成果概要

イオントラップによる光接続型誤り耐性量子コンピュータ[1] イオントラップの量子光接続に関する研究開発

2023年度までの進捗状況

1. 概要

イオントラップを用いた大規模量子コンピュータ実現のため、本テーマでは複数のイオントラップを、光子を介して相互に接続する量子光接続の手法を追及します。核となるのは微小光共振器と線形イオントラップを統合したイオントラップデバイスの開発です。微小光共振器はイオンと光子の結合のために、線形イオントラップは複数のイオンを一直線上に捕獲するために必要です(下図参照)。これらを単一のデバイスで同時に実現して初めて量子光接続が可能となります。

図1.微小共振器一体型線形イオントラップの模式図
図1.微小共振器一体型線形イオントラップの模式図

その他にも、バリウムイオンを用いたイオン・光子結合の増強、低温環境下での量子光接続、半導体ミラーの開発などのテーマを探求し、量子光接続のさらなる向上に挑んでいきます。

2. これまでの主な成果

2022年度にはレーザーを用いた3D加工で作製したイオントラップを実際に真空槽内に配置し(図3)、カルシウムイオンを捕獲することに成功しました。2023年度は、この捕獲されたイオンを用いて、イオンのレーザー冷却、レーザー分光、トラップ周波数の測定、マイクロ運動の補正などの種々の実験を行いました。

図2.真空槽内に配置されたイオントラップ
図2.真空槽内に配置されたイオントラップ

これらの測定を通じて、本イオントラップの特性を理解し、捕獲イオンの運動の制御方法を確立することは、微小共振器を統合する次のステップに進むために重要です。
また、我々は半導体ミラーを用いた光共振器のイオントラップ上への集積にも挑戦しています。2023年度には半導体ミラー基板上にイオントラップのための電極構造を作成することに成功し、電気配線や真空槽への導入を済ませました(図4)。

3. 今後の展開

図3.トラップされたカルシウムイオンのクーロン結晶
図3.トラップされたカルシウムイオンのクーロン結晶
図4.半導体ミラー上に作製されたイオントラップ
図4.半導体ミラー上に作製されたイオントラップ

今後はおのおののイオントラップで微小光共振器を集積化し、イオンと光共振器の結合の観測を目指します。