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「独創的シーズ展開事業 独創モデル化」
平成20年度採択課題 事後評価報告書

平成22年2月
独立行政法人科学技術振興機構

6.評価対象課題の個別評価

広視域網膜投影型ウエアラブル電子眼鏡の実用化

企業名 株式会社ウエアビジョン
研究者(研究機関名) 志水 英二(宝塚造形芸術大学大学院メディア・造形研究科 教授) 他

1)独創モデル化の概要及び成果

 高齢化の進展や食生活・日常生活習慣の変化に伴い、視覚障害になる人が世界的に増加しているにもかかわらず、昔ながらのルーペや拡大読書器等以外に決定的な用具がないのが現状である。研究者等は瞳孔から網膜に映像を直接投影して明るく鮮明な刺激映像を付与するマックスウエル視と呼ばれる方法が弱視にも効果があることに着目し、実用化研究に取り組んできた。
 その結果、指向性の強い映像光のためクッキリ見えるが視域が狭く覗きにくいという問題を多視点マックスウエル視の開発によって克服し、格段に映像を捉えやすくすることに成功した。本課題ではその技術をベースとしてビューアをサングラス大の大きさまで小型化し、遠近両用の超小型カメラをゴーグル式のウエアラブル電子眼鏡に搭載し両眼視可能な実用化モデルを試作した。実際に弱視者モニター試験を行った結果、7割の人に効果が発揮され、半数が他の用具よりもハッキリ物が見え、4人に1人が便利だ、使ってみたいとの回答を得、予想以上の有用性が確認された。

2)事後評価

(ア)モデル化目標の達成度
基礎的技術的問題から実用化のための改良、弱視者による評価に至るまで研究開発が良く行われ、当初の目標は達成されている。

(イ)知的財産権等の発生
今後の2件の新たな出願を検討中である。

(ウ)企業化開発の可能性
データ的にはかなりの蓄積がなされているが、商品化時の販売コストをどこまで下げられるか、需要がどこまで見込めるかが企業化の鍵である。商品化を自社のみで進めるか関連企業とのコラボレーションで行うかも早期に決断する必要がある。

(エ)新産業及び新事業創出の期待度
弱視者にとってこの技術の開発、商品化は大きな福音である。また、ここで開発された小型の視覚システムは関連他産業へ応用可能である。

3)評価のまとめ

 独自のアイデアでこれまで困難であった技術を実用化寸前のレベルまで開発した努力は評価に値する。社会的ニーズから考えて是非実用化して欲しい技術である。更なる小型軽量化と低価格化等の問題を克服し、商標と合わせて企業化に望んで欲しい。


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