独立行政法人科学技術振興機構
1.事後評価の主旨
本事業は、中堅・中小企業が有する新技術コンセプト(大学、公的研究機関、独立行政法人等の研究成果に基づく、新しい産業を生み出す可能性のある技術的な概念や製品構想をいう。)を企業と研究機関(研究者)が協力して、試作品として具体的な形とすることや、実用化に向けて必要な実証試験を実施する事業である。
本事後評価は、成果の技術展開に資する程度を判断するとともに、今後の事業運営の改善に資することを目的として実施したものである。
2.評価対象課題
平成20年度に採択した9課題を対象として評価を行った。
企業名 | 課題名 | 協力研究者 | 所属研究機関 | |
1 | 株式会社 オメガトロン | 表面・界面の磁気構造分析を可能にするスピン偏極イオン散乱分光装置の開発 | 鈴木 拓 | 独立行政法人 物質・材料研究機構 |
2 | 西日本電線株式会社 | 手術中蛍光眼底造影装置の実現に向けた眼内照明用石英ファイバプローブ製造技術の確立 | 井上 高教 | 大分大学 |
3 | 株式会社 アールテック | MRI時系列データを用いた心筋運動の可視化解析システムの開発 | 礒田 治夫 | 浜松医科大学 |
4 | 株式会社 ウエアビジョン | 広視域網膜投影型ウエアラブル電子眼鏡の実用化 | 志水 英二 | 宝塚造形芸術大学 |
5 | アルバック理工株式会社 | 製品化のためのツインパス型共振ずり装置の開発 | 栗原 和枝 | 東北大学 |
6 | 株式会社 東京インスツルメンツ | 新方式連続(CW)テラヘルツ発振器の開発 | 門脇 和男 | 筑波大学 |
7 | 有限会社 スペース・バイオ・ラボラトリーズ | 浮遊環境を利用した新規の幹細胞培養液の改良 | 弓削 類 | 広島大学 |
8 | 株式会社 イナリサーチ | 致死性不整脈の発生予測モデルの開発 | 杉山 篤 | 山梨大学 |
9 | 株式会社 パスカル | 0.1Å以下の空間分解能をもつ絶縁体表面原子構造解析の開発 | 梅澤 健司 | 大阪府立大学 |
注)企業名は採択時のもの
3.平成20年度採択課題の主な経緯
募集期間 | 平成20年2月8日〜3月31日(応募74件) |
課題採択 | 平成20年7月24日(9課題) |
モデル化開始 | 平成20年8月1日 |
モデル化終了 | 平成21年3月31日または7月31日 |
4.事後評価の進め方
モデル化実施の各企業から提出された完了報告書、自己評価報告書を基に、独創モデル化事後評価会を開催し、下記の評価項目により事後評価を実施した。
(ア)モデル化目標の達成度
(イ)知的財産権等の発生
(ウ)企業化開発の可能性
(エ)新産業及び新事業創出の期待度
5.評価の概要
今回の評価対象となった平成20年度実施9課題についての評価の概要は次のとおりである。
(1)実施した9課題中6課題が、モデル化目標を概ね達成できたと評価された。残り3課題については、当初の目標を達成できなかったと認められるものの、モデル化で得られた成果を基にした更なる取り組みにより、今後の製品化への道が開けると期待できる。
(2)平成20年度課題のモデル化の成果として創出した知的財産権は、4課題7件であった(出願予定のものも含む)。
(3)モデル化目標を概ね達成できたと評価された6課題のうち、「製品化のためのツインパス型共振ずり装置の開発」(アルバック理工株式会社)の1件については、平成22年4月に商品化を予定している。 また、「MRI時系列データを用いた心筋運動の可視化解析システムの開発」(株式会社アールテック)及び「0.1Å以下の空間分解能をもつ絶縁体表面原子構造解析装置」(株式会社パスカル)の2件については、実用化段階に達したと評価された。
(4)その他の実施課題については、モデル化実施期間終了後も研究開発の継続状況を把握し、A−STEP等他制度の活用をはじめ、研究開発パートナーやユーザー紹介等の支援を行い、機構としてできる限りのバックアップを行うことが必要であるとの指摘を受けた。