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「独創的シーズ展開事業 独創モデル化」
平成20年度採択課題 事後評価報告書

平成22年2月
独立行政法人科学技術振興機構

6.評価対象課題の個別評価

MRI時系列データを用いた心筋運動の可視化解析システムの開発

企業名 株式会社アールテック
研究者(研究機関名) 礒田 治夫(浜松医科大学医学部放射線医学講座 准教授)

1)独創モデル化の概要及び成果

 国内の心疾患の総患者数は約200万人と推計され、悪性新生物(がん)の患者数を超えている。心筋症患者での虚血性心疾患、肥大型心筋症および拡張型心筋症疾患においては、心筋動態の定量評価や機能低下部位の特定は、治療方針の決定や予後の推測上、大いに重要であるものの従来手法では困難である。
 本研究開発では、核磁気共鳴装置(MRI)から得られる画像をもとに心筋構造を生成し、心筋の周期運動を経時的な3次元領域の速度場情報から可視化する解析処理システムを開発するとともに、検証用ファントムモデルの製作および心拍動発生装置の設計・試作を行い、ファントムでの心周期データを収集して、MRI計測精度の評価を行った。
 本システムは患者の臨床経過および通常のMRI所見などを比較するとともに、心筋動態解析により、従来法では得られなかった心筋運動を可視化する技術を提供するものであり、新たな診断手法として有効である。今後、システムの実用化に向けた技術開発が重要である。

2)事後評価

(ア)モデル化目標の達成度
解析精度の検証では一部積み残しがあるが、全体的にはほぼ目標が達成されている。

(イ)知的財産権等の発生
現時点まででは新たな出願はないが、今後出願が予定されている。

(ウ)企業化開発の可能性
企業化開発に十分なデータが得られたとは言い難いが、開発の見通しを得るには十分なデータが得られている。但し、全国的に普及させるためには、この方法の妥当性に関して関連学会などで議論を尽くしコンセンサスを得る必要がある。

(エ)新産業及び新事業創出の期待度
心臓の運動の三次元解析が可能になる事から、心疾患の新たなる診断及び治療方法の開発に繋がる事が期待出来る。

3)評価のまとめ

 心筋動態を三次元的にダイナミックに解析するシステムの開発にほぼ成功しており、解析時間も実用化の域に達している。今後さらなる精度の向上、学会などでのコンセンサスが得られれば、全国的に普及する見通しが立ち企業化の可能性が高まる。


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