竹内バイオ融合プロジェクト

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研究総括 竹内 昌治。

研究総括 竹内 昌治
(東京大学 生産技術研究所 教授)
研究期間:2010年10月~2016年3月
特別重点期間:2016年4月~2017年3月
グラント番号:JPMJER1003

 

多細胞生物の組織や臓器は、異種細胞からなる複雑な三次元構造を持ち、機能的な組織や臓器を人工的に作製するには、この構造を再現することが鍵と考えられます。これまでの組織工学では、立体的な足場に細胞を蒔くことで三次元の組織形成を行なってきましたが、この方法では軟骨などの比較的低密度の組織は形成できても、消化器官などの高密度の厚い組織や異種細胞の層構造などを再現することは困難でした。そこで、細胞ブロックを制御性良く集積することで立体組織を造形するボトムアップ型のアプローチに注目が集まっています。しかし、細胞そのものは柔らかく変形しやすいため、組み立ての高速化・精密化にはこれまで限界がありました。

本研究領域は、微細な加工・配置を得意とするMEMS技術やマイクロ流体デバイス技術と組み合わせて、細胞をあたかもネジやバネ、歯車といった規格化された部品のように加工し、厚みを持った三次元組織を機械組み立てのように緻密かつ高速に構築することを目指します。このようなバイオテクノロジーと工学テクノロジーの融合によって実現する細胞組織構造体は、再生医療における安全な移植材料としての利用や、動物実験に依存しない薬物動態検査システムの構築などに役立つことが見込まれます。また、ロボットに利用するためのセンサやアクチュエータの開発など、細胞を利用したものづくりという新たな産業分野の創出につながることも期待されます。

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研究成果の概要

生体の機能的組織や臓器を人工的に作製するには、複数種の細胞から成る高密度かつ複雑な三次元構造を再現することが鍵と考えられます。そこで、細胞を規格化されたユニットとして加工し、それらを制御性良く集積することで立体組織を造形するボトムアップ型のアプローチに注目が集まっています。

本研究領域は、微細な加工・配置を得意とするMEMS技術やマイクロ流体デバイス技術と組み合わせて、これまで精密な操作が困難であった生きた細胞をあたかもネジやバネ、歯車といった規格化された部品のように加工し、厚みを持った三次元組織を緻密かつ高速に構築することを目指してきました。

その結果、そのようなバイオと工学テクノロジーの融合によって実現した細胞組織構造体が、再生医療における安全な移植材料としての利用や、動物実験に依存しない薬物動態検査システムの構築などに役立つことを示しました。また、ロボットに利用するためのセンサやアクチュエータの開発など、細胞を利用したものづくりという新たな産業分野の創出の可能性を提示しました。

 

研究成果

プロセス融合グループ:

プロセス融合グループでは、細胞を用いたものづくりを実現するためのプロセス技術の確立に成功しました。具体的には、以下の2つの技術開発・評価を達成しました。

(1)ボトムアップ方式による集積化三次元組織構築の構成要素となるビルディング
   ブロック(点・線・面形状)の作製法創出と、形態と基本的な機能の評価

(2)ビルディングブロックの組み立てによる集積化三次元組織構築方法の確立と、
   基本的な機能評価による本プロセス技術の有効性の実証

加えて、将来幅広く応用可能である汎用的なマイクロ・ナノデバイス技術の開発を進めることで、工学分野外の研究者でも三次元組織構築を可能とする基盤技術を確立しました。

【成果を代表する論文】

  1. Kazuki Maeda, Hiroaki Onoe, Masahiro Takinoue, and Shoji Takeuchi: Controlled synthesis of 3D multi-compartmental particles with centrifuge-based microdroplet formation from a multi-barrelled capillary, Advanced Materials, vol. 24(10), pp. 1340-1346, 2012
  2. Hiroaki Onoe, Teru Okitsu, Akane Itou, Midori Kato-Negishi, Riho Gojo, Daisuke Kiriya, Koji Sato, Shigenori Mirua, Shintaroh Iwanaga, Kaori Kuribayashi-Shigetomi, Yukiko Matsunaga, Yuto Shimoyama, and Shoji Takeuchi: Metre-long Cell-laden Microfibres Exhibit Tissue Morphologies and Functions, Nature Materials, vol.12, pp. 584-590, 2013
  3. Yuya Morimoto, Risa Tanaka, and Shoji Takeuchi: Construction of Three-dimensional Layered Skin Microsized Tissues by using Cell Beads for Cellular Function Analysis, Advanced Healthcare Materials, vol.2, 261-265, 2013
  4. Hiroaki Onoe, Midori Kato-Negishi, Akane Itou and Shoji Takeuchi: Differentiation Induction of Mouse Neural Stem Cells in Hydrogel Tubular Microenvironments with Controlled Tube Dimensions, Advanced Healthcare Materials, vol. 5(9), pp. 1104-1111, 2016
  5. Nobuhito Mori, Yuya Morimoto, and Shoji Takeuchi: Skin integrated with perfusable vascular channels on a chip, Biomaterials, vol. 116, pp. 48-56, 2017

 

