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「独創的シーズ展開事業 独創モデル化」
平成20年度採択課題 事後評価報告書

平成22年2月
独立行政法人科学技術振興機構

6.評価対象課題の個別評価

新方式連続(CW)テラヘルツ波発振器の開発

企業名 株式会社東京インスツルメンツ
研究者(研究機関名) 門脇 和男(筑波大学大学院数理物質科学研究科 教授)

1)独創モデル化の概要及び成果

 光と電波の境界領域にあるテラヘルツ波は、光の直進性と電波の透過性をあわせ持ち、多くの物質がテラヘルツ帯に固有の吸収スペクトルを持つため、効率的にテラヘルツ波を発生・検出することができれば、X線に替わる医用画像診断や非破壊検査など幅広い分野への応用が可能となる。このテラヘルツ波発生には幾つかの方法があるが、実用的な強度で連続波発振可能な小型のテラヘルツ波発振器は未だ実現されていない。  本装置は、テラヘルツ発振素子として、高温超伝導体のジョセフソン効果という全く新しい方法を利用した連続テラヘルツ波発振器であり、これまでに、発振波長範囲 0.35〜0.9THz、発振出力5μWの発振に成功している。  今後は、本装置で得られるデータをもとに発振素子の設計製作の最適化を進め、発振出力の更なる高出力化(〜1mW)を目指す。高出力化が実現すれば、小型で連続波発振という特長を生かしたセキリュティ検査などのリアルタイムテラヘルツイメージング装置などへの応用が期待される。

2)事後評価

(ア)モデル化目標の達成度
装置の形は整ったが、肝心のテラヘルツ発振出力が目標値の0.5%程度と微弱であり、当初の目標は達成されていない。

(イ)知的財産権等の発生 課題が明らかになったので、今後のその解決法の開発を通して出願の可能性がある。

(ウ)企業化開発の可能性 素子の開発に関して企業化に対応できるデータは得られておらず、企業化の見通しは立っていない。特に、固体素子にも拘らず、高温超電導とはいえ低温化の付帯設備(クライオスタット等)が大きく問題である。

(エ)新産業及び新事業創出の期待度 発振出力が目標の0.5%程度であり、現時点で産業への利用は無理である。今後、目標が達成出来れば新産業へのポテンシャルはある。

3)評価のまとめ

 挑戦的な課題ではあるが、測定装置の整備に留まり、肝心のテラヘルツ発振素子の性能が出ていない。新しく材料の専門家を加えて研究を進めない限り進展は望みにくい。
 すなわち、基礎的な実験は行っているが用途開発検討があまりなされていなく、企業化プロジェクトまで、至っていない。


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