量子コンピュータ[1] イオントラップの量子光接続に関する研究開発

2024年度までの進捗状況

1. 概要

イオントラップを基盤とした大規模量子コンピュータの実現を目指し、複数のイオントラップを光子を介して接続する「量子光インターコネクト技術」の確立に取り組んでいます。中核となるのは、微小光共振器と線形イオントラップを一体化した新しいイオントラップデバイスの開発です。微小光共振器はイオンと光子の強結合を実現するために、線形イオントラップは複数のイオンを直線上に安定的に捕獲するために不可欠です(下図参照)。これらの機能を単一デバイス内で同時に成立させることで、初めて量子光接続の実現が可能となります。

図1
図1.微小共振器一体型線形イオントラップの模式図

その他にも、バリウムイオンを用いたイオン・光子結合の増強、低温環境下での量子光接続、半導体ミラーの開発などのテーマを探求し、量子光接続のさらなる向上に挑んでいきます。

2. これまでの主な成果

2022年度に開発したイオントラップでカルシウムイオンの捕獲に成功し(図2)、2023年度はその特性評価と運動制御手法の有効性を確認しました。2024年度は、微小光共振器一体型イオントラップの設計開発(図3)を進め、実験系構築に向けた準備をほぼ完了しました。

図2
図2.トラップされたカルシウムイオンのクーロン結晶

特に、構造の最適化を図った第2世代イオントラップモデルの設計と作製により、次段階である共振器統合に向けた基盤が整いつつあります。
また、我々は半導体ミラーを用いた光共振器のイオントラップチップ上への集積にも継続して取り組んでいます。
令和6年度は、昨年度に作製した構造を活用しつつ、ファイバミラーによる微小共振器の性能評価を行いました。
その結果、フィネス100,000を達成し(図4)、共振器集積に向けた確かな一歩を踏み出すことができました。

図3
図3.真空槽内に配置される第2世代イオントラップ
図4
図4.ファイバミラーを用いた微小共振器スペクトル

3. 今後の展開

それぞれのイオントラップに微小光共振器を集積し、イオン-光共振器間の結合の観測・評価を進めます。