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スピン流が機械的な動力を運ぶことを実証

スピン流が機械的な動力を運ぶことを実証

電子は電気的な性質に加えてスピンと呼ばれる自転的な性質を持っています。そのスピンの流れであるスピン流は電流と同じように情報を伝送する担い手になれると考えられており、例えば、強磁性体(磁石)にスピン流を流し込むことで磁石の向きを反転することができるため、次世代メモリーとして注目されている、磁気ランダムアクセスメモリー(MRAM)の基本技術などに使われています。
今回作製した磁性絶縁体のマイクロ機械構造体(カンチレバー)では、カンチレバー上に電気の配線を作り込む必要がありません。そのため、配線の作り込みが困難な機械構造体を駆動する手段の1つとして、磁性体を利用したマイクロ機械デバイスやナノ機械デバイスへの応用が期待されます。

Nature Communications 10, 2616 (2019)

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核スピン由来のスピン流を世界で初めて検出

核スピン由来のスピン流を世界で初めて検出

スピントロニクスは、電子が持つ電荷だけでなく、電子が持つスピンをも利用して、情報の処理・伝達・保存を行う技術であり、電子スピンの伝搬を担うスピン流は最も重要な物理量です。しかし、物質中にはこのスピンを持った粒子が電子以外にもあります。それは原子核です。
原子核のスピンは医療現場での大型検査機器などに使われる磁気共鳴イメージング法(MRI)に利用されています。しかし、核のスピンを調べるには非常に大きな磁場が必要であり、電子機器など身近なものではこれまで全く利用されていません。
本研究は電子スピン同様に、核スピンを使ってもスピン流を作れることが示され、核スピンをスピントロニクスという固体素子研究の枠組みに取り入れる可能性が拓かれました。 また、従来、核磁気共鳴法でしかその性質を知ることができなかった核スピンに、スピン流を使って電気的に調べられることをも示した画期的な成果です。

Nature Physics 15, 22–26(2019)

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超伝導体を利用した新たな環境発電機能を実証

超伝導体を利用した新たな環境発電機能を実証

環境発電とは、身の回りにある様々な“揺らぎ”から、使える電力を取り出す技術です。例えば、熱エネルギーという揺らぎを電力に変換する熱電変換素子、マイクロ波を電流へと変換するレクテナなどがあります。このような揺らぐエネルギーから電力を得るためには、一般に整流効果と呼ばれる現象が必要となります。
本研究は超伝導体渦糸を利用した新たな整流機能を実証しました。低温動作ながらも非常に感度の高い整流素子であり、ノイズ評価や微弱信号の検出に利用できる可能性があります。また、同様の整流機能が、渦糸の他の様々なトポロジカルな欠陥にも期待され、新たな物質機能開拓の端緒となると期待されます。

Nature Communications 9, 4922 (2018)

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スピンペルチェ効果の温度分布可視化に成功

スピンペルチェ効果の温度分布可視化に成功

スピンペルチェ効果による物質中の温度変化を可視化することに世界で初めて成功しました。熱は物質中を伝播し拡散していく、というのが従来の熱現象ですが、今回スピンペルチェ効果によって生じる温度変化は周囲には広がらず、局所的に生じるということが明らかにしました。

Nature Communications 7 13754_1-13754_7 (2016)

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ブラックホールの理論を用いて磁性体の物理量を計算する手法を開発

ブラックホールの理論を用いて磁性体の物理量を計算する手法を開発

ブラックホールは光さえも抜け出すことのできないほど、質量が大きくかつ高密度で強大な重力を持つ天体であることが知られています。この天体を理解するには、重力を記述する一般相対性理論と、素粒子を記述する量子場の理論とを併用することが必要不可欠です。近年、一般相対性理論と量子場の理論を統合してブラックホールを理解しようとする試みは、超弦理論を使って大きな進歩を遂げています。その取り組みから現れたホログラフィック原理は、ブラックホールを理解するだけでなく、様々な物理系への応用が始められています。今回の研究では、この理論を用いて、磁性体の物理量を計算する手法を開発することに成功しました。

Phsycal Review D93 026002- (2016)

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スピンゼーベック効果の高効率化に新指針

スピンゼーベック効果の高効率化に新指針

スピンゼーベック効果はスピン流を介し、熱を電気エネルギーに変換する現象であり、それを発現する素子の構造が単純なことから、次世代の熱電変換法として期待されています。従来、スピンゼーベック効果の性能向上は、磁性体中のスピン流の担い手であるスピン波・マグノンの性質向上が主な研究対象で、素子を多層化することなどによってスピン波の伝搬距離をのばすことで、スピンゼーベック効果の出力向上に貢献してきました。 しかし新たな研究指針として、物質中の音波がスピンゼーベック効果の出力向上に寄与する可能性をあることが今回の研究で明らかとなりました。

Physical Review Letters 117 (2016) 207203

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新たなスピン流の担い手を発見

新たなスピン流の担い手を発見

スピン流とは物質中の磁気の流れことで、電流に似た働きをすることが確認されています。従来スピン流はその性質から金属や磁石を中心に研究がおこなわれてきました。しかし今回、通常の金属や磁石の状態とは異なる、「スピン液体」と呼ばれる状態において、従来とは全く違うタイプのスピン流が存在することが明らかとなりました。新しいスピン流は、「スピノン」と呼ばれる特殊な状態で運ばれており、理論的には従来の限界を打ち破るほど長距離でスピン流を伝えることができます。また、スピン液体状態を利用すれば、その性質から原子スケールまでサイズダウンすることができ、これを利用して極めて小さな回路を作ることが可能であると期待されます。

Nature Physics volume 13, pages 30–34 (2017)

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超薄膜物質の磁性を容易に測定できる手法を開発

超薄膜物質の磁性を容易に測定できる手法を開発

スピン流は電子の自転に由来する磁石の性質を指し、電流と対比され次世代技術スピントロニクス注1)の基礎現象として注目されています。
さて、電流の流れ易さ(電気伝導度)を調べることで、物質の性質を金属、半導体、絶縁体と分類することができます。では、スピン流の流れ易さ(スピン伝導度)を調べることで、物質の性質を分類することはできないのでしょうか。 今回、そのスピン流を用いて物質の磁石がもつ性質である、磁性を観測することができることを明らかになりました。

Nature Communications 7 12670 (2016)

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熱を流すと金属が磁石になる現象を発見

熱を流すと金属が磁石になる現象を発見

例えば鉄・コバルトなどの金属は磁石を近づけると、自身も磁石の性質をもつことができます。しかし金などもともと磁石にくっつかない金属は、たとえ磁石を近づけてもそれ自身が磁石になることはない、そう考えられてきました。しかし今回、そこに熱を流すことによって金が磁石の性質を示す、という現象を世界で初めて観測しました。

Nature Communications 7 12265_1-12265_6 - (2016)

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液体金属流から電気エネルギーを取り出せることを発見

液体金属流から電気エネルギーを取り出せることを発見

電気エネルギーを取り出すと聞くとタービンやの大型の発電設備が必要と思うかもしれません。しかし今回、液体金属を細い管に流す、それだけで電気エネルギーが取り出せるという現象を発見しました。

Nature Physics 12 52-56 (2015)

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