成果概要
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イオントラップによる光接続型誤り耐性量子コンピュータ[7] イオンと原子の量子インターフェースの開発
2025年度までの進捗状況
1. 概要
イオントラップを用いた大規模な量子コンピューティングにおいては、量子ビット数の拡張を行うために独立したトラップモジュール間を接続することが重要となります。そのためにはイオンを異なる量子系と結合させる技術を確立する必要があります。本研究テーマでは単一イオンと中性原子のハイブリッドトラップを開発し、イオン・原子間の量子インターフェースの開発(図1)を行います。中性原子はイオントラップデバイスや光共振器との高い親和性を示すため、トラップモジュール間のつなぎ役として活用することが可能となります。それにより、より効率的なイオン量子ビット数の拡張が行えるものと期待されます。

2. これまでの主な成果
これまでの研究においてはイオンと原子の量子インターフェース開発に向けて、 単一イオンの量子ビットゲート演算や冷却中性原子の光双極子トラップへのローディングに取り組みました。
イオンや原子を用いたデバイス開発においては、それらが持つ量子ビット状態を高い精度で制御する技術の確立が欠かせません。今年度の開発においてはその目的のために、単一イオン量子ビットゲート演算の実装をおこないました。得られた結果を図 2に示します。図中で観測されたデータは特定の量子ビット状態の占有数が時間とともに振動している様子を表しており、これは量子ビット状態の回転操作に対応するものです。今回の実装では最大で100回程度の回転演算を観測することができました。これによりイオン量子ビットの状態をコヒーレントに操作するための手法を確立できたことが示されました。

原子やイオンをより高い精度で量子制御するためには、それらを極低温状態へと準備する必要があります。そのために、今回の取り組みでは中性原子を数マイクロケルビン程度にまでレーザー冷却することに成功しました。さらに、このようにして低温状態へと準備された原子を光双極子トラップと呼ばれる、レーザー光で形成される局所トラップへと導入することにも成功しました。図3はその様子を表します。図中で観測されたスポットは極低温状態にある原子が数十マイクロメートル領域に局在化していることを示しています。今回導入した光双極子トラップでは、そのトラップを動的に動かすことで捕獲された原子の位置を制御することができます。これを用いると、例えば二次元配列原子といった量子情報処理に適した配置を構成することも可能となります。今回開発された原子トラップ手法とこれまでに得られたリドベルグ状態への励起技術を組み合わせることで、リドベルグブロッケードゲートに基づくイオンと原子のインターフェースが実装できるものと期待されます。

3. 今後の展開
今後の研究においては、今回得られた単一イオンの量子ビット制御技術や中性原子のトラップ手法を統合することで、イオンと中性原子の量子インターフェース実現へ向けて開発を進めます。本研究開発項目で目指す異なる物理系間の量子的結合は、個々の量子デバイスの性能や、それらの拡張性を飛躍的に促進するための重要な技術として考えられています。今後はこういった技術をイオンや中性原子量子ビットを使った量子コンピューティングへと実際に組み込むことで、量子情報処理分野のさらなる発展への貢献に向けて開発を進めていきます。