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「独創的シーズ展開事業 独創モデル化」
平成20年度採択課題 事後評価報告書

平成22年2月
独立行政法人科学技術振興機構

6.評価対象課題の個別評価

製品化のためのツインパス型共振ずり装置の開発

企業名 アルバック理工株式会社
研究者(研究機関名) 栗原 和枝(東北大学多元物質科学研究所 教授)

1)独創モデル化の概要及び成果

 ツインパス型共振ずり装置は、固体表面間に液体を挟み、表面間距離をnmオーダーで変えながら、液体の構造化、粘性、摩擦・潤滑特性を調べる装置であり、商品化は世界初である。この"閉じ込め液体"の特性評価には、従来、表面力装置を用いたずり測定法が用いられてきた。本装置は、共振法を用いることで、従来法より高感度なずり応答が得られる。さらに、従来法では表面間距離の測定は、透過型の干渉法を用いるため、透明試料のみ測定可能であったが、本装置では、反射型の干渉法であるツインパス法を用いるため、不透明試料も測定可能である。
 モデル化では東北大学から技術移転を受けて本装置を作製し、距離分解能1nm等の共振ずり測定に必要な性能を満たすことを示した。また本装置の自動化を目的とした測定プログラムの改良を行い、ユーザフレンドリな測定システムを構築した。
 本装置は、塗料、シーラント、潤滑剤、化粧品の評価、あるいはデバイス、セラミックスの表面評価等を行うメーカーで、特に需要が期待できる。

2)事後評価

(ア)モデル化目標の達成度
大学の成果技術の製品化であり、モデル化の目標は100%達成している。

(イ)知的財産権等の発生
今回の開発において特許の出願が無いのは残念であるが、今後周辺技術を含め、商品化に有効となる特許の創生を期待したい。

(ウ)企業化開発の可能性
装置の製品化、企業化に必要な基本データは得られており、企業化の見通しを得ている。今後、商品化のためのデータの積み重ねと装置の価格を下げるための施策が必要である。

(エ)新産業及び新事業創出の期待度
現存する産業の発展を支える装置と考えられ、意義のある開発である。本装置を物性測定の標準器とする新しい応用を見出し、新産業創出を期待する。

3)評価のまとめ

 基となった東北大のコンセプトがよくできていたこともあるが、開発としてよくまとまっていると言える。製品化に近いところまで到達できた、合格点を与えて良いモデル化と評価できる。本装置は、省エネ技術の課題である摩擦の低減などに寄与する潤滑摩擦測定の新しい計測技術として普及する可能性がある。


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