機能創発グループ:

機能創発グループでは、プロセス融合グループで開発したプロセスに、機能性ナノマテリアルを用いることで、ビルディングブロックの機能創製(新機能の付与)及び拡張(既存機能の向上)に成功しました。具体的には、以下の3つの機能創発を行いました。

(1)ビルディングブロックの表面を対象とした機能創発

(2)ビルディングブロックの内部を対象とした機能創発

(3)ビルディングブロックの構成要素として発展可能な細胞・素材の機能創発

これらの機能創製・拡張によって作製された超機能化ビルディングブロックを用いることで、より生体に近い三次元組織、及び生体を超える組織の構築を進めてきました。

その結果、既存のビルディングブロックを対象とした機能創発によって超機能化ビルディングブロックの作製に成功しています。またビルディングブロックの構成要素として活用できると期待される、遺伝子改変細胞、種々の幹細胞やナノマテリアルの組織化プロセスの開発も行いました。さらに、これらの超機能化ビルディングブロックを組み合わせることで、融合展開グループと共に、様々な分野で応用可能な機能創発の実現に成功しました。

【成果を代表する論文】

  1. Daisuke Kiriya, Ryuji Kawano, Hiroaki Onoe, and Shoji Takeuchi: Microfluidic Control of the Internal Morphology in Nanofiber-based Macroscopic Cables, Angewandte Chemie Int. Ed., vol. 51, pp. 7942-7947, 2012
  2. Kayoko Hirayama, Teru Okitsu, Hiroki Teramae, Daisuke Kiriya, Hiroaki Onoe and Shoji Takeuchi: Cellular building unit integrated with microstrand-shaped bacterial cellulose, Biomaterials, vol. 34, pp. 2421-2427, 2013
  3. Tomohiro Ishii, Koji Sato, Toshiyuki Kakumoto, Shigenori Miura, Kazushige Touhara, Shoji Takeuchi, Takao Nakata: Light generation of intracellular Ca2+ signals by a genetically encoded protein BACCS, Nature Communications, vol. 6, 8021, 2015
  4. Won Chul Lee, Kwanpyo Kim, Jungwon Park, Jahyun Koo, Hu Young Jeong, Hoonkyung Lee, David Weitz, Alex Zettl, and Shoji Takeuchi: Graphene-templated directional growth of an inorganic nanowire, Nature Nanotechnology, vol. 10, pp. 423-428, 2015
  5. Fumihito Ozawa, Teru Okitsu, and Shoji Takeuchi: Improvement in Mechanical Properties of Cell-Laden Hydrogel Microfibers Using Interpenetrating Polymer Network, ACS Biomaterials Science & Engineering, vol. 3 (3), pp. 392-398, 2017

 

融合展開グループ:

融合展開グループでは、プロセス融合グループ・機能創発グループによって開発された三次元組織作製技術を発展、拡大させ、三次元組織が現実社会に存在する問題を解決するためのツールとなり得ることを明らかにしました。具体的には、以下の2つの概念実証に成功しています。

(1)プロセス融合グループ、機能創発グループで開発された技術を組み合わせることによって、高次機能を有する新規の集積化三次元組織が構築できることの概念実証

(2)高次機能を有する新規の集積化三次元組織が社会的課題を解決する潜在能力を有していることの概念実証

これらの概念実証によって、本プロジェクトで提案する三次元組織構築のための技術が多分野において有用であることを証明しました。プロセス融合グループ・機能創発グループの成果である三次元組織作製技術を融合することによって、それぞれ単独では達成できない、更なる高次機能を有する新規の集積化三次元組織が構築可能であること、また、それらの技術が移植医療、創薬、環境、ロボットに関する社会的課題を解決するためのツールとして展開可能であることを示すことに成功しました。

【成果を代表する論文】

  1. Yuya Morimoto, Midori Negishi-Kato, Hiroaki Onoe, and Shoji Takeuchi: Three-Dimensional Neuron-Muscle Constructs with Neuromuscular Junctions, Biomaterials, vol.34(37), pp. 9413-9419, 2013
  2. K. Sato and S. Takeuchi: Chemical Vapor Detection using a Reconstituted Insect Olfactory Receptor Complex, Angew. Chem. Int. Ed., vol. 53(44), pp. 11798-11802, 2014
  3. Shigenori Miura, Koji Sato, Midori Kato-Negishi, Tetsuhiko Teshima and Shoji Takeuchi: Fluid shear triggers microvilli formation via mechanosensitive activation of TRPV6, Nature Communications, vol. 6, 8871, 2015
  4. Amy Y. Hsiao, Teru Okitsu, Hiroki Teramae, and Shoji Takeuchi: 3D Tissue Formation of Unilocular Adipocytes in Hydrogel Microfibers, Advanced Healthcare Materials, vol. 5(5), pp. 548-556, 2016
  5. Yuya Morimoto, Saori Mori, Fusako Sakai, and Shoji Takeuchi: Human induced pluripotent stem cell-derived fiber-shaped cardiac tissue on a chip, Lab on a Chip, vol. 16, pp. 2295-2301, 2016

 

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